「神経質に1メートルを極めようとすると手が動かなくなる」
9月14~17日に北海道の札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コースで「ANAオープンゴルフトーナメント」が開催されました。
通算18アンダーで優勝したのは、谷原秀人選手です。今シーズンは、「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」に続く2勝目で、賞金ランキング10位に浮上ました。通算19勝目を挙げた谷原選手ですが、本大会は初制覇。
北海道の試合では過去、2006年に「サン・クロレラクラシック」(小樽カントリー倶楽部)、16年に「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ」(ザ・ノースカントリーゴルフクラブ)と「日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯」(北海道クラシックゴルフクラブ)を制覇しています。「ANAオープン」は14年にプレーオフで敗れた経験もあり、どうしても勝ちたかったようで、優勝インタビューで「めちゃめちゃうれしい!」とコメントしていたのが印象的でした。
終盤まで谷原選手と優勝争いを演じて2位タイに入ったのが、通算17アンダーの前田光史朗選手でした。今年の賞金レースを盛り上げている中島啓太選手や蝉川泰果選手、平田憲聖選手らと同学年で日大ゴルフ部出身。昨年プロ転向したばかりのルーキーでシード権はありませんが、今回の成績で賞金ランキングは36位にジャンプアップ。初シードが見えるポジションにつけています。

さて、優勝した谷原選手といえば、勝負強いパッティングがストロングポイントの一つです。今大会でも最終日の17番ホールでグリーンエッジからの6メートルを沈めてバーディーを奪い、勝利を手繰り寄せました。ちなみに、今大会の平均パットは1.5849で1位。今シーズンのスタッツでも、1.6875でA・クウェイル選手に次ぐ2位に入っています。
これだけのパッティングスキルを習得し、維持し続けるためには、相当な時間を割いているはず。そう思っていましたが、優勝後に谷原選手は驚きのコメントを残していました。
「ショートパットの練習はほとんどしないです。神経質に1メートルを一生懸命極めようとすると、手が動かなくなっちゃうんです。ですから、パッティングは5~10メートルのロングパットでタッチを合わせる練習しかしていません」
長い距離の上りと下りを転がす練習に時間を費やす
ショートパットの練習はせず、ロングパットの練習だけ……。もちろん、これは高いパッティングスキルを持っている谷原選手ならではの考え方で、誰にでも当てはまる方法ではありません。ですが、この発言は多くのゴルファーに参考になる部分があります。
例えば、スタート前の練習グリーン。カップを狙う短いパットに時間を割いていませんか? それよりも、長い距離の上りと下りを転がす練習に時間を費やしたほうが効果的です。
ロングパットの練習は、ティーやパターカバーなど、カップ以外のものをターゲットにするのがオススメ。距離が長くても、カップを狙うと「入れたい」という意識が働いて神経質になってしまうからです。長い距離のタッチが合えば、3パットを減らすことができるはず。スコアメイクしやすくなりますよ。
谷原 秀人(たにはら・ひでと)
1978年生まれ、広島県出身。2003年に初優勝を含む年間2勝を挙げ、賞金ランキング10位と躍進。16年は年間3勝で、自身2度目の賞金ランキング2位に。21年は「三井住友VISA太平洋マスターズ」で5年ぶりの勝利を挙げた他、最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」でも勝利。翌年は「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で連覇を達成した。今季は、「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP byサトウ食品」と「ANAオープンゴルフトーナメント」で勝利を挙げている。ツアー通算19勝。国際スポーツ振興協会所属。
【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。