ゴルフ史最大級40億円被害の真相(5) プロゴルファーをやめてまで先頭に立った共同代表が直面する“理不尽な現実”【小川朗 ゴルフ現場主義!】

1000人以上が総額40億円にも上る被害を受けたゴルフ界を激震させた「ゴルフスタジアム事件」。発覚から7年にわたり取材を続けてきたゴルフジャーナリストの小川朗氏が、最終局面を迎えた事件の全貌をリポートします。プロゴルファーという職を投げうってまで裁判闘争の先頭に立った横田さんは理不尽な現実に直面しています。

「信じきっていたゴルフ業界で起きた事実に嫌気や劣等感を感じた」

 事件の発覚から7年。振り向けば、ついてきてくれた会員たちは雪崩を打って和解を選択していました。「ゴルフスタジアム被害者を守る会」の先頭に立ち、勝訴に向けて被害者を鼓舞し続けた代表世話人の横田さん(42)も、訴訟の終盤戦に来て和解を選択。6年に及ぶ法廷闘争に、自らケリをつけました。プロゴルファーとしての職を捨ててまで挑んだ横田さんは今、言い知れぬ複雑な感情を抱えながら、新天地で新たな人生の道を歩み始めています。

2018年9月20日、横田さん(左)から要望書を受け取る立憲民主党の阿久津幸彦衆議院議員(当時) 写真:清流舎
2018年9月20日、横田さん(左)から要望書を受け取る立憲民主党の阿久津幸彦衆議院議員(当時) 写真:清流舎

 受話器から響く声は、重く、暗いものでした。

「この6年は何だったのだろう。裁判で債務ゼロにできなかった悔しさとか、リーダーとしての力のなさとか、自分だけが仕事を犠牲にしてきた馬鹿さ加減とか、そんなことばかりが頭に浮かんで、今は劣等感しかないんです」

 こちらが口をはさむ暇がないほどに、自分を責める言葉が続きました。

 横田さんがこんな複雑な思いを抱えるのは、特別な事情があります。それはこの事件に取り組んだ本気度の違いといったほうがいいかもしれません。この6年、被害者の誰よりも時間と労力を注ぎ込んできたのは、横田さんであることは誰もが認めるところだからです。

 富裕層相手で派手に見えるレッスンプロの仕事ですが、実態はそれほど楽ではありません。横田さんも20代後半には3カ所で同時進行の仕事をしながら、“大台”に届くことはなかったといいます。

「一応(東日本大)震災前ぐらいは、額面で900万円ぐらいありました。ゴルフ場、ラウンドレッスン、練習場とひたすら“364日”ほとんど休みなく働いて『これ以上できないな』ってくらい仕事をしていましたが、それでも(年収)1000万円に届かなかった。『壁は高いな~』って思っていました」

2019年4月12日、日本クレジット協会会長あての署名を、同協会関係者に手渡す横田さん(左) 写真:清流舎
2019年4月12日、日本クレジット協会会長あての署名を、同協会関係者に手渡す横田さん(左) 写真:清流舎

 そこに2011年の大震災。

「ゴルフの自粛モードにもなって練習場のほうの生徒さんも100人近くからグーッと減って60人ぐらい。新規だと2、3カ月待ちが当たり前だったけど、その間にラウンドレッスンをやめた方もいたりとかして、実質最後の方が5、600万ぐらいの収入でした」

 そんな時に職場である練習場の経営者から「ごるスタ」を勧められます。ゴルフスタジアムの営業担当は「ゴルフスタジアムと信販会社間で、共同で行っているキャンペーンだから、(ホームページの制作は)無料です。万が一のことがあっても、横田さんに迷惑がかかることはありません」と、言葉巧みに騙された横田さんは、分割手数料込みで726万円、84回払いの契約を結ばされてしまします。

 営業担当のいった通り、その後約3年にわたって広告掲載料は毎月滞ることなく入金されました。しかし、2011年の2月、九州でゴルフスタジアムの契約者の口座に広告掲載料が振り込まれなくなります。被害は全国へと広がり、横田さんに対する支払いもなくなりました。

 事件が表面化し、ゴルフ界も騒然となります。1000人を超える被害者の中には日本プロゴルフ協会、日本女子プロゴルフ協会の会員たちも含まれていました。被害額も40億円を超えたゴルフスタジアム事件は、各メディアにも取り上げられ、広く世間に知れ渡ることとなります。

 事件が発覚後、横田さんはゴルフの仕事から離れ、別業種へと転職します。その理由を尋ねると、横田さんはこう答えました。

「今まで信じきっていたゴルフ業界で起きた事実に嫌気や劣等感を感じたんです。それで人生のやり直しをするため、あえて業界を離れて事件と正面から向き合うためでした」

 横田さんは静岡から上京し、単身赴任生活を始めました。家族の介護のため忙しくなった「被害者を守る会」の今西圭介代表をサポートする形で共同代表にもなった横田さんは、強い熱意をもってリース・信販会社との法廷闘争に踏み込んでいくのです。

 議員宿舎を直接訪ねて、国会議員には会員の窮状と事件が内包する問題の深刻さを訴え、予算委員会での質問も実現させます。経済産業省やクレジット協会でも担当者に1万を超える署名を手渡し、信販会社の与信の甘さを訴えました。信販・リース会社への抗議行動は極寒の早朝でも強行されます。

「活動してくれたおかげで時間稼ぎできてお金が貯められた」

【写真】恐怖の浮島グリーン! 設計家ピート・ダイのすごさが分かる日本のコース3選

画像ギャラリー

設計コンセプトの集大成ともいえる、PGMマリアGLの17番ホールの浮島グリーン 写真:ゴルフ場提供
両サイドにいくつものマウンドが連なるPGMマリアGLの9番ホール 写真:ゴルフ場提供
日本庭園を思わせるPGMマリアGLの18番ホールの白砂バンカー 写真:ゴルフ場提供
新・西山荘CC17番ホールの浮島グリーン。スリリングな興奮を味わおう 写真:ゴルフ場提供
超ロングバンカーが強烈な存在感を示す新・西山荘CCの6番ホール 写真:ゴルフ場提供
常連のプレーヤーが「火星のよう」と表現する新・西山荘CC13番ホール。難易度も他の星レベル!? 写真:ゴルフ場提供
ピートダイGCロイヤルC8番の浮島グリーン。コースは、ピート・ダイの設計理念がギュッと凝縮された造りになっている 写真:ゴルフ場提供
距離感を合わせるのが難しいピートダイGCロイヤルCの12番ホール。アゲンストの風も難易度を上げる 写真:ゴルフ場提供
“恐怖の浮島グリーン”の本家本元、TPCソーグラス17番 写真:Getty Images
“恐怖の浮島グリーン”の本家本元、TPCソーグラス17番 写真:Getty Images
“恐怖の浮島グリーン”の本家本元、TPCソーグラス17番 写真:Getty Images
鳴尾ゴルフ倶楽部の名物「鳴尾丼」は牛肉を玉子でとじた、いわゆる他人丼
鳴尾ゴルフ倶楽部のシンプルな洋朝食
大阪ゴルフクラブの名物「牛ばら肉のカレーうどん」
間違ってもこんなに食べてはいけません!(写真はイメージです)
写真は相生水上ゴルフセンター。打席の前にため池が広がる景色は壮観! ぜひ一度足を運びたい場所です
慎重なショットで攻めないと非常に厳しいゴルフ5カントリーオークビレッヂ18番 写真:ゴルフ場提供
津カントリー倶楽部9番ホール。写真中央にあるのがリベットバンカー 写真:ゴルフ場提供
津カントリー倶楽部18番ホール。豊かな自然とバンカーが描く曲線は実に美しい 写真:ゴルフ場提供
鹿島の杜カントリー倶楽部17番のグリーンサイドにある、通称モンスターバンカー 写真:ゴルフ場提供
バンカーの形は“リンゴのかじり跡”にヒントを得たというゴルフコース 写真:ゴルフ場提供
写真左下にあるのが、ゴルフ5カントリーオークビレッヂ17番の日本一アゴの高いバンカー 写真:ゴルフ場提供
2018年9月20日、横田さん(左)から要望書を受け取る立憲民主党の阿久津幸彦衆議院議員(当時) 写真:清流舎
2019年4月12日、日本クレジット協会会長あての署名を、同協会関係者に手渡す横田さん(左) 写真:清流舎
2019年9月18日、司法記者クラブで記者会見を開いたゴルフスタジアム被害者の会と弁護団。左から3人目が横田さん 写真:清流舎
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