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- 高梨沙羅が涙した不可解裁定に似た“被害者”はゴルフ界にも!炎上の末、ルールが変わった例も
オリンピックという大舞台での予期せぬ「失格」により大粒の涙を流したスキージャンプの高梨沙羅。日本はもちろん世界中から疑問の声が上がっていますが、似たような“被害者”はゴルフ界でも数年に一度生まれてしまっているのです。
競技運営の不備によりビッグタイトルを逃す例は何年かに一度ある
北京冬季オリンピック。2月7日に行われたスキージャンプの新種目「混合団体」で、日本の高梨沙羅を含む、強豪4ヵ国の女子5選手が、競技途中に着用するスーツが規定違反だったとして「失格」となる、唖然、呆然、そして騒然の事態がありました。

この処罰に選手・関係者たちは「前日の競技(ノーマルヒル)では問題なかったのに」と憤慨。統括競技団体のFIS(国際スキー連盟)に対し、「女子ジャンプをぶちこわした。彼らは何をしようとしているのか分からない」と強く非難する声が挙がっています。確かに、今回のトラブルを避ける方法はいくらもあったはず。競技運営の不備と言えるでしょう。
競技団体が、その運営の拙さで世界中のファン・関係者から非難された例は、実はゴルフ界でも過去にいくつかありました。振り返ってみましょう。
2016年全米オープン
競技団体の不手際が厳しく指摘された最も有名な例は、2016年、オークモントCCで開催された全米オープンでしょう。
最終日。トップに立っていたダスティン・ジョンソンは5番ホールのグリーン上、ストロークする前にボールがわずかに動いたことに気が付きます。そこで彼は競技委員を呼び、ボールが動いたこと、そして自分は関与していないことを告げると、競技委員は納得し、無罰で競技を続けさせました。
ところが、しばらくたった12番ティーで、別の競技委員がダスティンの前に現れ、改めてビデオで検証しており、競技終了後に1打のペナルティーが課せられる可能性があることを告げたのでした。
幸い、その時点でダスティンは2位に2打差をつけており、その後も安定したプレーでトップをキープ。結局、競技終了後に1打罰の裁定が下されるも、優勝という結果には影響しませんでした。
しかし、これが接戦であれば、ダスティンは自分の順位も分からぬままでのプレーを強いられるところでした。
この処置に、主催のUSGA(全米ゴルフ協会)には世界中から非難の嵐。「炎上」状態となりました。
そして最終的には、問題の発端である、グリーン上で動かされたボールについては、「プレーヤーが偶然に動かした場合は無罰」とするローカルルールの追加が認められることになったのです。
2010年全米プロ
前述した例は結果に影響を及ぼさなかったからまだ良いですが、大魚を逃した例もあります。
競技運営の配慮不足で、本人が思いも寄らぬペナルティーとなり、メジャータイトルを逃したのは、前述の全米オープンでは無事、栄冠を手にしたダスティン・ジョンソン。
10年の全米プロでのこと。舞台は大小1000個余ものバンカーが散らばるウィスリングストレイツ。
最終日、ダスティンは2位に1打差のトップで最終18番ホールを迎えました。しかし、ティーショットは右に大きくスライス。ボールは大ギャラリーの中の砂地の上にありました。
その砂地はギャラリーに踏み荒らされ、枯れ草やゴミが散乱する状態。そのため、彼はバンカーではなくウエイストエリア(荒地)と判断。ストローク前にクラブをソールしたのです。
ところが、同大会ではあらかじめ「人工の砂地はすべてバンカー」とする競技規定が告知されていました。ですから、ダスティンがソールした砂地もルール上はバンカーだったのです。そのため、ダスティンには2罰打が課せられ、結果、優勝を逃したのでした。
もちろん、ペナルティーの責任は、認識不足のダスティンにあります。それでも、ファンの間からは運営側の配慮が足りていればこの違反を回避することができたのでは、という声が挙がりました。
2017年ANAインスピレーション
17年、LPGA(全米女子プロゴルフ協会)のメジャー競技、ANAインスピレーションの最終日。
アメリカの人気選手、レクシー・トンプソンは13番ホールを終えて3打差のトップに立っていました。
ところが、そこに競技委員が現れ、突然4罰打の付加を告げたのです。
原因は、前日第3ラウンドのグリーン上で「誤所からのプレー」(2打罰)があり、それにより誤ったスコアを提出(さらに2打罰)した、というもの。
実は、その違反はビデオ映像を見た視聴者からのメールで判明したものでした。指摘されたシーンのビデオを競技委員が確認したところ、グリーン上でレクシーがボールをリプレースする位置がわずか2~3センチですが、確かに元の位置から外れていたことが分かったのです。
この4罰打が響き、プレーオフに持ち込まれた末にレクシーは優勝を逃しました。
むろんこれも“炎上”状態に。
そして、この直後、ゴルフ規則を統括するR&AとUSGAは「肉眼では分からない程度の事象」はビデオにより違反が判明しても、競技委員会はそれを採用しないとする裁定を裁定集に加えたのでした。
さて、高梨沙羅が涙した今回のスーツの規定違反ですが、世界中からの非難や疑問の声に、競技団体のFISはどう応じるのでしょうか。
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