20~30センチが模範的だが実際には…
遊びのラウンドでは、カップの近くまでファーストパットやアプローチを寄せると「OK」を出して、カップインを省略することが多いと思います。でも、まだあまりラウンドに慣れないうちはどのくらいで出せばいいのか迷いますよね。「辛すぎても意地悪しているみたいだし、甘すぎても忖度しているみたいだし」と。では、どのくらいの距離で出すのが適当なのでしょうか?

「OKパット」とは、プレーヤーがパッティングで外しようがないほどカップにボールが近づいた際に、主にラウンドを円滑に進行するため、最後の1打を省略することを指します。
このパットは外さないだろうから打たなくてもOKです、という意味合いのもと行われる慣習のようなもので、公式のルールブックには記載がありません。
しかし、現在、最もポピュラーなゲーム形式であるストロークプレー(1ラウンドの総打数を競う)とは別に、マッチプレーと呼ばれる対戦相手同士が各ホールごとの勝敗を競い合い、最終的に勝利したホール数の多いほうが勝つゲーム形式もあります。このマッチプレーではOKパット(正確には「コンシード」)が正式なルールとして採用されています。
基本的には、ワングリップ(20~30センチ以内)と呼ばれる、パターグリップと同じくらいの長さを基準にするというのが一般的ではありますが、実際には、40~50センチくらいまではOKを出すというのがゴルファーの間で常態化しています。
OKパットはゴルフコンペや接待ゴルフでも採用されることが多いですが、このように明確な基準がないので、初心者ゴルファーには判断が難しいところです。
また、実際にはその場の状況によって、OKの基準が変わることも多いようです。ティーチングプロの三浦辰施氏は次のような例を紹介します。
「例えば、いわゆる一般的なOKパットのワングリップに達していなかったとしても、難易度の高い場所から素晴らしいショットをしてピン側まで寄せることができた際は、称賛の意味を込めてOKとすることは少なくありません」
「また、進行状況も考慮する場合があります。後ろの組が待っている際は、ある程度のところでOKを出すのがマナーです」
「OKパットは、距離を厳格に定めるのではなく、ピンに寄せるまでの過程が素晴らしいと思えたのであれば、多少距離があったとしてもOKとすることがあります。それも相手への敬意と言えるのではないでしょうか」
このように、OKパットは難易度を下げるための初心者へ向けた行為というよりは、むしろ相手へのリスペクトという意味合いが強いものと言えます。
自分でOKを出すのはマナー違反
実際には深い意味合いのあるOKパットですが、あくまでも他者に対してのリスペクトから行うものであるため、自分でOKを出すことはマナー違反とされています。OKパットは、あくまでも同伴している他のプレーヤーが判断しなければなりません。
たとえ20~30センチ以内の距離にボールがあったとしても、パットを外したプレーヤー自身がOKパットと勝手に判断してボールを拾い上げてしまうと、周りのプレーヤーを不快な気持ちにさせてしまうかもしれません。
ゴルフは紳士のスポーツと呼ばれるだけあって、マナーを重視するスポーツです。OKを自分で出すことは絶対にやめましょう。
また、OKパットばかりもらっていると、パッティングが思うように上達しないという意見もあります。本番のラウンドで「これを入れればパーだ、バーディーだ」と思いながらパットを打つことは、いかに短い距離でも緊張感を伴います。それを決め切るメンタルや技術を養うことも上達には欠かせません。
特に、ラウンド経験が浅いゴルフを始めたばかりの人にとっては、1回でも多く実際にストロークすることが、パッティングの経験を積めるチャンスと言えます。
後続の組を待たせていないか、前の組に話されていないか、など進行に気を配る必要はありますが、初心者の人ほど、OKパットに頼りすぎずにプレーしてみることが上達への近道となるでしょう。
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OKパットの根底には、マッチプレーで対戦相手の失敗を期待しないという、紳士のスポーツらしい考え方があります。重要なのは相手にリスペクトを持っているかどうかであり、OKパットを出す際にも、また、出された際にもそれを忘れないようにしましょう。