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  • ゴルフ史最大級40億円被害の真相(2) 「最後の一人まで戦う」闘士が明かした悪質商法の“セールストーク”【小川朗 ゴルフ現場主義!】
コラム

ゴルフ史最大級40億円被害の真相(2) 「最後の一人まで戦う」闘士が明かした悪質商法の“セールストーク”【小川朗 ゴルフ現場主義!】

2024.03.08 小川 朗(日本ゴルフジャーナリスト協会会長)
ゴルフショップ ゴルフスタジアム事件 ゴルフ練習場 ティーチングプロ 小川朗 ゴルフ現場主義!

1000人以上が総額40億円にも上る被害を受けたゴルフ界を激震させた「ゴルフスタジアム事件」。発覚から7年にわたり取材を続けてきたゴルフジャーナリストの小川朗氏が、最終局面を迎えた事件の全貌をリポートします。被害者が次々に裁判から離脱する中、「最後の一人になっても戦う」と宣言する“ラストサムライ”が思いの丈を語りました。

一時期は傍聴席に入りきれないほどだったが現在は…

 法廷闘争の終盤に来て、被害者たちが和解に走る格好となったゴルフスタジアム(以下GS)の集団訴訟。その原因が遅延損害金にあったことは第1回に書きました。そんな状況下、信販会社との対決を宣言し続けるサムライがいました。

【事件のあらましから読む】ゴルフ史最大級40億円被害の真相(1) 発覚7年・裁判を断念する被害者が続出の事情

被害者の会の“ラストサムライ”上松和彦さん(高知・松和ゴルフ工房)。2023年10月12日、東京地裁にて 写真:清流舎
被害者の会の“ラストサムライ”上松和彦さん(高知・松和ゴルフ工房)。2023年10月12日、東京地裁にて 写真:清流舎

 2023年10月12日、東京地裁809号法廷で午前10時40分に開廷した裁判は、数分で閉廷しました。裁判は証人尋問などで長時間に及ぶこともあれば、次回の期日を決めるような、あっさりとしたものであることも少なくありません。

 法廷と同じフロアの待合室に戻った上松和彦さんは、複雑な心境をにじませながら、こうつぶやきました。「僕なんか四国から、ただこれを聞くだけのために毎回毎回、2日、3日かけて、10何回来ているのに」。

 一時期は傍聴席に入れない人が廊下にあふれ、裁判後の待合室も立錐の余地もないほどに被害者が詰めかけ、熱気に包まれたのも今は昔。この日、待合室に残ったのは数名でした。

 その中に、上松さんの顔もありました。ゴルフスタジアム事件の法廷闘争が開始されて7年半。上松さんは高知県にある自宅と東京地裁の間を、何度も往復してきました。この日、上松さんは前日入り。高知竜馬空港から成田空港まで660キロの移動でした。

 上松さんは高知県香南市にある松和ゴルフ工房の代表者で、主な仕事はクラブの改造や修理。

「昨日は仕事を途中で切り上げて、夕方の4時半着。向こうを3時のジェットスターです。運賃は、安いと言っても1万円弱ぐらいですかね。成田の東横インに泊まって今日の朝、バスで1時間ちょっとかけて来ました。電車は2600円で高いから、1300円の第3ターミナルから出るやつ」

「被害者を守る会」からも交通費の補助があるとのことですが、これも6年間の歳月で、自然に身についた節約意識でしょう。

 今は東京での過ごし方にもすっかり慣れた上松さんですが、6年前には忘れられない経験もしています。「東京までは来たものの、八重洲も丸の内も日本橋も、方角がまったく分からなくなった」。東京メトロ丸ノ内線の東京駅から、東京地裁の前に出口がある霞が関まで2駅4分。しかし乗り換え口が分からず「遠くはないのは分かっていたので歩きを選択」したのが間違いのもとでした。

 東京駅から徒歩20分の距離ながら、折悪しく東京は猛暑。ジリジリと容赦なく照り付ける太陽と、アスファルトからの強烈な照り返し。「(逆方向の)日本橋まで行ってしまい、結局着くまでに4時間かかった。3万歩は歩いたと思う」。

 上松さん自身、東京は初めてではなかったものの「修学旅行と親戚の家に来た程度」とあって、4時間もの酷暑体験をする羽目になったというわけです。

「若い男の子だったかな。来たらレストラン連れていって…」

 6年を越える法廷闘争の初日はとんだスタートとなった上松さんが、そもそもこの事件に関わるきっかけは、GSの営業担当からかかってきた1本の電話からでした。

「最初は『会員用のホームページ作りませんか? 無料なんですけど。訪問してもいいですか?」という電話をいただいた。ちょうどホームページ作ろうとしていた時でしたが、知識がないので困っていたので『ウエルカムです。どうぞどうぞ』と言ったら『本当にいいんですか?』って」

 その後、やってきたGSの営業は、こんなセールストークを上松さんにぶつけます。

「最初は金額は告げずに『無料でHPを作りますよ』と。プロ野球チームの写真や、全国で契約している一覧を見せてきました。『ホームページをうちでお世話した、これだけの実績がありますよ。こういう実績があって入ってなかったら、仲間外れみたいな感じになりますよね。断られた人は残念ですよ』みたいな形で言われて、ついつい口車に乗っちゃったのかな。それに続けて『HP制作代はクレジット契約を交わしますが、そのクレジット代金と同額の広告料をGSが上松さんに支払うので結果的に無料になります』と」

 それから3年間は、ローン返済額と同額の広告掲載料が振り込まれ相殺されます。「3年間というもの、詐欺的なことはなかった。メディアで報じられたこともなかったし」。

 その後も上松さんとGS担当者との関係は深まっていきます。営業担当から渡された名刺を見ながら、上松さんはこう振り返りました。

「ヨシダさん……。これは若い男の子だったかな。来たらレストラン連れていって、ご飯をご馳走したりとかしたんで。GSからは係長……とか、3人くらい来ましたね」

 心の交流も少なからずあったはず。「いつもレンタカー借りて来ているから『こんなことしなくても迎えに行くよ』って言うと、『いや、とんでもないです』って言って遠慮してね。写真も確か、あったはず。太平洋が見えるスタジアムのレストランがあるんですけど、ここで写真も撮ってあげて、手元に残ってますよ」。

 その後、GSの担当が新たな提案を持ち掛けてきます。「2回目に『2口やってください。合計で700万円』と。でも3年間、支払いは一度も遅れたことがないので、信用してしまった」。

「嘘つきは野放しにしちゃだめ。子供もそうやって育ててきた」

 この後、状況が一気に暗転します。「その後も途中で口座を変えてくださいとか、変な動きをするなと思いながら2回目の契約に至った翌月から、振り込みはなくなった」。

 追い打ちをかけるように「2月にクレディセゾンから督促が来たので、1回8万なにがしかのお金を振り込みました」。

「『これはやばいぞ』と思って、こりゃ人にだまされたか引っ掛かっちゃったなと思って、その時、腹くくったんです。正直なところ、『ああ、もう痛手で無理だな』と思ったんですけど、そんなところに『ゴルフスタジアム被害者を守る会』に入らないか、という近隣のゴルフ場の知人から連絡が入りました」

 以下がそのやり取りです。

「どれくらいかかるの?」(上松さん)

「(弁護士に委任する費用が)10万かかるんですよ」(知人)

「え、そんなにかかるの?」(上松さん)

 詐欺的な商法に引っ掛かり、大きな損失を被ったショックも冷めやらぬ中、被害者の団体に入り、弁護士に委任するために10万円の支出。誰もが平常心ではいられない状況に追い込まれていました。

「1カ月に8万も払っていて、10万でちょっと弁護士を雇って。それまでは弁護士を雇うには10万のお金がすぐいるって知らない世界にいましたから。新居浜(市・愛媛県)で四国の集会があって、(弁護団代表の)西村(國彦)先生とかがお見えになった時に『どうするんですか?』と聞かれて『最後まで行きます』(会員の一人)というやり取りがあった」

 当時の心境を、上松さんはこう振り返ります。

「その時に西村先生は『分かりました』とお答えになった。『任せてください』とは答えずに『分かりました』という柔軟な言葉をあえてお使いになったと思います。その時の(『最後まで行きます』という)思いが今まで、続いているわけです」

 しかし、ここに来て、共に戦ってきた仲間たちが和解を選択。法廷闘争から離脱しています。

 そんな中、上松さんは「和解はあり得ません。最後の最後まで戦うつもりです。僕自身はぶれていません」と言ってから、さらにこう続けました。「嘘つきは野放しにしちゃだめなんです。こんなことが世の中に通用したらいかん。子供もそうやって育ててきたんで、メンツが立たんのです。さらし者になってもいいんだと思います。僕は生贄(いけにえ)になればいいと思っています。すでに何度も死にかけていますから、怖いものはないんです。もともと裸一貫ですし、土に帰るだけですから」。

 1000人を超える被害者が生まれ、625名が信販・リース7社を提訴したこの事件。しかし1審が終わり、2審も最終コーナーへと差し掛かると、和解に走る人々が一気に増えました。それは、判決まで戦ってしまうと、和解では掛かってこない、ほぼ同額の遅延損害金を払う羽目となるからです。仮に700万円が残債の場合、約1400万円を払わなければならなくなります。

 ゴルフスタジアム事件の7年を振り返れば、すでに破産を選択した人や行方知れずとなっている人もいます。そんな中、戦いをあきらめようとしない上松氏が、特筆すべき存在であることは間違いありません。

【ゴルフスタジアム事件】
レッスンプロやゴルフ練習場などにゴルフスタジアム社の営業が訪問し、「HPを実質無料で作成運営できる」と説明。ゴルフスイング解析ソフトのローンを組ませたり、リース契約を結んだ後、月々の支払はHPへの広告掲載料を振り込むことで相殺していた。しかし2017年の2~3月頃から掲載料の振り込みがストップ。被害者は1000人以上、被害額も約40億円に達した。

取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。

【連載3回目を読む】難病ALSとも闘い判決を聞くことなく逝った“不屈の人”の無念
【連載4回目を読む】被害者も一枚岩ではなかった…「守る会」代表を襲った嵐のような日々
【連載5回目を読む】プロゴルファーをやめてまで先頭に立った共同代表が直面する“理不尽な現実”
【連載6回目を読む】“畑違い”の弁護団に違和感…被害者たちが団結できなかった理由

【写真】メガバンク系など信販・リース会社への抗議活動を行う「ゴルフスタジアム事件」被害者たち

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