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未勝利の中西直人がZOZOに出られる理由 日本男子ツアー生き残り策を考える【舩越園子の砂場Talk】
最近のゴルフ界では、2022年から変更される世界ランキングのポイントシステムが話題になっていますが、米PGAツアーですでに実施されている「プレーヤーズ・インパクト・プログラム(PIP)」という取り組みをご存じでしょうか? 選手の注目度や話題性を「インパクトスコア」としてポイント化し、ランキング化する取り組みですが、その導入が、「華がない」と揶揄される国内男子ツアーの起爆剤になるのではないかという提言です。
実力勝負の米PGAツアーが選手の発信力に“賞金”を付け始めた
2022年8月から世界ランキングのポイント付与のシステムが変更されることが、日本のゴルフ界でも話題になっている。
いや、「話題」というより、「懸念」と表現したほうがいいのかもしれない。というのも、これまでは「大会基準」で付与されていたポイントが廃止され、これからは「選手基準」でポイントが付与されることになる。
どのぐらい強い選手が何人ぐらい出場しており、その中で何位になるかで得られるポイントが変わってくる。端的に言えば、日本ツアーでの優勝に対する世界ランキング的な評価が相対的に低下することが懸念されている。
「そりゃ大変だ」「どうしたらいい?」と考えたとき、まず頭に浮かぶのは、日本の選手たちに「もっとうまくなってほしい」「もっと強くなってほしい」という願いだ。
しかし、プロゴルフはスポーツであると同時に興行ビジネスであり、その興行ビジネス的に「どうしたらいい?」と考えたとき、私が思い浮かべるのは、「もっと魅力を伝える工夫がほしい」という願いだ。
今年4月、米PGAツアーで「プレーヤーズ・インパクト・プログラム(PIP)」なるものが実施されていることが明らかになった。
選手が社会や人々にどれほどのインパクトを与えたか、人々からどれほど注目され、話題にされたか、グーグルやSNSに登場した回数や頻度といったデジタル・フットプリントやニールセン・ブランド・レーティングといったものを「インパクト・スコア」という数値で示し、これをランキング化するというものだ。
シーズンエンドには、このPIPのランキングでトップ10に入った選手たちに、総額4000万ドル(約45億円)のボーナスを授けるという。
今のところ、このPIPはメディアにも一般にも公開されていないため、ランキングの詳細はわからないのだが、米メディアの試算によれば、今、1位につけているのは、交通事故で重傷を負ってリハビリ中のタイガー・ウッズだそうだ。
試合に出てもいないウッズが、なぜ1位になれるのか。その答え、その理由は、もちろん1つではなく、メジャー15勝、通算82勝を挙げた彼のこれまでのすべての積み重ねであることは言うまでもない。
しかし、彼がデジタル・フットプリントをたくさん残している最大の理由は、ツイッターで約650万人、インスタグラムで約270万人のフォロワーを有していることだろう。
米ゴルフ界では、ウッズのみならず、ソーシャルメディアなどを自ら活用し、自分自身のこと、ゴルフのことを人々に語りかけ、アピールしている選手は多い。
そうすることでゴルフに興味を抱く人が増え、ゴルフ人気を増大させ、プロゴルファーやゴルフの大会、ツアーをサポートしてくれる企業や団体が増えるとしたら、長い目で見たとき、選手自身による自己アピールが日本のゴルフの位置付けを相対的に引き上げることにつながる可能性は大いにあると私は思う。
スタート直前まで動画を自撮りし、ティーオフまでの数十秒でSNSに
日本の男子ゴルフが低迷している原因は「スターがいないから」、「華がないから」という声をしばしば耳にする。
だが、日本の男子ツアーの試合会場で選手たちを眺めてみたら、魅力的な選手が何人もいることがわかり、私は逆に安堵した。
「華がない」と思われているのは、選手の魅力が人々にしっかり伝わっていないからであり、もちろん伝えるのはメディアの仕事ではあるが、選手が自ら伝えることができれば、そのほうが手っ取り早いし、正確に伝えることもできるはずだ。
そんな自己アピールこそが、米ツアーで行なっているPIPにつながるのだが、日本で自分の魅力を積極的に発信している筆頭は、間違いなく、中西直人だ。
中西のことは、このコーナーで9月にもお伝えしたばかりだが、あれから数週間後、日本で開催される米ツアー大会のZOZOチャンピオンシップに主催者推薦で出場することが決まり、「なるほどね」と頷かされた。
2010年にプロ転向した中西は、33歳ながらシード選手としては「なりたて」に近く、優勝経験もまだ有していない。しかし、彼の自己アピール術は、すでに日本のゴルフ界ではナンバー1と言っていい。
特徴的なツバの広いハットやスタイリッシュなウエアは、すべて自分自身が経営する会社でデザイン、製造しているという。
「遠くから見ても僕だとわかる着こなしを心がけています。僕はこれをオンリーワン・プロジェクトと呼んでいます」
試合の日もスタート直前までスマホで動画を自撮りして、ティーオフまでの数十秒ぐらいの間にSNSへアップする。
「大変か? 大変です(笑)。でも、これが自分が選んだ道です。ギャラリーのみなさんは無償の愛で応援してくれていて、みなさんはロープの内側から外側を見ることができないので、僕は応援を受けている側の景色をみなさんと共有したい。中から外を一緒に見たい。そうできることが、とても幸せです」
喜びも驚きも興奮もギャラリーやファンと共有したいし、そうできることが幸せだと考える中西の姿勢は、単なる自己アピールにとどまらず、ゴルフファン拡大やゴルフというゲームそのもののアピール、向上につながるはずだ。
もしも日本ツアーに米ツアー同様のPIPランキングがあったなら、中西はダントツ1位にランクされるはずで、そんな彼の努力が評価されたからこそ、彼は今週、ZOZOチャンピオンシップ出場をオファーされたのだ。そして、彼は彼自身の魅力を存分に習志野で振りまくことだろう。
そして、もしもPIPランキングを日本ツアーでも創設したら、ビッグボーナスは出せずとも、選手たちへの刺激になり、もっと華やかになるのではないか。少なくとも何かが変わるのではないか。
私はそんなことを考えている。
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