竹本の勝負強さは今後の活躍を支える大きな武器
■竹本梨奈(たけもと・りな)/2000年生まれ、新潟県出身。8歳からゴルフを始め、ゴルフの名門・東北高校に進学。卒業後は、プロを目指しマイナビネクストヒロインゴルフツアーに出場。同ツアーには今季7戦に出場し、獲得賞金4位(¥846,000)。バーディー率8位と、攻めるゴルフを身上とする(第9戦終了時のデータ)。
11月11日にマイナビネクストヒロインツアー第11戦が開催されました。4アンダー・68ストロークで並んだ田邉美莉選手とのプレーオフを制して初優勝を飾ったのは、竹本梨奈選手です。

彼女の武器は勝負強さです。今大会では、正規の18番ホールでのバーディーパットが印象的でした。同組で優勝争いをしていた田邉選手が2打目をピタリとつけ、ほぼバーディー確定という状況。一方の竹本選手は、2打目を寄せ切れず、カップまで7~8メートル程度残します。これをねじ込み、「絶対に勝ちたかったから気合いで入れました」と、本人がラウンド後にこの時の心境を語ってくれました。
彼女は、同ツアーの第8戦Sanrio Smile Golf Tournamentでも、優勝争いをしていた終盤に大事なパットを沈めています。この時は惜しくも敗れてしまいましたが、彼女の勝負強さは、今後の活躍を支える大きな武器になるでしょう。
さて、この試合で私とともに解説を務めていたのが、2013年のレギュラーツアーで賞金女王に輝いた森田理香子選手です。ホールアウトしたプレーヤーにインタビューする中で、アプローチが苦手というある選手に対し、森田選手はこんなアドバイスを送りました。「短所も練習しなければいけないけど、それ以上に長所を伸ばすことが大事だよ」。
プロ、アマチュア問わず、ゴルファーにはストロングポイントとウィークポイントがあります。「苦手を克服したい」という気持ちは誰もが持っているもの。練習に行けば、苦手な番手や距離をたくさん練習したくなりますよね。もちろん、短所を改善することも大切ですが、それ以上に長所を伸ばし、自分の武器を磨いたほうがいい、と森田選手はアドバイスしたのです。
「業績が上がらないことは諦めて良い部分を伸ばす」

この言葉を聞いて、私は自分のプレーヤー時代を思い出しました。ドライバーの調子が悪く、悩んでいた時期、ある企業の経営者の方との雑談の中で「ショートゲームは良いんですが、ドライバーがうまくいかないんです」という話をしました。すると、その方は「会社経営に置き換えるなら、業績が上がらないことは諦めて、良い部分を伸ばすよ。ゴルフとは関係ないかもしれないけどね」と言ってくださいました。
その何気ないひと言に私はハッとし、それから練習の取り組み方を変えました。今までは苦手なドライバーに一番時間を割いていたのですが、得意のショートゲームをとにかく練習することに。すると、気持ちがラクになってゴルフ全体の調子が上向き、いつしかドライバーの苦手意識もなくなっていきました。
ウイークポイントが足を引っ張っていると感じているなら、発想を変えて、ストロングポイントを伸ばすことに重点を置いてみてください。自分の長所と短所が分からない人は、まず自分のゴルフを分析してみることも大切ですね。テクニカルな修正ではなく、練習の比率を変えるだけでもゴルフが良い方向に行くかもしれませんよ。
■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。