技量が異なる者同士が公平に競い合える仕組み
日本ゴルフ協会(JGA)の公式サイトには、以下のような記述があります。
「ハンディキャップの目的は、技量の異なるプレーヤー同士が公平な基準で競い合えるようにすることにより、ゴルフをより楽しめるようにすることです」

ゴルフでは、初心者と上級者の実力差がはっきりと出ます。純粋にスコアの勝負となると初心者が上位に入ることはほぼ不可能と言えます。そこで用いられるのがハンディキャップで、スコアの調整を行うことで初心者でも上位入賞が可能になり、競技が楽しめるようになります。
ハンディキャップには、「オフィシャルハンディキャップ」と「プライベートハンディキャップ」の大きく2種類があります。
オフィシャルハンディキャップは、自分のゴルフの実力を示す指標にもなり、数字が小さくなるほど上級者であると言えます。競技によっては、「ハンディキャップ〇以下」という出場条件が設けられていることもあります。
一般的に、ハンディキャップ0だと「スクラッチプレーヤー」、1~9は「シングルプレーヤー」と呼ばれます。それより上のハンディキャップ15~20だと、平均スコアが90~100ほどになり、「アベレージゴルファー」と総称されます。
アマチュアゴルファーにとっては、自分のハンディキャップを少なくしていくことは一つの目標であり、ゴルフ上達のための大きなモチベーションになっています。
オフィシャルハンディキャップを取得する方法として、認可を受けたゴルフ場に所属し、スコアを提出する方法があります。初めてオフィシャルハンディキャップを取得する場合は、所属倶楽部に最低5枚のスコアを提出します。するとJGAのハンディキャップ規定に基づき、プレーヤーにハンディキャップインデックスという小数第1位までの数字が発行されます。
「ハンディキャップ=平均スコア-72」ではない
ちなみに、ハンディキャップは概ね平均スコアから72を引いた数だと思っている人が少なくないと思いますが、そうではありません。ハンディキャップを算出する際には「ストロークコントロール」などの調整が行われるからです。
ストロークコントロールとは、プレーヤーの潜在的な技量をより正確にハンディキャップに反映させるために各ホールのスコアを下方修正するものであり、例外的な悪いスコアがハンディキャップインデックスに過度の影響を与えることを防止します。
ハンディキャップが減ることは名誉である一方、純粋に勝負を考えた場合、ハンディキャップは多いほど有利です。実力以上にたくさんのハンディキャップをもらってしまい、その人が過度に有利になることを防いでいるわけです。
ですから、平均スコア100の人のハンディキャップは72を引いて28、とはなりません。「だいたい4回に1回出るスコアから72を引いたのがイコール、ハンディキャップ」などと表現する人もいます。もちろん状況にもよるので一概には言えませんが、何となくイメージがつかめるのではないでしょうか。要するに、まぐれで出たベストスコアではないが、このくらいで回る潜在的な力はある、という数値と理解すればしっくりくると思います。
ここで注意が必要なのは、所属するゴルフ場が「コースレーティング」と「スロープレーティング」を持っていない場合は、スコアを提出してもオフィシャルハンディキャップが取得できず、基本的にその倶楽部内のみで通用する倶楽部ハンディキャップとなってしまうことです。倶楽部ハンディキャップは一度上がるとなかなか下がらない場合があるのに対し、オフィシャルハンディキャップは提出したスコアに従って変動します。
ただし、ゴルフ場の会員になる以外にも、オフィシャルハンディキャップを取得する方法があります。JGAの担当者は以下のように話します。
「オフィシャルハンディキャップの取得には“倶楽部”の会員になる必要があります。ゴルフ場でなくても、一定の要件を満たせば倶楽部を形成することができ、楽天やGDOなどでオフィシャルハンディキャップ取得のサービスを展開しています」
取得方法はサービスによって異なりますが、まずは「倶楽部」の会員になることが、ハンディキャップ取得の第一歩と言えそうです。
コンペでよく使われる「ぺリア方式」「新ぺリア方式」って?
オフィシャルハンディキャップとは別に、ゴルフのコンペで使用するのがプライベートハンディキャップです。
プライベートハンディキャップは誰にいくつをつけようが、仲間内のコンセンサスが取れていれば問題ありません。定期的なプライベートコンペを“いつメン”で行っているような場合には、そのコンペ内でのみ通用するプライベートハンディキャップを設定する場合もあります。「この人は仲間内で一番うまいからハンディ0」「あの人は前回優勝したからハンディを5つ下げよう」といった具合です。
ただし上記の方式ですと、しっかりした計算式を用いているわけでもなく、多分に恣意的な要素が入り込みやすくなりますし、初参加の人のハンディキャップをいくつにするか、といった悩ましい問題も発生します。そこで、一般的にはぺリア方式や新ぺリア方式と呼ばれる計算方法が用いられて、そのコンペでのプライベートハンディキャップが算出されます。
このぺリア方式や新ぺリア方式では、「隠しホール」というものを設定します。隠しホールはハンディキャップの計算に大きく影響するもので、ここで叩けば叩くほど、コンペでは有利になります。
ぺリア方式では、18ホール中6ホールを隠しホールに設定し、「(隠しホールの合計スコア×3-72)×0.8」という計算式でプライベートハンディキャップを算出します。この数字を元のスコア(グロス)から引いた「ネットスコア」でコンペの勝敗を競うわけです。
ただしぺリア方式では隠しホールが3分の1しかなく運の要素が強くなりすぎるため、隠しホールを増やして、より実力が反映されやすくしたのが新ぺリア方式です。
新ぺリア方式では、18ホール中アウトとインそれぞれで6ホールずつ、合計12ホールの隠しホールを設定します。そして、「(隠しホールの合計スコア×1.5-72)×0.8」という計算式でハンディキャップを算出します。
この他にも、ぺリア方式と新ぺリア方式の間を取った「新新ぺリア方式」やグロスのスコアと最悪ホールのスコアを基に、査定表を使ってハンディキャップを決める「キャロウェイ方式」などがあります。
どの方式を採用するかで、初心者やアベレージゴルファーの上位進出に大きく影響しますので、コンペを楽しいものにするためによく検討するべきだと言えるでしょう。
※「オフィシャルハンディキャップを取得できるゴルフ場」について、ゴルフ場がJGAに加盟していなくても「コースレーティング」と「スロープレーティング」を取得していてオフィシャルハンディキャップを申請できる場合もあるため、当該箇所を訂正しました。