「自分もいつかチャレンジしたい」先輩・石川遼の米ツアー挑戦に奮い立つ後輩・中里光之介の現在地【砂場Talk 番外編】

現在の若手プロゴルファーで、大なり小なり石川遼の影響を受けていない人などほとんどいないだろう。それが学校の先輩後輩の間柄ともなればなおさらだ。パナソニックオープン2日目で67を出しリーダーボードを駆け上がった中里光之介はその最たる例だろう。

「石川先輩のおかげで人生計画が壊された」

 パナソニックオープン2日目、リーダーボードを駆け上がった選手たちの中で、私が大きな興味を抱いたのは、中里光之介という29歳の選手だった。

杉並学院で石川遼の1年後輩に当たる中里光之介 JGTO images

 オールマイティなスポーツ少年だった中里がゴルフに専念したのは10歳のとき。中学1年の途中でゴルフ部がある杉並学院に編入し、彼が中学3年のとき、同校の1つ年上の先輩だった石川遼が高校1年生にしてセンセーショナルなプロ初優勝を挙げた。それが「大きな刺激となり、自らもプロを目指した」と中里のプロフィールに記されていた。

 石川の存在は、「中里選手にとって、プロを目指す人生の始まりだったのですね?」と問いかけると、中里は「石川先輩のおかげで、僕の人生計画は、すっかり壊されました」と振り返った。

「本当は高校、大学に行って、それからプロ転向しようと考えていた。でも、石川先輩が高1で優勝したのを見たら、僕もすぐにプロの世界に行かなきゃって思ったし、あの先輩にできてオレにできないはずがないとも思って、僕も高1でQT(予選会)を受けたんです。QTを受けるとジュニアの試合出場に制限がかかるけど、それは覚悟の上でした」

 ティーンエイジャーにして世界の舞台での優勝を目指していた石川が、「急がば回るな」というキャッチフレーズを掲げていたあのころ、その石川の背中を追いかけ始めた後輩の中里が、「自分も一刻も早く!」と先を急いだという話には「なるほどね」と頷かされた。

 そして、最短の道を駆け抜けようとした中里は、高3でプロ転向に踏み切った。しかし、勇んで挑んだQTが失敗に終わると、彼は単身、アジアへ渡った。

「日本で戦う場所がなくなったので、行くしかないと思い、アジアには1人で行きました。最初の試合はミャンマー。途中で飛行機の乗り継ぎ方がわからず、おろおろして、現地で乗ったタクシーの床には銃弾の跡みたいな穴がいっぱいあって焦りました。次のインドでは、いきなり食中毒。でも、日本では経験できないことを経験できたので、それを日本でプラスにしていきたいと思っています」

持ち球をドローからフェードに変えドライバーが安定

中里に「人生計画がすっかり壊された」と名指しされている石川遼 写真:JGTO images

 その通り、中里は積み重ねた経験と得られた自信を徐々にプラスに変えつつあるのではないだろうか。アジアから日本に戻って以降、2016年はチャレンジツアーで2勝を挙げ、17年はさらに1勝。レギュラーツアーのシード権はチャンスはありながらも、なかなかつかめずにいるが、結婚して私生活面が充実。ゴルフの調子も、「7月ぐらいから、いい感じだった」という今年は、9月にPGMチャレンジを制し、AbemaTVツアー(旧チャレンジツアー)で通算4勝目を達成した。

「昔は流れがつかめず苦しんだけど、今は林に入ってもバーディーが獲れるし、パーも獲れる。ボギーを叩いても、すぐに切り替えて次につなげていける。メンタルも技術も上がったのかな」

 その実感を抱きながら、中里は今週のパナソニックオープンを迎え、初日は1アンダー71、2日目は5アンダー67の好ラウンドを披露。彼の自信は日に日に膨らんでいる。

「ジュニアのころからのドローのイメージが強すぎて、結局、うまくドローが打てないことに苦しんできた。でも、直ドラを練習していたら、自然にスライス球が出て、いいイメージが得られた。これを試合でも使えるんじゃないかなって思い、ドライバーだけは持ち球をドローからフェードに変えたら、安定するようになったんです」

「パターも、それまでは大きなヘッドに太いグリップだったけど、あえてそれとは真逆の細いグリップに小ぶりなピン型のヘッドに変えたら、ヘッドを動かしていく感覚が得られ、今はボールを思うところに出せています」

 以前は、安楽拓也コーチから言われたことを100%取り入れていた。だが、今は「50だけを飲み込むことにしています」。

 残りの50%は「自分」「自力」で対処していく。なぜなら、自立して自力で問題や障壁を乗り越えることこそが自信につながるということを、中里はアジアンツアー転戦を通して知っているからだ。

「アジアでは、外国人ばかりの中で日本人は僕一人ということもあって、楽しかった」

「いつかは米ツアーに行ってみたい」中里光之介の新たな人生計画

 折りしも、中里の人生計画を狂わせた「張本人」の石川は、この秋、米ツアーの下部ツアーに再挑戦することを発表したばかり。

 そんな石川先輩の姿を目にして、後輩の中里はどう感じているのかが気になった。

「僕も行きたいなと思います。チャレンジしたくない人はいないだろうし、自分もチャレンジしたい。いつかは行ってみたいです」

 10年経っても15年経っても、後輩や若手の選手たちにさまざまな形で影響を与え続けている石川の存在感には、あらためて脱帽させられる。だが、そんな石川の背中を追いかけ続けてきた中里のパワーやエネルギー、意志の強さも、それはそれで見上げたものだ。

 まずは、今週のパナソニックオープンの残る2日間に納得のいくゴルフをして、さらに自信を高めてほしい。

 願わくば、初優勝、そしてシード獲得へ。そして、いつかその先に「石川先輩のおかげで、またしても僕の人生計画がすっかり壊されました」と笑顔で言えるような人生の大きなチャレンジに打って出てほしいなと思う。

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