イ・ボミ「少ないのは寂しい」 韓国選手はなぜ日本ツアーから去るのか? ボミと現地記者が感じる意識の変化 | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

イ・ボミ「少ないのは寂しい」 韓国選手はなぜ日本ツアーから去るのか? ボミと現地記者が感じる意識の変化

先週の「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」を最後に13年間の日本ツアー生活に幕を閉じたイ・ボミ。近年は日本ツアーから去る韓国人選手が増える一方で、新たに来日する韓国選手は多くない。なぜなのか。現地事情を探った。

年間ポイントランク50位以内の韓国選手は現在5人

 先週の国内女子ツアー「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」を最後に日本ツアーから引退したイ・ボミ。2011年から13年という長い歳月を戦ってきたわけだが、年齢は35歳。ゴルフは他の競技に比べて長く続けられるスポーツでもあるため、まだやめるには早いという声もあるようだが、15、16年に賞金女王として全盛期を過ごして30代半ばでの現役引退は適齢期でもあると思う。

2016年、2年連続賞金女王を祝うケーキを前に笑顔のイ・ボミ 写真:GettyImages
2016年、2年連続賞金女王を祝うケーキを前に笑顔のイ・ボミ 写真:GettyImages

 20代前半の選手が牽引する現在の日本女子ツアーだが、10年前は韓国勢が賞金ランキング上位を席巻していた。10年にアン・ソンジュが韓国人選手として初めて日本ツアーの賞金女王になると、アンは11年、14年、18年と4度も賞金女王のタイトルを獲得。その他にもツアー通算23勝の李知姫、同25勝で12年に賞金女王となった全美貞がいる。他にもイ・ボミと同い年で21年に引退したキム・ハヌルも人気を博した選手だ。

 年を経るごとに日本ツアーでプレーする韓国の選手たちは減りつつあり、一方で新たに増えることがない。

 現在、レギュラーツアーでプレーする韓国勢は元世界1位の申ジエのほか、前述した全美貞、イ・ミニョン、ペ・ソンウ、黄アルム、イ・ナリなど数えるくらいしかいない。来季のシードが与えられるメルセデス・ランキング50位以内に限っては、申ジエ、ペ・ソンウ、イ・ミニョン、リ・ハナ、全美貞の5人のみだ。

日本に来なくても韓国ツアーの環境が充実している

 なぜ急激に日本ツアーを目指す韓国選手が減っているのか。イ・ボミにこのことについてぶつけると、こんな答えが返ってきた。

「やはりJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)の規定が変わって、正会員でないとQTを受けられないわけで、それだと日本に行きたくてもいけないと思います。韓国で実力のある選手にとっては、国内の大事な試合を諦めてプロテストを受けることは、ダメージが大きいですからね。そう考えると寂しいですよね。日本ツアーは私が大好きな舞台でしたから、韓国の選手が日本に来て活躍して、盛り上げてほしいという気持ちはありますから」

 イ・ボミが言う通り、現在は日本のプロテストを受けて正会員にならないと、日本ツアー出場をかけたQT(予選会)に参戦できない。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は19年からQTへの参戦資格を正会員に定めており、プロテスト合格が条件となる。それまでは正会員以外でもQTを受験することができたが、その道が閉ざされたことで日本を選択する韓国人選手がいなくなったということだ。

 イ・ボミの引退試合を取材しに来ていた韓国紙「イーデイリー」のチュ・ヨンロ記者が国内ツアーの現状について教えてくれた。

「今は日本ツアー参戦を選ぶ韓国人選手はいません。一つはJLPGAの規定が変わってからは、QT参戦ができなくなったこと。韓国のプロゴルファー、それもシード選手が試合を欠場してまで日本のプロテストを受けて正会員資格を得ることは、現実的ではありませんよね。それにもう一つは、韓国ツアーの環境が充実してきたことも挙げられます。韓国女子ツアーは年々、試合数と賞金額が増えていて、あえて海外ツアーに出なくても活躍すれば十分に稼げる環境にあるんです」

数年後には日本人選手だけのツアーに?

2016年ヨネックスレディスでのイ・ボミと清水重憲キャディー。まさに最強コンビだった 写真:Getty Images
2016年ヨネックスレディスでのイ・ボミと清水重憲キャディー。まさに最強コンビだった 写真:Getty Images

 23年韓国女子ツアーは32試合の開催で、賞金総額は約31億円。昨年は30試合の開催で、今年は2試合増。これは来年も増えると予想されている。それに21年と22年韓国ツアー賞金女王のパク・ミンジは、年間獲得賞金がそれぞれ約1億5000万円と日本ツアーの水準に迫る勢いだ。

 チュ・ヨンロ記者は「一昔前までは米ツアーを目指す選手も多かったですが、今は国内で十分と考える選手が少なくない。日本ツアーは規定が大きな要因でもありますが、国内ツアーの充実も選手たちが出ない理由です」と話す。

 こうなるともう日本ツアーは、数年後には「日本人選手だけ」という状況になっているのかもしれない。果たしてそれがツアーの競技レベルに好影響をもたらすのかは予測が難しいが、今までイ・ボミや今もプレーする申ジエなど、人気と実力を備えた韓国人選手がツアー全体の雰囲気やレベルを引き上げる要因になったのは、紛れもない事実だ。

 こうした流れがいいのか悪いのか意見は分かれるところだろうが、いずれにしても新たな韓国スター候補の選手が、イ・ボミのように日本選手と共にツアーを牽引する姿は、もうこの先見ることはないのかもしれない。

【写真】当時まだ20代…8年前に撮影された金田久美子&イ・ボミの“激レア”オフショット&感動の引退セレモニーの様子がアップされた実際の投稿

【写真】「100点満点」 キム・ハヌルが“潜入”したサイン会にイ・ボミが驚く実際の様子&涙のお別れセレモニーの様子

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イ・ボミのサイン会に潜入したキム・ハヌル
キム・ハヌルに気付き驚くイ・ボミ
キム・ハヌルに気付き驚くイ・ボミ
サプライズ登場に抱き合うイ・ボミ(左)とキム・ハヌル(右)
サプライズ登場に抱き合うイ・ボミ(左)とキム・ハヌル(右)
ツアー選手みんなでピンクのTシャツを着てイ・ボミを送り出した
セレモニーで号泣するキャディーの清水重憲さんとイ・ボミ
2016年LPGAアウォードで年間最優秀選手賞を獲得したイ・ボミ。賞金女王はもちろん平均ストローク1位など主要各賞を総なめした 写真:Getty Images
「NOBUTA GROUP マスターズGC レディース」を最後に日本ツアーから引退したイ・ボミ 写真:Getty Images
2016年、2年連続賞金女王を祝うケーキを前に笑顔のイ・ボミ 写真:GettyImages
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