電磁誘導線は意外と簡単に切れてしまう
先日のラウンドで、スタート時間の15分前になったのでクラブハウス前からスタートホールに向かうため電磁誘導式カートの発進ボタンを押してカートを進めていたところ、途中で停まってしまいました。
発進ボタンをもう一度押してもカートがピクリとも動かなかったので、カートナビのスタッフ呼び出しボタンを押し、「カートが停まってしまいました」と伝えました。
するとスタッフがすぐにカートのカギを持って駆けつけ、発進ボタンを何度か押してもカートが前進しないのを確認した後、「自走式に切り替えて少し前に動かしますので、運転席を空けてもらえますか」といって運転席に乗り込み、カギを差し込んで自走式モードに切り替え、4~5メートル前進させてから電磁誘導式モードに戻しました。

そして発進ボタンを押すとカートが再び動き出しました。おそらくカートが一時停止した地点の電磁誘導線が切れたのか切れそうになっているのが原因で接触が悪くなり、カートが停止してしまったのでしょう。
電磁誘導式カートでこのようなトラブルが発生することはたまにあります。2011年の東日本大震災発生時は、東北地方だけでなく関東地方のゴルフ場も地中に埋設した電磁誘導線のあちこちが切れてしまい、復旧に時間がかかりました。
電磁誘導線は太い線だと思っている人が多いようですが、実はけっこう細い線です。細い針金よりもはるかに細く、タコ糸のようにクネクネと曲がる金属線です。これが地面の表面近くに埋設されています。
したがってアイアンでダフったりすると電磁誘導線は簡単に切れてしまいます。ですから電磁誘導式カートを使用しているゴルフ場は、ローカルルールで「電磁誘導式カート用の2本のレールの内側はプレー禁止区域であり、罰なしの救済を受けなければならない」と定めています。
しかし昨今はゴルフのスコアをスマートフォンのスコア管理アプリに入力する人が増えていますから、スコアカードの裏側に記されているローカルルールを見る機会がありません。そもそもスコアカードの裏側にローカルルールが記載されていることも知られていません。
そして電磁誘導式カート用の2本のレールの内側には芝生が生えており、ボールが浮いていればそのまま打てそうなのでローカルルールの存在を知らずに打ってしまう人がいます。
ボールを打った瞬間に電磁誘導線を切ってしまったとしても、何かを切ったという手ごたえはありません。でも、後続組がその地点に到達するとカートが停止してしまうので、「あれっ、どうしたんだろう?」とマスター室に緊急連絡することになります。
電磁誘導線が復旧するまでは自走式モードで対応
電磁誘導線の復旧は、業者に依頼すればすぐに対応してくれますが、さすがにその日のうちに対応するのは難しいです。電磁誘導線が切れてしまった箇所にはスタッフが待機して臨時対応することになります。
カートが停止するごとにカギを差し込んで自走式モードに切り替え、切れている範囲を自走式で動かし、再び電磁誘導線の上に乗せる作業を延々と繰り返します。
電磁誘導式カートの最大のメリットは安全性ですが、こういうトラブルが発生したときの対応がデメリットになります。

夏場は地域によってプレー中に雷に遭遇することがあります。雷が近づいてきたときは、ただちに避難しなければなりません。ゴルフ場はコースの随所に避雷小屋を設置しており、雷を安全にやり過ごせる設備が用意されていますが、できれば茶店やクラブハウスなど、より安全性の高いところに逃げたいのがゴルファー心理です。
しかしながら電磁誘導式カートだとカギを差し込まないと自走式に切り替えることができません。カートナビで雷警報を鳴らすと、その途端にコースのあちこちから「迎えに来てほしい」という依頼がマスター室に殺到して大忙しになります。
そういったデメリットがあるにせよ、自走式よりも電磁誘導式のほうが大きなメリットがあると感じているので、多くのゴルフ場が電磁誘導式を選択しています。なのでゴルファーは電磁誘導式カートの仕組みを理解し、電磁誘導線を切断するような行為は避けるよう配慮する必要があります。