西日本勢優勢だった女子ツアーに異変!? 2023年は東日本勢が過去最高の19勝で圧倒している理由とは? | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

西日本勢優勢だった女子ツアーに異変!? 2023年は東日本勢が過去最高の19勝で圧倒している理由とは?

女子ツアーは黎明期こそ樋口久子(埼玉県出身)の独壇場だったが、その後は西日本勢や海外勢の優位が長く続いてきた。しかし近年、東日本勢が優勝回数を増やし、立場が逆転しつつあるという。

5試合残して過去最高勝利数となった東日本勢

 東日本VS西日本はさまざまな分野でテーマになることだが、国内女子ツアーにあてはめると今年は東日本出身選手が好調だ。先週の「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」を東京都出身の菅沼菜々が制して東日本勢の今年の優勝数は「19」となった。これは過去最高の数字である。

 東日本と西日本の境界はどこかというのは諸説あるが、ここでは中部地方以東を東日本、近畿地方以西を西日本とするのでご了解いただきたい。

岩井明愛(右)・千怜(左)姉妹(埼玉県出身)だけで既に5勝をマークしている 写真:Getty Images
岩井明愛(右)・千怜(左)姉妹(埼玉県出身)だけで既に5勝をマークしている 写真:Getty Images

 今年は埼玉県出身の岩井ツインズが2人で5勝(姉の明愛3勝、妹の千怜2勝)を挙げて東日本勢を引っ張っている。2勝をマークしているのはほかに菅沼、穴井詩(愛知県)、神谷そら(岐阜県)の3人。菊地絵理香、小祝さくら(ともに北海道)、蛭田みな美(福島県)、青木瀬令奈(群馬県)、小滝水音(茨城県)、吉田優利(千葉県)、川岸史果、原英莉花(ともに神奈川県)が1勝で計19勝だ。

 東日本勢は2年にまたがった2020-21年シーズンで25勝をマークしているが、単年で考えるとこれまで5度(1983、87、89、90、2022年)あった18勝が最多だった。今年は5試合を残してそれを塗り替えたのだ。2020-21年シーズンも年ごとに分けると20年が7勝、21年が18勝だから、今年の19勝は文句なしに単年で最多である。

 ちなみに今年の西日本勢は山下美夢有(大阪府)と櫻井心那(長崎県)がツアー最多の4勝を挙げているが他の選手の勝ち星が少なく、計12勝にとどまっている。

 女子ツアーは西日本勢が強いというイメージを持っている方が多いのではないかと思う。実際、2000年以降の年間女王は海外選手を除けば不動裕理(熊本県、2000~05年)、大山志保(宮崎県、2006年)、上田桃子(熊本県、2007年)、古閑美保(熊本県、2008年)、横峯さくら(鹿児島県、2009年)、森田理香子(京都府、2013年)、鈴木愛(徳島県、2017、19年)と西日本出身者ばかりだった。

 2020-21年の稲見萌寧(東京都)は実に1999年の村口史子(東京都)以来の東日本出身女王だったのだ。ただ、昨年は再び西日本の山下が頂点を取り返している。

海外進出した選手の多くが西日本出身者

 もともと東日本勢は国内通算69勝、賞金女王11回の樋口久子(埼玉県)らを擁して優勢だった。だが、不動が初めて賞金女王の座に就いた2000年あたりから潮目が変わった。熊本県や沖縄県など西日本には早くからジュニア育成に力を入れていたところが多く、そこから強い選手が出始めたことがひとつの要因である。

 西日本勢は2005年には最多の23勝をマーク。この年、東日本勢はわずか3勝だった(ほかに海外選手7勝)。

 2009年にも西日本20勝、東日本2勝(ほかに海外選手12勝)という圧倒的大差をつけるなど、しばらく西日本の優位が続いた。

米女子ツアーを主戦場に移した渋野日向子(岡山県出身)も西日本 写真:Getty Images
米女子ツアーを主戦場に移した渋野日向子(岡山県出身)も西日本 写真:Getty Images

 韓国勢を中心にした海外勢が上位を独占するようになった2010年代には東日本勢が勝ち星で西日本勢を上回る年もあったが、東西日本合わせても海外勢の優勝数に遠く及ばない時代だったから流れが変わったとまではいえない。

 変化が起きてきたのは2020-21年シーズンからだろう。東京都出身の稲見が9勝を挙げて女王となり、小祝さくらや原英莉花、吉田優利らが勝ち星を重ねて25勝対23勝で西日本を上回った。
 
 昨年も女王の座は西日本の山下に譲ったが、優勝数では18勝対16勝で東日本が上。千葉県出身・西郷真央の5勝が大きかった。

 そして今年、東日本勢は年間最多勝を塗り替えただけでなく、公式競技(メジャー)でも「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」を吉田優利、「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯」を神谷そら、「日本女子オープンゴルフ選手権」を原英莉花とここまでの3試合をすべて東日本勢が制しているのだ。

 2008年にメジャーが年間4試合制になって以降、東日本勢が4試合すべてに勝ったことはない。それどころか3勝したことも初めてだ。ちなみに昨年は4試合すべて西日本勢が勝っている。

 東日本勢快進撃の要因として考えられることのひとつに、ここ2年で渋野日向子(岡山県)、古江彩佳(兵庫県)、勝みなみ(鹿児島県)、西村優菜(大阪府)という西日本のエース級が相次いでQTを経て米女子ツアーに拠点を移したことが挙げられる。

 ただ、それだけではなく東日本でもジュニア育成がうまく機能してきたといった理由もあるだろう。

 シーズン終盤に差し掛かって来た女子ツアー。激しさを増す年間女王争いが注目されるが、東日本VS西日本という視点で観戦するのも面白いのではないだろうか。

【写真】トップの山下美夢有は大阪府出身! 女子ツアー最新賞金ランキング(10月22日現在)

画像ギャラリー

1位 山下美夢有(1億7122万2690円) 大阪府出身 写真:Getty Images
2位 岩井明愛(1億5666万8511円) 埼玉県出身 写真:Getty Images
3位 申ジエ(1億4188万2277円) 韓国出身 写真:Getty Images
4位 小祝さくら(1億1575万9795円) 北海道出身 写真:Getty Images
5位 岩井千怜(1億736万5円) 埼玉県出身 写真:Getty Images
6位 櫻井心那(1億464万9708円) 長崎県出身 写真:Getty Images
7位 菅沼菜々(9633万2969円) 東京都出身 写真:Getty Images
8位 吉田優利(8611万2453円) 千葉県出身 写真:Getty Images
9位 穴井詩(7383万75円) 愛知県出身 写真:Getty Images
10位 神谷そら(7351万7250円) 岐阜県出身 写真:Getty Images
11位 菊地絵理香(7228万2922円) 北海道出身 写真:Getty Images
12位 鈴木愛(6551万1000円) 徳島県出身 写真:Getty Images
13位 川岸史果(6504万4666円) 神奈川県出身 写真:Getty Images
14位 桑木志帆(5993万4305円) 岡山県出身 写真:Getty Images
15位 青木瀬令奈(5879万8750円) 群馬県出身 写真:Getty Images
16位 ささきしょうこ(5269万6083円) 兵庫県出身 写真:Getty Images
17位 上田桃子(4896万3270円) 熊本県出身 写真:Getty Images
18位 佐久間朱莉(4872万7198円) 埼玉県出身 写真:Getty Images
19位 福田真未(4832万3131円) 福岡県出身 写真:Getty Images
20位 ペ・ソンウ(4596万8594円) 韓国出身 写真:Getty Images
岩井明愛(右)・千怜(左)姉妹(埼玉県出身)だけで既に5勝をマークしている 写真:Getty Images
米女子ツアーを主戦場に移した渋野日向子(岡山県出身)も西日本 写真:Getty Images

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