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日本女子プロ会場の名物パー3は激レア! 日本は島国のわりに「海越えホール」が少ないのはなぜ?
日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯では、大会の舞台となったパサージュ琴海アイランドGCの名物ホール、海越えの12番パー3に目を奪われた人も多いのではないでしょうか。しかし、島国である日本にはシーサイドコースは数あれど、海越えホールを擁するコースは少ないのも事実です。一体なぜなのでしょうか。
「海越えホールは今からは多分できないでしょう」
先週の日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯で話題となったのが、日本ではあまり見ることができない海越えのショット。実は島国である割には、シーサイドコースはあっても大会の舞台となったパサージュ琴海アイランドゴルフクラブ(長崎県)のような海越えホールを擁するコースは日本に少ないのも事実です。一体なぜなのでしょうか。ニッポンのゴルフ場事情を、深掘りしてみました。
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まずはパサージュ琴海アイランドGCの支配人管理部長・坂田修氏に、このコースが置かれた特殊な事情について伺ってみました。
【坂田支配人と一問一答】
Q:日本には海越えホールは数えるほどしかないですが、なぜなのでしょう?
A:海越えはなかなか開発許可がおりませんからね。都市開発法、林地開発制度、農地法など、いろいろな法律がある。それが大変だったと聞いています。ここができた当時、福岡出身の私はつくる側だったんです。旧日本鋪道(現NIPPO)の子会社である日鋪建設の新入社員でした。
Q:こうしたシーサイドコースの、どんな部分が大変ですか?
A:ショートホール(海越えの12番)のグリーンだけは海抜6メートルくらいですが、それ以外は全部、海抜15メートル以上でつくらせていただいています。海の砂などはまったくいじっていません。
Q:農地法、というのは?
A:このあたりも畑が多かったので、農地率を変えられないとか、そういう事情もあったと思います。コースレイアウトをもっと海寄りにしたくても、さまざまな事情で陸寄りになったという話も聞いたことがあります。
Q:海、といっても内海ですから、静かなものですよね。
A:内海の中のさらに内海ですからね。池、と言われることもありますよ(笑)。
Q:でも、「海越えがある美しいコース」ということで、このコースは人気です。
A:海越えホールはもう、今からは多分できないでしょうからね。
(聞き手/ゴルフジャーナリスト・小川淳子)
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シーサイドコースの建設にゴーサインを出すのは都道府県知事
坂田支配人の締めくくりの言葉が、日本におけるシーサイドコースがクリアしなければならない高いハードルを物語っています。そのハードルとは何なのか。日本ゴルフ場設計家協会の川田太三会長を直撃すると、こんな答えが返ってきました。
「日本は周りを海に囲まれていて、例えば川を隔てて隣がドイツだったり、フランスだったりしない。日本の場合は(境界線の)全部が海で、隣の国がないから、逆になんらかの形で規制されているんです」
日本は島国だからこそ、逆に海岸線の規制が厳しいというのです。ここはやはり、関係する省庁の関係者に話を聞くしかなさそうです。そこで問い合わせの担当窓口である農林水産省に取材してみると、同省の関係者が、こう裏事情を語ってくれました。
「(規制が多いことに関して)そこはそうだと思います。日本は島国で台風の通り道でもありますし、高潮とか、地震が起きた時の津波とかから、陸地側に住んでいる人だとか海産物を守らなければならない。それが海岸法の目的なんです」
とはいえ、海岸すべてにこの法律の規制が及ぶわけではないようです。
「津波や高潮対策ですべての海岸線を堤防で覆うとかは当然できないんです。別にすべての海岸線の内側に人が住んでるわけでもないですしね。全部守るとか、そういったことはないんですけども、都道府県知事の方で、ここは守らなきゃいけないよって決めているんです。その場所については、やっぱり堤防などをしっかりつくって管理しなきゃいけないので、レジャーだとか、そういったことへの用途っていうのは許可は出ないんだと思います」
シーサイドコースの建設にゴーサインを出すのは、都道府県知事。要するに都道府県知事の許可が下りるところであれば、建設は可能ということになります。
ただ津波や高潮から国民を守るという概念がある以上、無闇にレジャー用途の建造物をつくるのは難しいのも確か。現存するシーサイドコースで海越えのスリルを味わうのが、一番の早道ということは確かなようです。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
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