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- 「ベスト63」の選手も! 15日開幕・東京デフリンピックで金メダル狙う男子3選手の横顔とは?
11月15日、デフリンピックが日本では初めて東京で開幕。ゴルフ競技は東京・江東区の若洲ゴルフリンクスで11月18~21日の日程で開催される。金メダル狙う男子3選手に意気込みを聞いた。
「地元のアドバンテージを生かして、金メダルを目標に頑張ります」
もうすぐ、デフアスリートの祭典が始まる。デフリンピックがやってくる。
デフ=Deafとは英語で「耳が聞こえない」ことを表す言葉であり、耳が聞こえない、聞こえにくい人をデフと呼んでいる。そんなデフのアスリートたちが集うスポーツの祭典がデフリンピックである。4年に一度開催される、いわば聴覚障がい者のオリンピックだ。
11月15日、そのデフリンピックが日本では初めて、東京で開幕する(会場は他に静岡、福島も含まれる)。「第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025」がそれだ。1924年にパリで第1回が開催されてちょうど100周年。記念すべき年に開催される今大会で、注目されている競技がある。
ゴルフだ。今回デフリンピックに初めて正式種目として採用された。

日本チームは男女5名の選手からなる。男子は前島博之選手、渕暢之選手、袖山哲朗選手の3名が代表だ。3人ともにデフだが、程度は異なる。
前島選手は先天的な重度聴覚障害で補聴器を外すとほとんど聞こえない。袖山選手も生まれつきのデフで、補聴器なしの場合、電車の音がかすかに聞こえるくらい。ふだんは補聴器、手話、文字による情報でコミュニケーションをとっている。一方、最年長の渕選手は、後天性の両耳感音性難聴。6歳の頃から聞こえにくくなった。
健聴者と一緒にラウンドするときなどは、補聴器を使うこともある。だが、デフゴルフの試合では補聴器を使用することはできない。したがって、試合中は3名とも、危険球を知らせる声、競技中のアナウンスや風の音など、ほぼ無音になる。

だが、「音に頼らないぶん、集中力が高まります。自然との一体感も強く感じられるのが喜びでもあります」(袖山選手)というように、3名ともに聞こえないことでゴルフに真っすぐに向き合うことができると捉えている。ちなみに、前島選手のベストスコアは63(パー71)と65(パー72)。袖山選手は67。渕選手は69である。
強力なメンバーがそろう日本チームだが、アスリートないしゴルファーとしての経歴は、前島選手と袖山選手の2人と渕選手とではちょっと違っている。
偶然だが、前島選手と袖山選手は2人とも元は陸上選手で、ともに3度のデフリンピック出場歴がある。そして、ゴルフに出会ったきっかけも似ていて、小学生のとき、父親に打ちっぱなしに連れていかれたことだという。

「陸上競技でデフリンピックに出場してきて、その特別さを感じていました。デフリンピックはデフにとっての最高の国際的な舞台だし、自分の成長を表現する場なんです。 2017年に陸上を引退した4年後、東京デフリンピック2025ではゴルフが正式種目になることを知りました。そのとき、ふたたび夢が広がるのを感じたんです。今度はゴルフで、その舞台に立ちたい、もう一度デフリンピックに挑戦するのだ、と」(前島選手)
一方で渕選手は、「学生時代は卓球をしていました。ゴルフを始めたのは、社会人になって会社の同僚に誘われたのがきっかけです。それから4年たって、腕試しという気持ちで競技ゴルフに取り組みはじめました。デフリンピックのことは4年前に初めて知りました。デフという言葉もそのとき知ったくらいです」という。
そんな3名が今回のデフリンピックで掲げる目標は、メダルの獲得である。なかでも袖山選手は、その色も明言する。

「地元のアドバンテージを生かして、金メダルを目標に頑張ります」
そして、その先に見ているものも、3人ともに共通している。自身がベストを尽くし活躍することでデフスポーツの認知度の向上と「デフの世界を周知する」(渕山選手)ことだ。
前島選手はこういう。
「聴覚障害があってもここまでできるということを社会に伝えて後に続くアスリートの道を切り拓いていきたいです」
ゴルフ競技は東京・江東区の若洲ゴルフリンクスで11月18~21日の日程で開催される。世界のデフゴルファーの静かな熱戦に熱い声援を送ろう。
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