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- 斉藤愛璃「もう一度、スポットライトを浴びたい」“元祖シンデレラガール”の今
渋野日向子よりも先に“シンデレラ”と呼ばれた選手がいた。ツアー本格参戦1年目の2012年開幕戦、ダイキンオーキッドレディスでツアー初優勝した斉藤愛璃がそうだ。レギュラーツアーから離れて長い歳月が経ったが、彼女は今どのようにゴルフと向き合っているのだろうか。
衝撃的な開幕戦での初優勝から早10年近く
全英女子オープンで優勝した渋野日向子が“スマイル・シンデレラ”と呼ばれ、一大フィーバーを巻き起こしたことは記憶に新しいが、実は今から約10年前、国内女子ツアーに彗星のように現れ、やはり“シンデレラ”と呼ばれた元祖がいる。
斉藤愛璃。ツアー本格参戦1年目の2012年開幕戦、ダイキンオーキッドレディスで初優勝を飾ると、愛らしいルックスも相まって“シンデレラガール”として人気に火がついた。
当時はアン・ソンジュやイ・ボミなど強い韓国勢の台頭が著しいなか、日本選手の新たなヒロイン誕生に沸いていたのを今もよく記憶している。
そんな彼女と久しぶりに顔を合わせる機会があった。斉藤は9月6~8日、富士カントリークラブで開催された「富士カントリークラブレディスマッチプレー」に出場していた。
ツアー初優勝した当時はまだ22歳で、あれから10年近くがたち今は31歳。最近では同年代で第一線から退く選手も増える中、斉藤は今もツアーに出続けている。ただ、初優勝した12年は賞金ランキング44位で初シードを獲得したが、翌13年にはシードを喪失。その後も毎年、QTからどうにかレギュラーツアーに参戦していたがシード復帰には至らず、17年からは下部ツアーが主戦場とする日々が続いている。
個人的には、これほど長らく結果が出ていなくても、ツアーに挑戦し続ける理由は何なのかがとても気になっていた。試合後に帰ろうとする斉藤に声をかけると、笑顔で取材に応じてくれた。
「こんな状態でも長くゴルフをやりたい」
「今のゴルフは正直、あまりよくありません。一時期はアプローチとパターが課題でしたが、そこは上がってきていて、ショットの精度がレギュラーツアーに出ていたときよりかは、落ちています。年齢的なところもあり、キレがなくなってきたのもあります。トレーニング方法やコーチをかえたりしながら、いろいろと励んでいるところです」
正直に現在のゴルフの状態を教えてくれたが、長いトンネルからなかなか脱出できないでいるのが険しい表情からもよく伝わってきた。
「やっぱり試合会場に行っているときのほうがモチベーションは上がります。周囲に選手たちがいますし、試合に向けてやろうという気持ちになりますから。試合が空いてしまったときに、自分で追い込んでやるっていうのはなかなか難しい。練習量は減ってはいないですが、いい緊張感のなかで練習したり、試合を積み重ねていくと経験値が高まります。同じ練習をしてもそっちのほうがプラスになりますね。そこで実力の差が出てしまうのかなって感じます」
斉藤はプロになる前からかなりの苦労人だ。3度目のプロテストで合格を勝ち取ったのが11年。同年のQT(=予選会)から翌12年ツアーフル参戦の権利を勝ち取り、開幕戦、ダイキンオーキッドレディスで初優勝。その後の成績は前述の通りだ。19年はプロになってから初めて獲得賞金ゼロも経験した。
さらに21年はレギュラーツアーに推薦で6試合出場しているが、すべて予選落ち。ステップ・アップ・ツアーも8試合に出場して、予選落ちが5試合。最高位はECCレディスゴルフトーナメントの33位タイと振るわない。
「本当に結果が出ないのは情けないですよね……。でも、こんな状態でもゴルフは長くやりたいんです。だからそんなに焦らず、一つ一つ課題をクリアしていこうという感じで今はやっています。私も今年で32歳ですが、同年代で最近は引退したり、第一線から退く選手も増えてきました。活躍している選手がやめるので、『まだ戦えるのにもったいないな』とか思ったりします」
初優勝後にガラリと変わった環境
斉藤にゴルフへの情熱が失せたわけではないようだった。同世代の選手たちがツアーから離れる中、今もなおツアーで結果を残したいと強く思っている。
「若いときにツアーで優勝して、少しずつダメになってからは、メディアの方からも『最近どうしたの?』ってずっと言われていました。だからか『うまくいかなすぎて、どうしたらいいんだろう……』と、かなり悩んでいましたね。初優勝は多少運もあったと思います。私はプロテストに受かるのは遅かったですから、あの優勝から急に環境が変わってしまったのもあって、ゆっくり調整する時間もなく、それで焦っていました。そのあとの結果もなかなか受け入れられなかったこともありました。でも今はいい意味で自分のペースでゴルフができていますし、気持ちの面ではめちゃくちゃ追い込まれるっていうこともありません。伸び伸びとゴルフができていますね」
追い込まれた時期を一通り経験しての今がとても楽だと言った。それでもプロゴルファーとしては結果が欲しいのも事実。現に賞金を稼げなければ、生活もままならない。
「今年も推薦でレギュラーツアーに出させていただいていますが、結果を出せないときは自分のなかでは不甲斐ないし、悔しいなと思う部分があります。悔しいという気持ちがあるからこそ、そこから切り替えて、もっとがんばろうと思えているのも確かです。気持ちの面では、以前感じていた『試合に出るのが嫌だな』というのはなくなりました」
「優勝の可能性はゼロではない」
今も諦めない原動力になっているのは一体なんなのか――。それがとても気になった。
「やっぱりもう一回、あの時の優勝を味わいたいからです。もう一度スポットライトを浴びたいってなります。やっぱり、それしか考えていないです。そもそもその気持ちがないと(プロゴルファーは)やってないですよ。だってそれがないとつらいですもん。成績もずっと出てないし、でもまだやれることをやり切れていません。やり切っていたらもう私はゴルフをやめています。何年も成績が出ていないし、自分のなかでこれから成績が出るのかなって不安もありますが、それでも試合に出られる限りは優勝の可能性がゼロになったわけじゃない。ありがたいことに推薦をいただいているので、出られる限りは優勝できることを信じて努力をしたいです」
自ら積極的に話すタイプの選手ではないが、内に秘めた熱い思いは話し始めると止まらなかった。再び優勝する日を想像しながら、日々練習に取り組み試合に出続けている。
「今はいろんな人にもったいないって言われます。詰めが甘かったり、やっていることとスコアが直結していないというか。スコアの出し方が下手なのかな、組み立て方もそうですね。何かつかめればって感じなんでしょうが、そこがうまくいけば…。成績が出ないときは落ち込みますし、正直つらい。同じ状況なら普通は病みますよね。でも次の日には忘れているんです(笑)」
そう言って最後に微笑んだ。冗談がいえるほど今は気持ちよくゴルフができているのだろう。“元祖シンデレラ”の斉藤の笑顔を再びレギュラーツアーで見てみたいものだ。
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