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ゴルフ史最大級40億円被害の真相(5) プロゴルファーをやめてまで先頭に立った共同代表が直面する“理不尽な現実”【小川朗 ゴルフ現場主義!】
1000人以上が総額40億円にも上る被害を受けたゴルフ界を激震させた「ゴルフスタジアム事件」。発覚から7年にわたり取材を続けてきたゴルフジャーナリストの小川朗氏が、最終局面を迎えた事件の全貌をリポートします。プロゴルファーという職を投げうってまで裁判闘争の先頭に立った横田さんは理不尽な現実に直面しています。
「信じきっていたゴルフ業界で起きた事実に嫌気や劣等感を感じた」
事件の発覚から7年。振り向けば、ついてきてくれた会員たちは雪崩を打って和解を選択していました。「ゴルフスタジアム被害者を守る会」の先頭に立ち、勝訴に向けて被害者を鼓舞し続けた代表世話人の横田さん(42)も、訴訟の終盤戦に来て和解を選択。6年に及ぶ法廷闘争に、自らケリをつけました。プロゴルファーとしての職を捨ててまで挑んだ横田さんは今、言い知れぬ複雑な感情を抱えながら、新天地で新たな人生の道を歩み始めています。
【事件のあらましから読む】ゴルフ史最大級40億円被害の真相(1) 発覚7年・裁判を断念する被害者が続出の事情
【連載2回目を読む】「最後の一人まで戦う」闘士が明かした悪質商法の“セールストーク”
【連載3回目を読む】難病ALSとも闘い判決を聞くことなく逝った“不屈の人”の無念
【連載4回目を読む】被害者も一枚岩ではなかった…「守る会」代表を襲った嵐のような日々
受話器から響く声は、重く、暗いものでした。
「この6年は何だったのだろう。裁判で債務ゼロにできなかった悔しさとか、リーダーとしての力のなさとか、自分だけが仕事を犠牲にしてきた馬鹿さ加減とか、そんなことばかりが頭に浮かんで、今は劣等感しかないんです」
こちらが口をはさむ暇がないほどに、自分を責める言葉が続きました。
横田さんがこんな複雑な思いを抱えるのは、特別な事情があります。それはこの事件に取り組んだ本気度の違いといったほうがいいかもしれません。この6年、被害者の誰よりも時間と労力を注ぎ込んできたのは、横田さんであることは誰もが認めるところだからです。
富裕層相手で派手に見えるレッスンプロの仕事ですが、実態はそれほど楽ではありません。横田さんも20代後半には3カ所で同時進行の仕事をしながら、“大台”に届くことはなかったといいます。
「一応(東日本大)震災前ぐらいは、額面で900万円ぐらいありました。ゴルフ場、ラウンドレッスン、練習場とひたすら“364日”ほとんど休みなく働いて『これ以上できないな』ってくらい仕事をしていましたが、それでも(年収)1000万円に届かなかった。『壁は高いな~』って思っていました」
そこに2011年の大震災。
「ゴルフの自粛モードにもなって練習場のほうの生徒さんも100人近くからグーッと減って60人ぐらい。新規だと2、3カ月待ちが当たり前だったけど、その間にラウンドレッスンをやめた方もいたりとかして、実質最後の方が5、600万ぐらいの収入でした」
そんな時に職場である練習場の経営者から「ごるスタ」を勧められます。ゴルフスタジアムの営業担当は「ゴルフスタジアムと信販会社間で、共同で行っているキャンペーンだから、(ホームページの制作は)無料です。万が一のことがあっても、横田さんに迷惑がかかることはありません」と、言葉巧みに騙された横田さんは、分割手数料込みで726万円、84回払いの契約を結ばされてしまします。
営業担当のいった通り、その後約3年にわたって広告掲載料は毎月滞ることなく入金されました。しかし、2011年の2月、九州でゴルフスタジアムの契約者の口座に広告掲載料が振り込まれなくなります。被害は全国へと広がり、横田さんに対する支払いもなくなりました。
事件が表面化し、ゴルフ界も騒然となります。1000人を超える被害者の中には日本プロゴルフ協会、日本女子プロゴルフ協会の会員たちも含まれていました。被害額も40億円を超えたゴルフスタジアム事件は、各メディアにも取り上げられ、広く世間に知れ渡ることとなります。
事件が発覚後、横田さんはゴルフの仕事から離れ、別業種へと転職します。その理由を尋ねると、横田さんはこう答えました。
「今まで信じきっていたゴルフ業界で起きた事実に嫌気や劣等感を感じたんです。それで人生のやり直しをするため、あえて業界を離れて事件と正面から向き合うためでした」
横田さんは静岡から上京し、単身赴任生活を始めました。家族の介護のため忙しくなった「被害者を守る会」の今西圭介代表をサポートする形で共同代表にもなった横田さんは、強い熱意をもってリース・信販会社との法廷闘争に踏み込んでいくのです。
議員宿舎を直接訪ねて、国会議員には会員の窮状と事件が内包する問題の深刻さを訴え、予算委員会での質問も実現させます。経済産業省やクレジット協会でも担当者に1万を超える署名を手渡し、信販会社の与信の甘さを訴えました。信販・リース会社への抗議行動は極寒の早朝でも強行されます。
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