クラブ選手権を秋に開催するのは今や当たり前ではない
メンバーシップコースは毎年1回、クラブチャンピオンを決めるクラブ選手権を開催します。日本のゴルフ場の8割以上はメンバーシップコースですから、クラブハウスの目立つ場所に飾られているクラブチャンピオンボードを見かけたことがあるのではないでしょうか。
多くのゴルフ場は秋にクラブ選手権を開催すると聞いたことがありましたので、クラブ選手権の開催状況をゴルフ場関係者に聞いてみました。
「ウチのゴルフ場は今年も9月にクラブ選手権を開催しましたけど、他のゴルフ場は必ずしも9月と決まっているわけではないようですよ。最近は7~8月に開催するゴルフ場も増えています。それには次のような事情があります」

「クラブ選手権は最初にストロークプレーの予選を行ない、上位16人が翌週の決勝トーナメントに進出します。決勝トーナメントはマッチプレーで行なわれます」
「決勝トーナメント1回戦は予選1位の選手と16位の選手、2位の選手と15位の選手が対戦するように組み合わせます。1回戦の勝者8人が2回戦に勝ち上がり、準決勝進出をかけて戦います。準決勝は27ホールマッチ、決勝は36ホールマッチで勝者を決めるのが一般的です」
「これを毎週日曜日に4~5週かけて行ないますから長丁場なんですね。しかも決勝トーナメントはマッチプレーですから、一般のお客様をパスさせてもらいます。これがけっこう大変なのです」
「マッチプレーの開催日はクラブハウスの入り口に『本日はマッチプレーを開催していますので、選手が来た場合はパスをお願いします』という看板を立てますが、ほとんどのお客様はまさか自分たちのプレー中に選手が来るなんて思っていません」
「そして選手が来ると、1組だけなら5分程度の待ち時間ですけど、4組続けて来ると20分くらい待たなきゃいけません。一般のお客様にとってクラブ選手権なんて関係ありませんから、『いつまで待たせるんだ』とクレームをいただくこともあります」
「選手たちの前には競技委員が先導しており、前の組に追いついたら『すみません、今、クラブ選手権をやっていまして、マッチプレーなのでパスさせてもらっていいですか』と声をかけ、プレーを中断してもらいます」
「クラブ選手権のことを知っているお客様は、選手たちに『頑張れよ!』と声援を送ってくださる方もいます」
「また、クラブ選手権のこと知らないお客様も、決勝トーナメント進出者の打つ球は一般ゴルファーとは違いますから、『おー、すげえな!』と興味深く見物してくださる方もいます」
「ただ、待ち時間が長くなりますと『いつまで待たせるんだ』ということになりますから、ウチのゴルフ場では選手たちの後ろに同行する競技委員が『お待たせしました』みたいな感じで缶ジュースか何かを渡しています」
来場者数が少なくなる7~8月に開催するコースが増加
メンバーシップのゴルフ場といえども、今の時代はビジターの集客が売り上げアップの肝です。客単価の高い9月の日曜日に来場してくれる一般のお客様を長時間待たせるのは得策ではありません。
そこで客単価が低く、来場者数も少なくなる夏の間にクラブ選手権を開催してしまおうというゴルフ場が増えているようです。
そもそもクラブ選手権はすべてのメンバーが出場する競技ではなく、毎週日曜日に4~5週連続でプレーできる人しか出場しません。いくら腕前に自信があっても、スケジュールの都合がつかない人は出場できません。
また、ゴルフ場のメンバーになる人のすべてが競技志向というわけでもありません。親睦目的の人はそれなりの腕前を持っていても競技には参加しません。
クラブ選手権に出場する数十人のメンバーのために、出場しない数百人のメンバーや毎週日曜日に来場する1日50組200人のお客様に不便をかけるわけにはいかないというのがゴルフ場の意向のようです。