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「あっ、ボールが動いた!」ベテランゴルファーでも意外と知らないルールと処置

小関洋一

2022年5月7日

コラム

ゴルフのルールは複雑ですが、ツアープロでも処置に迷うのがボールが動いたときの処置。自然の力で動いた場合も自分で動かした場合もあるので、なおさら混乱します。

自然の力で動いた球の処置はツアープロでも迷う難題

「あっ、打つ前にボールが動いた。自分が動かしたのかなあ?」

 こんなときは、ルールをよく知らないアマチュアはペナルティーの有無も含め、どうすればいいのか迷うことでしょう。

ボールがカップを覗いた状態で球が止まることも。この場合、普通の速度で歩み寄ったのち10秒以内にカップに落ちれば直前のストロークでの打数に。それ以降に落ちた場合、カップインは認められるが、1罰打が課せられる 写真:AC

 一般アマチュアに限ったことではありません。実は米ツアーのシード選手でも、ボールが動いたときのルールは案外難しく、処置を間違うことがあります。

 今年2月の「フェニックスオープン」では、チャーリー・ホフマンが池に打ち込んだボールの救済を受け、1罰打でドロップ。しかし、救済エリアが斜面だったため、ドロップしたボールはペナルティーエリアの池に戻ってしまいます。ルールに従って、再度ドロップ(=ヒザの高さから落とすこと)。2度目も同じだったので、2度目のドロップの落下地点にプレース(=手で直接置くこと)。

 ここまではOK!

 ところが、ホフマンが目標方向を確認している間に、ボールは風なのか、重力なのか、自然に転がってまたもや池に。

 そこでホフマンは、罰なしにリプレース(=元あった場所に置きなおすこと)できるものと考えたらしく、競技委員に確認したのですが、答えは「ノー」。

 この場合は、もう一度1罰打でドロップしなければなりません。

 もう一つは、今年3月の「ザ・プレーヤーズ選手権」でのこと。キーガン・ブラッドリーはグリーン上に乗ったボールを拾い上げようとボールのすぐ後ろにボールマーカーを置いたところ、当然吹き付けた風によってボールが動いてしまいました。

 そこでブラッドリーは転がったボールを拾い上げ、ボールマーカーを置いた箇所にリプレースし、プレーを続けました。

 しかし、このような場合、正しくは自然によって動かされたボールが止まった箇所からプレーしなければなりません。ブラッドリーには2罰打が課せられました。

 このように経験豊かなツアープロでも迷ってしまう「動いたボール」の処置をエリア別、シチュエーション別におさらいしてみましょう。

グリーン上

 最初に、最もボール(やマーカー)が動くケースの多いグリーン上についてです。

(1)プレーヤーが誤って動かした場合

 例えば、ボールの近くで素振りやワッグルをして、誤ってパターをボールに当てる。あるいは、ボールマーカーをパターのソールで押さえつけたところ、ソールにマーカーが付着し、動かしてしまう。こうしたことは頻繁に起きています。

 前者のケースは、旧ルールでは1罰打でしたが、現在は後者のケースと同様、無罰。偶然に動かしたボールやボールマーカーはリプレースです。

 なお、誤ってボールを動かしても無罰でリプレースという処置は、プレーヤー本人だけでなく、キャディーや同伴プレーヤーについても同様です。

(2)自然に動かされた場合

 グリーン上で自然の力によって動かされたボールの処置は、状況によって異なり、少し複雑です。

 まず、すでに拾い上げ、リプレースされたボールは、再度、元の箇所にリプレースしなければなりません。

 一方、前述のブラッドリーのように、まだ拾い上げられていないボールは、動いた先の新しい箇所からプレーしなければなりません。

 つまり、「マーク→拾い上げ→リプレース」されたボールは、動いた原因に関係なくその箇所から次のプレー。
「前のストロークで止まったまま」に置かれていたボールは、自然の力により動いた先から次のプレーになります。

 いずれも誤った箇所からプレーした場合は、いわゆる「誤所からのプレー」ですから、基本的に2罰打が付加されます。

ティーイングエリア

 まずは簡単な、ティーイングエリアのケースから。

 ティーアップしたボールがストロークする前にティーから落ちたときは?

 もちろん、動いた原因に関係なく、無罰でティーにセットし直せます。なぜなら、プレーヤーがティーショットするまで、そのボールはインプレーではないからです。また、空振りしてボールがティーから落ちたという場合も、ボールがティーイングエリア内にあれば、無罰(もちろん空振りの1ストロークはカウントされます)で、ティーアップし直せます。ボールはインプレーですが、無罰で拾い上げることができるのです。

グリーン以外のエリア

 次に、グリーン以外のエリア(ジェネラルエリア、ペナルティーエリア、バンカー)に止まっていたボールが動いた場合。

 まず、プレーヤー自身(そのキャディーも同様)がボールを動かしたり動く原因になったときは、1罰打でボールはリプレースしなければなりません。

 ただし、ボールを捜したり確認する過程で誤って動かした場合は無罰。ボールはリプレースです。

 次に、プレーヤー本人ではない、外的影響(他の人間や動物など)が動かした場合は、もちろん誰にも罰はなく、ボールはリプレースしなければなりません。

 最後は、風や水、重力など自然の力によって動かされた場合ですが、無罰。ただし、ボールは動いた先、止まっているところからプレーしなければなりません。ですから、転がって止まったところがOBゾーンであれば、そのボールはOBとなり、その前のストローク地点に戻って打ち直ししなければなりません。

 少し複雑ですが、まずは“頻出単元”の「グリーン上」だけでも頭に叩き込んでおくと、自分が慌てずに済むだけでなく、同伴プレーヤーに処置についてアドバイスでき、感謝されるかもしれません。

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ドロップを行うときはヒザの高さから自由落下させる モデル:野村タケオ氏
ドロップを行うときはヒザの高さから自由落下させる モデル:野村タケオ氏
ボールがカップを覗いた状態で球が止まることも。この場合、普通の速度で歩み寄ったのち10秒以内にカップに落ちれば直前のストロークでの打数に。それ以降に落ちた場合、カップインは認められるが、1罰打が課せられる 写真:AC

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