5試合残して過去最高勝利数となった東日本勢
東日本VS西日本はさまざまな分野でテーマになることだが、国内女子ツアーにあてはめると今年は東日本出身選手が好調だ。先週の「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」を東京都出身の菅沼菜々が制して東日本勢の今年の優勝数は「19」となった。これは過去最高の数字である。
東日本と西日本の境界はどこかというのは諸説あるが、ここでは中部地方以東を東日本、近畿地方以西を西日本とするのでご了解いただきたい。

今年は埼玉県出身の岩井ツインズが2人で5勝(姉の明愛3勝、妹の千怜2勝)を挙げて東日本勢を引っ張っている。2勝をマークしているのはほかに菅沼、穴井詩(愛知県)、神谷そら(岐阜県)の3人。菊地絵理香、小祝さくら(ともに北海道)、蛭田みな美(福島県)、青木瀬令奈(群馬県)、小滝水音(茨城県)、吉田優利(千葉県)、川岸史果、原英莉花(ともに神奈川県)が1勝で計19勝だ。
東日本勢は2年にまたがった2020-21年シーズンで25勝をマークしているが、単年で考えるとこれまで5度(1983、87、89、90、2022年)あった18勝が最多だった。今年は5試合を残してそれを塗り替えたのだ。2020-21年シーズンも年ごとに分けると20年が7勝、21年が18勝だから、今年の19勝は文句なしに単年で最多である。
ちなみに今年の西日本勢は山下美夢有(大阪府)と櫻井心那(長崎県)がツアー最多の4勝を挙げているが他の選手の勝ち星が少なく、計12勝にとどまっている。
女子ツアーは西日本勢が強いというイメージを持っている方が多いのではないかと思う。実際、2000年以降の年間女王は海外選手を除けば不動裕理(熊本県、2000~05年)、大山志保(宮崎県、2006年)、上田桃子(熊本県、2007年)、古閑美保(熊本県、2008年)、横峯さくら(鹿児島県、2009年)、森田理香子(京都府、2013年)、鈴木愛(徳島県、2017、19年)と西日本出身者ばかりだった。
2020-21年の稲見萌寧(東京都)は実に1999年の村口史子(東京都)以来の東日本出身女王だったのだ。ただ、昨年は再び西日本の山下が頂点を取り返している。
海外進出した選手の多くが西日本出身者
もともと東日本勢は国内通算69勝、賞金女王11回の樋口久子(埼玉県)らを擁して優勢だった。だが、不動が初めて賞金女王の座に就いた2000年あたりから潮目が変わった。熊本県や沖縄県など西日本には早くからジュニア育成に力を入れていたところが多く、そこから強い選手が出始めたことがひとつの要因である。
西日本勢は2005年には最多の23勝をマーク。この年、東日本勢はわずか3勝だった(ほかに海外選手7勝)。
2009年にも西日本20勝、東日本2勝(ほかに海外選手12勝)という圧倒的大差をつけるなど、しばらく西日本の優位が続いた。

韓国勢を中心にした海外勢が上位を独占するようになった2010年代には東日本勢が勝ち星で西日本勢を上回る年もあったが、東西日本合わせても海外勢の優勝数に遠く及ばない時代だったから流れが変わったとまではいえない。
変化が起きてきたのは2020-21年シーズンからだろう。東京都出身の稲見が9勝を挙げて女王となり、小祝さくらや原英莉花、吉田優利らが勝ち星を重ねて25勝対23勝で西日本を上回った。
昨年も女王の座は西日本の山下に譲ったが、優勝数では18勝対16勝で東日本が上。千葉県出身・西郷真央の5勝が大きかった。
そして今年、東日本勢は年間最多勝を塗り替えただけでなく、公式競技(メジャー)でも「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」を吉田優利、「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯」を神谷そら、「日本女子オープンゴルフ選手権」を原英莉花とここまでの3試合をすべて東日本勢が制しているのだ。
2008年にメジャーが年間4試合制になって以降、東日本勢が4試合すべてに勝ったことはない。それどころか3勝したことも初めてだ。ちなみに昨年は4試合すべて西日本勢が勝っている。
東日本勢快進撃の要因として考えられることのひとつに、ここ2年で渋野日向子(岡山県)、古江彩佳(兵庫県)、勝みなみ(鹿児島県)、西村優菜(大阪府)という西日本のエース級が相次いでQTを経て米女子ツアーに拠点を移したことが挙げられる。
ただ、それだけではなく東日本でもジュニア育成がうまく機能してきたといった理由もあるだろう。
シーズン終盤に差し掛かって来た女子ツアー。激しさを増す年間女王争いが注目されるが、東日本VS西日本という視点で観戦するのも面白いのではないだろうか。