“世界一PINGを売るゴルフ場”が日本にあった！ 「コースでクラブを買うのは不安」という時代は終了!?

　ゴルフ場のクラブハウスには必ずといっていいほどショップが入っています。ボールやティーなどの消耗品だけでなく、ウエアやシューズなどゴルフに必要なものがそろっていますが、ゴルフ場内のショップで買い物をしたことがある人はどのくらいいるでしょうか。

　大半のゴルファーは、消耗品やたまたま忘れてしまった帽子などを買うときに利用するという程度ではないかと思います。また、量販店よりも価格が高かったり、品ぞろえが少なかったり、クラブを買おうにも専門知識のあるスタッフがいない、というイメージを持っている人も多いでしょう。実は欧米などでは、ゴルフ場のプロショップで用具・用品を購入する比率が日本に比べるとかなり高いのです。

　でも、実は最近、日本での常識を覆すゴルフ場のインショップが増えています。

　その一例が太平洋クラブ江南コースのインショップです。ここのショップはピンゴルフの専門店でフィッターも常駐しているため、クラブフィッティングもできるショップとして人気になっています。以前はよくあるゴルフ場のショップと同じようなスタイルで、さまざまなブランドの商品を取り扱っていましたが、2020年の4月から一つのメーカーに特化するという、いわば“攻め”のスタイルに舵を切りました。

　当初は「ピンしかないの？」「他社メーカーは売ってないの？」という利用客からの戸惑いの声があったと振り返るのは、ショップ担当を務める平澤篤美さん。

「正直、お客様の反応はよくなかったです。ただ、それまでのショップのスタイルだと、私たちも何を推して売ればいいのか、あやふやだったことも事実で、ピンさんに特化することで、振り切れた部分はあります。私自身もフィッターの資格を取りましたし、この商品をどうしたらお客様に興味を持ってもらえるかを考え、行動しやすくなったと思います」

　そんな地道な努力のおかげか、現在では江南コースはゴルフ場のインショップとしてピンの売り上げが“世界ナンバーワン”にまでなったというから驚きです。さらに、22年には全国3000を超える店舗の中でわずか8店舗しか受賞できなかった「Fitting of the Year」をゴルフ場として初めて受賞しています。

　そんな“隠れた名店”だけに、今年のABEMAツアー「太平洋クラブチャレンジトーナメント」を同コースで開催した際には面白い光景が。出場していたあるプロが、プレー後にショップの試打クラブを借りて、練習場で試していたのです。ツアーバスが帯同していない下部ツアーとはいえ、プロがそうやって試すわけですから、江南コースのショップのクオリティーの高さがうかがい知れます。

　太平洋クラブとしては「セレクト・ザ・クラブ」という厳選した商品を販売する独自のスタイルを御殿場コースなどで展開していますが、そんな経験から、総花的ではなく、コースごとに何かに特化する販売戦略を立てやすかったのかもしれません。現に、江南コースで結果を出せたことで、佐野ヒルクレストでキャロウェイゴルフ、市原コースでテーラーメイド、有馬コースでアディダスゴルフと続々専門店がオープンしています。

　もちろん太平洋クラブだけでなく、PGMの「グラン」ブランドのコースなど、量販店に負けない品揃えがあるショップが最近は目立つようになってきています。ゴルフ用品は量販店で買うものという常識が、ゴルフ場に行ったときに買う日常へと変化しつつあるのかもしれません。