2大ハイテクアイアン比較試打 「ステルス」と「パラダイム」はどっちがやさしく飛ばせる?

テーラーメイドの「ステルス アイアン」とキャロウェイの「パラダイム アイアン」は、ともに最新シリーズの名を冠し、やさしく飛ばせるフラッグシップモデルとして発売されています。ゴルフライターの鶴原弘高がメーカー各社の新製品を比較試打して性能を検証する定例企画「ギアくら―Gear Comparison club―」第6回目は、2大メーカーのやさしく飛ばせる最新アイアン2モデルを比較します。

飛ばしやすさと打ちやすさのために最新のハイテクを備える2モデル

「ステルス アイアン」は7番のロフト角が28度、「パラダイム アイアン」は29度。どちらもストロングロフト設定で、現代的なアベレージ向けアイアンの標準的なロフト設定となっています。

左からテーラーメイドの「ステルス アイアン」とキャロウェイの「パラダイム アイアン」
左からテーラーメイドの「ステルス アイアン」とキャロウェイの「パラダイム アイアン」

 クラブ長は「ステルス アイアン」が7番で37.25インチ、「パラダイム アイアン」が37インチ。両者に大きな差はなく、昔ながらのアイアンの長さ設定が保たれています。飛距離だけを求めるならシャフトは長いほうが有利ですが、長くすれば当然、芯には当てづらくなります。どちらのモデルも、スペック的には当てやすさと振りやすさを確保した飛ばせるアイアンとして作られていることが分かります。

 テクノロジー面に目を向けると、「ステルス アイアン」は「キャップバックデザイン」と「トウラップテクノロジー」を採用。バックフェースのトウ側の肉厚をそぎ落とすことで約10グラムの余剰重量を生み出し、ソール側に重量を配置することでヘッドを低重心化しています。

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 一方、「パラダイム アイアン」では、新たに「スピードフレーム構造」を採用。キャビティー部の3箇所にAI設計による穴を空けて、その余剰重量をタングステンとしてソールのトウ側とヒール側の2箇所に配置、これによってヘッドの低重心化を図っています。このように両モデルがヘッドの低重心化に取り組んでいるのは、ひとえに球を上がりやすくするためです。

 フェース部においては、「ステルス アイアン」は番手ごとに肉厚設計を変える「プログレッシブITC」を採用。「パラダイム アイアン」ではAIによって番手ごとに肉厚設計を最適化したフォージド455フェースカップの「AIフラッシュフェース」を採用しています。ドライバーで培ってきたフェースの設計手法が、今では当たり前のようにアイアンにも使われるようになっていて、これもまさに最新版のアイアン設計といえるものです。

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 どちらのモデルにもヘッド内部に振動吸収材が搭載されていて、それぞれ「エコーダンピングシステム」、「ウレタンマイクロスフィア」といった名称が使われています。これらは高初速が得られる弾きのいいフェースを採用しつつ、耳障りのいい打音と心地よいフィーリングを備えるためのテクノロジーです。

 ここまでずらずらと書き連ねてきましたが、要するにポイントは以下の3つ。1.ストロングロフトでも球を上げやすくするためのヘッドの低重心化、2.番手ごとに最適弾道が打てるようなフェース設計、3.打感を良くするための振動吸収材。こうやって2モデルを比べていくと、テーラーメイドとキャロウェイには設計手法の違いこそあれ、最新アイアンとしての設計の目的がほぼ同じであることが分かります。

ハイテクなのに、前作よりもデザインと顔がスッキリ

「ステルス アイアン」はマットな質感、「パラダイム アイアン」は鏡面仕上げ
「ステルス アイアン」はマットな質感、「パラダイム アイアン」は鏡面仕上げ

■デザインは?
「ステルス アイアン」は、「SIM2 MAX アイアン」の後継にあたるモデル。「SIM2 MAX アイアン」は、いかにもハイテクを駆使したことが分かるデコラティブなバックフェースのデザインでしたが、「ステルス アイアン」は同社のPシリーズを思わせるスマートなデザインになりました。

「パラダイム アイアン」は、「ローグST MAX アイアン」の後継モデル。バックフェースには同シリーズのキーカラーでもあるネイビーのバッジが大きく使われ、ひと目でモデルを認識できるようなデザインに仕上げられています。

 少しイジワルに言うと、「ステルス アイアン」のデザインは、すっきりしているように見えるけれど、全体的にカジュアル感があって、Pシリーズと比べるとヘッドの質感には安っぽさを感じてしまいます。「パラダイム アイアン」には高級感があるけれど、バッジの色合いやデザインが過剰なようにも思えます。性能には関係のない部分ですが、両モデルのデザインを皆さんはどう思われるでしょうか。

■構えてみると
「ステルス アイアン」は、やさしさを想起させる“テーラーメイド顔”のモデルです。過去のMシリーズやSIMシリーズからのアイアン形状の基本形は変わっておらず、しっかりとしたオフセットが付けられていて、トップブレードも厚い。フェースのどこでヒットしても当たり負けしなさそうな力強さを感じさせてくれます。

 従来からのイメージが大きく変わっているのは、「パラダイム アイアン」のほう。キャロウェイのやさしいアイアンというと、ずんぐりした面長のフェースと厚いトップブレード、強めのオフセットが特徴的でしたが、「パラダイム アイアン」はオフセットが少なめ。トップブレードの厚さも感じづらいように配慮されているようです。どことなく面長なキャロウェイらしさは残っていますが、これまでの“キャロウェイ顔”が好きじゃなかった人にも受け入れられそうなヘッド形状になっています。

低重心ヘッドのおかげで、ストロングロフトでも問題なく球が上がる

いずれも球の上がりやすさでは文句なし
いずれも球の上がりやすさでは文句なし

■「ステルス アイアン」試打クラブのスペック:7番(28度)、KBS MAX MT85 JP(フレックスR)
■「パラダイム アイアン」試打クラブのスペック:7番(29度)、N.S.PRO 950GH neo(フレックスS)

2モデルを打ち比べてみると

 テーラーメイドのアベレージ向けアイアンは、Mシリーズの時代から直進性に長けているのが魅力でした。「ステルス アイアン」もその性能を引き継いでいて、構えたときのヘッドの見た目の印象よりも弾道の直進性が高い。そのうえ7番で28度というロフトに対して打ち出し角が高く、グリーンに止められる高弾道のボールを打ちやすいのが魅力です。

 高弾道を打ちやすくて直進性が高いのは「パラダイム アイアン」も同じ。とくに「パラダイム アイアン」はオフセンターヒットに強く、フェースのどこでヒットしてもキャリーの飛距離が変わりづらいのが印象的。

 この2モデルはロフト差が1度しなかなく、クラブ長も0.25インチしか差がありません。それゆえ今回の試打クラブでは飛距離の差も数ヤードでした。ただし、スピン量に関しては「パラダイム アイアン」のほうが多めという結果になりました。よりアイアンらしい弾道を打ちやすいのは「パラダイム アイアン」といえそうです。

 打感については、どちらのモデルも振動吸収剤が効いていて、弾きがありながらも心地よいフィーリング。金属的な高音がしっかりと抑えられています。あえて打感の違いを挙げるならば、「ステルス アイアン」のほうがマイルドで、「パラダイム アイアン」は少し硬質に感じられます。

どちらのモデルも打ちやすさと飛距離、やさしさのバランスがいい

「ステルス アイアン」と「パラダイム アイアン」は、ガチンコで同じカテゴリーに属するモデルです。ロフト角や長さが似ていて、飛んで止まって、なおかつやさしい、という目的のためにハイテクが使われていて、実際にその性能を備えています。ともにクラブの振り抜き感は軽快で、大型ヘッドのアイアンにありがちな重ったるさや、右へのスッポ抜けも出づらいのも好印象です。どちらを購入しても後悔しないでしょうし、飛ばしながらもグリーンにボールを止められ、ゴルファーのスコア向上の助けになってくれるはずです。

 2モデルとも6番~PWまでの5本セット販売ですが、発売時期の影響もあってか、値頃感があってお買い得なのは「ステルス アイアン」のほう。いっぽうで「パラダイム アイアン」は素材や構造にも凝っていて、見た目にも高そうに見えるし、実際にお値段も高めになっています。

 あえてスペック的なところで細かい部分に注目すると、2モデルでは9番以下のロフトピッチに違いがあります。ともに単品の別売りでAWやSWが用意されていますが、「パラダイム アイアン」が5度ピッチで統一されているのに対して、「ステルス アイアン」は6度ピッチ(AWとSWだけ5度ピッチ)になっています。ここまで数字を気にする人は少ないかも知れませんが、ショートアイアンからウェッジの距離感を番手に任せたいなら、距離差が大きくなりすぎない「パラダイム アイアン」のほうが有利になりそうです。

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試打・文/鶴原弘高
つるはら・ひろたか/1974年生まれ。大阪出身。ゴルフ専門の編集者兼ライター。仕事のジャンルは、新製品の試打レポート、ゴルフコース紹介、トレンド情報発信など幅広く、なかでもゴルフクラブ関連の取材が多い。現在はゴルフ動画の出演者としても活躍中。ギア好きゴルファーの会員制コミュニティサイト『3up CLUB』(https://3up.club/)では、配信される動画のキャスター兼編集長を務めている。Instagram :tsuruhara_hirotaka

【画像】「ステルス アイアン」と「パラダイム アイアン」の飛距離、スピン量、最高到達点などの違いを見る

画像ギャラリー

ステルス アイアンの試打データ
パラダイム アイアンの試打データ
左からテーラーメイドの「ステルス アイアン」とキャロウェイの「パラダイム アイアン」
「ステルス アイアン」はマットな質感、「パラダイム アイアン」は鏡面仕上げ
いずれも球の上がりやすさでは文句なし

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