フォームを気にしすぎて「ボールを打つ」という基本を忘れてしまう
ゴルファーのなかには、数カ月で100切りをする人もいれば、何十年も上達せずスコアが伸び悩む人がいます。
現役のシニアツアープロでゴルフスクールも経営している梶川武志プロは、上達しないゴルファーのほとんどは「ゴルフを学んでいく過程で一番大切なことを忘れてしまっている」と指摘します。

「私が若い頃の経験ですが、ツアープロになるために師匠のもとで毎日何百球ものボールを打っていたのですが、なかなか上達しませんでした。自分はプロゴルファーには向いていないのではないか、とさえ悩んでいました」
「あるときフォームやスイングは気にしないで、『ボールと地面の間にクラブのリーディングエッジを差し込む』ということに集中して練習をするようにしたらどうだろうか、と考えました。なぜ、そのように考えたのかは覚えていませんが、『ボールを打つという基本に戻ろう』と意識しました」
「意識して練習を始めたら、すぐに自分の打ちたいボールが打てるようになり、合わせて成績も向上していきました」
リーディングエッジとは、フェースの一番下の、いわゆる“刃”の部分を指します。このような経験から梶川プロは「コンセント理論」という独自のスイング理論を提唱しているそうです。
「電気製品の電源プラグをコンセントに差し込む際、ほとんどの人はプラグをコンセントに差し込むことだけを意識しているはずです。わざわざ、右腕をこの角度で動かして、このぐらいのスピードでコンセントを差しにいくなんて考えないです」
「ゴルフも同じことで、ボールと地面の間は狭いですが、ここにリーディングエッジを正確に差し込めば、必ずボールは飛んでいきます。こんなシンプルなことが、トップの位置やテークバックの引き方などに意識がいってしまうと、どんどん複雑になってうまくいかなくなります。コンセントに差し込むのと同じように、無意識にできるようになればゴルフは格段に上達します。これはアイアンの場合ですが、ドライバーなどのウッド系のクラブでも同じ感覚で打てるようになります」
昨今では、SNS上で多くのレッスン動画を気軽に見られるようになったため、ボールを打つ基本を忘れてしまったり、情報過多になってスイングを崩したりする人も少なくありません。
梶川プロは練習場での練習方法についても以下のように話します。
「練習場はマットがあるので、多少ダフってもマットの上でソールが滑って、ボールと地面の間にリーディングエッジが入りやすくなりますが、インパクト時の音に注意すればダフったかどうかわかります。きちんと当たったときはナイスショットを打てたという感覚が絶対にあるはずです。『ボールを打つ』という意識を強く持ちながら『気持ちいい』という感覚も持てる打ち方を練習すれば上達は早くなるでしょう」
なかなか上達しないと思っているゴルファーは、一度フォームの注意点は忘れて「ゴルフボールを打つ」という原点に立ち返ってみるといいのかもしれません。