“穴”のないゴルフが身上の桑木志帆
11月2~5日の4日間、茨城県の太平洋クラブ美野里コースで日本開催の米女子ツアー「TOTOジャパンクラシック」が開催されました。
通算22アンダーで優勝したのは稲見萌寧選手です。最終日は1打差の3位でスタートし、4バーディー、1ボギーの「69」でプレー。通算13勝目を達成しました。今シーズンの開幕戦では2位スタートと順調に滑り出した稲見選手でしたが、その後は本来の力を発揮できない時期が続き、シーズン前半に4度のスイング改造。パッティングでも、クロスハンドから順手に握り方を変更し、今シーズン初勝利を挙げました。「今年は優勝できないんじゃないかと思った」と、インタビューで涙を流していたのが印象的でした。
今大会の優勝により、稲見選手は米女子ツアーの来シーズンの出場資格を獲得。優勝直後の段階では、同ツアーに参戦するかどうかは「フィフティー・フィフティー」だそうです。

稲見選手に1打差、通算21アンダーの2位タイでフィニッシュしたのは桑木志帆選手でした。初日から3日目までノーボギーでプレーし、首位タイで迎えた最終日。4バーディー、3ボギーとスコアを一つ伸ばしましたが、惜しくも稲見選手に1打及びませんでした。最終日最終組でプレーした稲見選手とのフェードヒッター同士の対決は、非常に見応えがありました。
桑木選手は、ここまでトップ10フィニッシュが10回と好調をキープ。スタッツを見てみると、トータルドライビング6位、ボールストライキング11位、リカバリー率14位、平均パット数(パーオンホール)15位、フェアウェイキープ率16位など、“穴のないゴルフ”が特徴的です。特に平均パット数は昨年の52位から15位に躍進しています。ツアー未勝利ですが、メルセデス・ランキング9位、年間獲得賞金10位と、上位につける活躍をみせています。
クローグリップと順手、それぞれの特徴は?
さて、そんな桑木選手のパターの握り方が興味深いんです。短いパットの時はクローグリップなのですが、長いパットの時は順手。距離によって握り方を変えています。
クローグリップは左手を普通に握り、右手は甲を正面に向けて添えるように持つ握り方。右手の掌屈、背屈を使いにくくなり、右手首を固定できます。ヘッドを速く動かすことはできませんが、フェース面がブレにくくなる特徴があります。一方、順手は右手首の自由度が高くなり、ヘッドスピードを上げやすくなる握り方です。桑木選手は距離によってそれぞれの特徴を生かせる握り方に変更しているわけです。
「ロングパットの距離感が合わない」、「ショートパットの方向性が狂いやすい」という人は、桑木選手のスタイルを真似てみると、パット数を減らせるかもしれません。
桑木 志帆(くわき・しほ)
2003年生まれ、岡山県出身。21年6月に実施されたプロテストに合格してプロ入り。同年の新人戦「加賀電子カップ」で優勝を挙げている。今シーズンは「ブリヂストンレディス」(3位タイ)、「北海道meijiカップ」(2位)、「CAT Ladies」(3位)、「TOTOジャパンクラシック」(2位タイ)などの活躍。「資生堂レディスオープン」ではプレーオフに進出するなど、初優勝に最も近い選手のひとり。岡山御津CC所属。
石井 忍(いしい・しのぶ)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。