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7月初旬にアマ競技で死者 女子ツアーや学生・ジュニア競技が打ち出した酷暑時代の“ニューノーマル”とは?
年々酷くなる夏の暑さ。炎天下でのラウンドは十分に気をつけないと命を危険にさらす行為になりかねません。実際、今年は関東のアマ競技で不幸にも死亡事故が発生したり、女子ツアーでは河本結が体調不良を訴え、棄権するといった事態が起きています。そんな中、プロやアマチュアの競技で少しずつですが対策が実行に移されてきています。
6時台からのOUT・INスタートを夏場のスタンダードにすべきと有村智恵
国内女子ツアー「楽天スーパーレディース」の最終日に行われたスタート時間の繰り上げが、大きな評価を集めています。
大会には出場していませんでしたが、女子ツアー選手のリーダー格である有村智恵は自身のツイッターで「3日目トップが6:45スタートの2wayで最終組が8:25スタート。 もう夏場は毎週これがスタンダードになって良いと思う。 あとは12月もだいぶ暖かくて試合が出来る地域もあるから、7月半ば~8月半ばまで1カ月のオフを挟んで12月までシーズンにするのもアリな気がします」と、英断を絶賛していました。

「楽天スーパーレディース」は、他のJLPGAトーナメントと違っていたことも幸いしました。現状では、一部を除き、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)はツアー主管ではありますが、各大会の主催者はそれぞれ違う企業である場合がほとんど。そのため、スタート時間繰り上げなどはJLPGAと相談した上で主催者が決めています。
ただ、今年が3年目の今大会はJLPGA主催で、楽天グループは特別協賛。2025年以降にJLPGAが描いているトーナメントのモデルケースでもありました。テレビ中継も地上波がなかったことも幸い(?)しましたが、これもJLPGAに決定権があったのが今大会なのです。「テレビが生放送だったりすると、それ(スタート時間の繰り上げ)はムリ。テレビの縛りがなかったから」と説明してくれた関係者もいるように、すでに放送枠が決まっていたりすれば、放送局の都合が優先されるのはこれまでの常。スタート時間の繰り上げは難しくなってしまうためです。
そうした裏事情があったにせよ、「楽天スーパーレディース」のスタート時間繰り上げは、選手、キャディー、大会関係者すべてに向けた有効な熱中症対策であったことは確かです。実はこの大会の2日目にも33.9度という猛暑の中、河本結が6ホール終了後に棄権。真夏のゴルフの危うさを再認識させる事態にもなりました。そうした中で、大会側はスタート時間の繰り上げという大きな決断を下したわけです。
あるトーナメント関係者も「あの件があってから、注意喚起のインフォメーションも回ってきていて、いろいろと対応をしています」と、語っています。「あの件」とは、7月10日に名門・東京GC(埼玉県)で起きてしまった一件です。当サイトでも7月14日に報じた通り、猛暑の中「2023年(一社)関東ゴルフ連盟7月月例競技(男子の部)」に出場していたXさんが最終ホールをプレー中に倒れ、病院に搬送されたものの帰らぬ人となってしまいました。
関東学連は短パン着用や手引きカートの使用を許可
この件は大学生のゴルフ競技にも大きな影響を与えました。不幸な事故が起きてから4日後の14日、関東学生ゴルフ連盟のウェブサイトに「熱中症予防に関して」というタイトルで、関東学生ゴルフ連盟の会員と関係者にあてた緊急告知が掲載されました。
「年々気温の上昇が指摘され、4半世紀前とは夏場のコンディションが大きく変わってきていることが指摘されております。先日、アマチュア競技において死亡者が出るという事態も発生しております。学生は元気だから大丈夫ということはありません。今一度、各自熱中症予防を熟慮の上、準備を怠らないようにお願い申し上げますとともに、無理をしない、また持病などのリスクがある方々は積極的に勇気をもって欠席・プレー中断を申し出ることも、当人・味方選手・ギャラリーおよび同伴競技者、そして部活責任者の方々にもお願い申し上げます」で始まる告知文は、このあと詳細な熱中症対策が添えられていました。
さらに7月31日付で「関東学生・関東女子学生 選手へ」という緊急告知もアップされています。男子(8月8~11日、千葉県・鷹之台CC)では7項目のうちの第2項目に「『短パン』の着用を認めます」(但し、鷹之台カンツリー倶楽部のドレスコードを遵守し、 ショートソックスは、くるぶしが隠れるタイプのみ着用可能)とあり、(3)アームカバーの着用も可。さらに4項目目には「手引きカートの使用を認めます」と続きました。また、(6)指定練習日を含めて、全日ハーフ休憩を挟むことも決まりました。
一方、8月8日から10日までの3日間競技の女子は、メイプルポイントGC(山梨県)での開催で(1)機能性アンダーウエアの着用を強く推奨されました(但し、メイプルポイントゴルフクラブのドレスコードを遵守すること)。ショートソックスは男子同様くるぶしが隠れるタイプのみ着用可能という注釈がつけられています。また(2)ラウンド中の日傘使用を強く推奨し(3)「全ての場所において(ホール間、ホール内を含む)カートへの乗車を認めます」と、乗用カートの使用が認められました。最後に(4)「指定練習日を含めて、全日ハーフ休憩を挟みます」という項目で結ばれていました。
かつて「炎天下、担ぎで2ラウンドなんてこともあった」(関東学連OB)時代から、大きく変わることとなった学生ゴルフ。現在の気候を鑑みれば、その決断も当然でしょう。
日本ジュニアはコロナで中断していた保護者のコース立ち入りを解禁
また一部には「ジュニアゴルファーを守らなければ」という悲痛な声も上がっていました。というのも、前出・Xさんが亡くなった月例を主催していた関東ゴルフ連盟の運営方法には、当日参加していたゴルファーも含め、疑問を呈する声も少なからずあるからです。また、この月例が行われた東京GCで、日本ジュニアゴルフ選手権の開催(霞が関CCとの併催)も決まっています。
そこで現在の準備状況を、日本ジュニアの主催者であるJGA(日本ゴルフ協会)に聞いてみました。すると、こんな答えが返ってきました。
「お水の提供を増やしたり、どこかでインターバルを取れるような形にするかを今検討している状況です」。そう語るのは、日本ジュニアを主催するJGA競技部の統括部長・安中新祐氏。そのうえで「われわれが今発表できているのは『親御さんを含めて(コースの)中には入れますよ』ということ」と付け加えました。熱中症の予防も含め、子どものラウンドを親がサポートできる体制が久々に整うというわけです。
「(子供が)心配な親御さんもいるでしょうし、ここ数年はコロナで(コースの)中に入るのはご遠慮いただいていましたが、今年は両コース(東京GC、霞ヶ関CC)のご理解も頂いて、親御さんがコースの中に入れるような形にします」(安中氏)
両コースとも歴史ある林間コース。当日はプロのトーナメントのようなローピングはされませんが、「林によってセパレートされたコースなので(選手のサポート役が)管理道路だとか、林の中を進んでいただくのであれば、競技としては保てるのでお願いしています。熱中症の心配のほかにも、自分たちの子どもが全国大会に出るのを見たいというお客さんも当然いるでしょうから」と安中氏は付け加えました。
日本ジュニアにおける熱中症予防のための具体的な対策は、今後発表されることになりそう。そこでまず、大会のサポートにも加わる地元、埼玉県川越市・池袋病院のお医者様からのジュニアに向けての熱中症対策を添えることで、この稿を締めくくりたいと思います。
◆熱中症対策◆
・可能な限り帽子をかぶったり日傘を使用し、直射日光を浴びないようにしましょう。
・待機の時などはできるだけ日陰にいるようにしましょう。風通しの良いところであればなお良いです。
・休憩はこまめに取るようにしてください。
・水分摂取をこまめに行ってください。のどが渇かなくても水分を取りましょう。(のどが渇いてからでは調子が悪くなってしまう可能性があります)。午前中だけでもペットボトル1本くらい飲むようにしましょう。また、汗をよくかく方であれば2本飲むくらいでもかまいません。
・塩分接種も行いましょう。
・保冷剤や氷、冷たいタオル等を使って体を冷やすようにしましょう。
・頭痛や気持ち悪い・気分が悪いや、ぼーっとするなど、何かしら以上を認めたとき、おかしいかなと思ったときには、すみやかに周りの大人に報告してください。
(医療法人社団誠弘会 池袋病院 林信一医師)
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
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