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プロゴルファーがいまだにピンを抜いてパターを打つのはなぜ? 挿したままだと生じる不都合とは

2023.11.02 野上雅子
グリーン パッティング

グリーン上で旗竿(ピン)を立てたままパットをして、もしボールが当たっても無罰となったのは2019年のルール改定。それから5年弱が経過しましたが、トーナメント中継など見ていると、いまだにプロがピンを抜いてパットをしている姿をよく目にします。なぜなのでしょうか。

ピンが傾いてボールの“入り口”が狭まっていることは珍しくない

 2019年のルール改定により、グリーン上で旗竿(ピン)を立てたままパットができるようになりました。でも、トーナメント中継など見ていると、特にショートパットにおいては、ほとんどのプロはピンを抜いてパットをしています。それはなぜなのでしょうか。

プロが抜いているということは、やっぱり抜いたほうが入りやすい? 写真:GettyImages
プロが抜いているということは、やっぱり抜いたほうが入りやすい? 写真:GettyImages

 その前に、ルールの改定について振り返りたいと思います。

 以前のルールでは、グリーン上でパットをしたボールがピンに当たった場合、そのボールがカップインしてもしなくても2打罰が課せられていました。そのためパット時はピンを抜くのが普通。抜かざるを得なかったといえるでしょう。それが改定により、2019年1月1日からはボールがピンに当たっても罰がなくなりました。ピンを抜いても、ピンを立てたままパットをしても、プレーヤーの自由になったのです。

 この改定は、他のいくつかの変更点と同じように「プレーファスト」を促進し、スロープレーを解消する目的を持っていました。日本ゴルフ協会が発行し、初心者や一般ゴルファー向けに規則を分かりやすく解説したリーフレットによると、「このことは、長いパットを残したプレーヤーが誰かが旗竿に付き添ってくれるのを待つ時間を短縮できるでしょう」とあります。ピンに付き添うこともそうですが、抜いたピンをグリーンの外に置く、ホールアウトしたらグリーン外に置いたピンを戻す、といった動作を省くことも時間短縮につながります。

 では、プロがピンを抜いてパットをするのはなぜなのでしょうか。

 かつてトーナメントプロとして活動した経験をもつ松澤淳二さんが教えてくれました。松澤さんは現在、東京23区内に存在する数少ないゴルフ場の一つである赤羽ゴルフ倶楽部の支配人を務めています。

「私自身が1ピン以内のパットでは“ピンを抜く派”です。その理由は、ピンが斜めになっていることが少なくないからです。例えば、左から右へ風が吹いているときはピンもなびいて右へ傾きます。そうするとカップの右サイドが狭くなり、右側へ行ったボールは弾かれやすい。本来カップの幅は108ミリ、直径約12~13ミリのピンが中央に立つことでカップの幅は二分され、左右にできる“余白”は約48ミリずつです。それに対してボールの直径は約43ミリ(※ボールの直径は1.68インチ=42.67ミリ以上と規定されています)。ピンが垂直に差さっていればいいのですが、右へ傾くほど右側の余白は狭くなる。わずか5ミリでボールの直径より狭くなり、ピン当たってカップインしないケースが出てくるのです」

 しかも風は真横に吹くとは限りません。左奥から右手前に向かって吹いたりしたら、ボールの“入り口”がちょうど狭くなってしまうことも考えられます。

ピンの抜き挿しによる摩耗も斜めに傾く原因に

「ピンが斜めになって余白が狭くなるのは、風のほかにも原因があります。それは“摩耗”です。カップの底にはピンを差す穴がありますが、穴の縁が摩耗して広がっているとピンは削れた側に傾きます。また、ピンの方もこすれて細くなることによって斜めになりやすい。両者が重なるほど傾きは大きくなってしまいます。要因が摩耗にしても風にしても、いいパットをしたのにピンが斜めになっていたためボールが弾かれてカップインしなかった。そういう経験をしたらプロは二度と繰り返さないようにするものですし、同伴者のプレーを見たり学んだりして慎重にもなります。特に影響を受けやすいショートパットでほとんどの選手がピンを抜くのは、そのためだと思います」

 プロのプレーはそれほど緻密で繊細なのです。どれだけ1打を大事にしているかも分かります。とはいえ、ピンを立てたままパットをすればもっと早く回れるのでは? と思う人もいるかもしれません。

 ツアーでもスロープレーは厳禁です。ただ、そもそもプロはボールを打つ回数が少なく無駄な動作もありません。ピンの抜き差し等をサポートする帯同キャディーもいます。トーナメントでスロープレーが問題になることもありますが、パット時にピンを抜くことが原因ではないでしょう。

 アマチュアはプロのやることを真似したくなるものですが、ボールが弾かれないようピンを抜いてもミリ単位で方向を打ち分けられるものではありませんし、ピンを立てたままだからこそ強く打ってしまったパットが入ることもあります。ファーストパットなどの長いパットはピンを立てて寄せ、セカンドパットなどの短いパットは状況をみて決めるのが良さそうです。ビギナーは前の人にならい、ピンが立ててあっても抜いてあっても、そのまま打つといいでしょう。

【写真】必ず覚えて実践して! グリーン上にできた「ピッチマーク」の直し方

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