- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- ツアー
- 「ゴルフをやるために人間はつくられたわけじゃない」 ツアー初の“ママになってからプロ”神谷和奏のワークライフバランス
毎年、熾烈な“受験戦争”に注目が集まるJLPGAのプロテストですが、今年の合格者の中でもひときわ話題となったのが神谷和奏(かみや・わかな)選手です。それというのも、彼女がツアー制度施行後、出産を経験してからプロテストに合格した初の女性だったからです。子持ちでプロを目指すことの大変さは察するに余りあるものですが、神谷選手の実感は少し違うようです。
ツアー出場権を争うQTにも娘を連れていくつもり
初めてのQTに子供を連れて参戦する。そんなことを決めたのは、今年のプロテストに合格したばかりの神谷和奏(わかな)選手です。
11月初めに行われた日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)最終プロテストに19位タイで合格し、ルーキープロとなった神谷選手には、もう一つの顔があります。9月に2歳になった長女、咲凛(えみり)ちゃんのママという大事な仕事も抱えているのです。
お子さんを持ってプロテストに合格した例は、1988年のツアー制施行後は初めてです。それ以前は、1985年に34歳で合格した山岡明美選手がいます。その時には、娘のめぐみさんは9歳でした。
山岡選手はツアー4勝を挙げた後、残念ながらその後亡くなっていますが、娘のめぐみさんも2001年にプロテストに合格しています。
年々厳しさを増しているプロテストに、子育てをしながら挑んだ神谷選手の姿は、合格の翌週には山梨県の小淵沢CCにありました。「IKIGAI CUP」という「ゴルフの素晴らしさを、世代を超えて推進していくリーダー養成を支援するため」という理念を掲げた試合に出るためです。プロテスト合格を目指すプロたちへの“奨学金”として賞金が用意されていたのですが、神谷選手を含めた3人の選手が、プロテスト合格した後に出場していました。
「こういう試合に出ると、気持ちの持ち方が変わってきたな、と思います。受かった受かってないという違いです。周りの目も変わるし、もっと頑張らないと、という気持ちも強くなりました」と話した神谷選手。来年、ツアーに出場するためには、QTのファーストステージ(11月21~24日、3会場)を経てファイナルステージ(11月28日~12月1日、静岡県・葛城GC宇刈C)に進み、上位に入る必要があります。そのQTにも、娘さんを連れていくつもりでいるそうです。
実はテストの時にも咲凛ちゃんを連れてきていました。コースには家族も入れないため、近くに家を借り、夫の幸宏さんと神谷選手のお母さんが一緒に待っていたのです。プレーが終わったら家族と一緒に夕食をとる。他の多くのライバルたちとは違うスタイルでテストに臨み、合格を勝ち取ったことになります。
JLPGAは23年からいくつかの試合で託児所を設置し始めています。「JLPGA Welcome babies&kids project supported by 住友商事」というもので、横峯さくら選手や若林舞衣子選手など、お子さんを持つプロたちが、タイミングが合えば活用しています。来年はもっと多くの試合で開設が予定されているのですが、神谷選手はQTでもファーストステージから使えるという連絡をもらったそうです。
「家族みんなで試合を回れたらいいなと思っています。(娘を)置いていくと(打数を)打っちゃうんです」と話す神谷選手。次のシーズンの出場権が懸かるQTも、咲凛ちゃんに会える時間をエネルギーに変えて挑もうとしています。
「妊娠してからのほうが人生の満足度は高くなっています」
プロテスト合格を目指す中で妊娠が分かった時には“ゴルフよりも出産”を優先して考えたと言います。
「人生の中で大事にしたいのは人としての生活なんです。ゴルフはその中で楽しみにしたいと思っています。何のためにゴルフをしているのか分からなくなる時期もあったので、妊娠してからのほうが人生の満足度は高くなっています。ゴルフをやるために人間はつくられたわけじゃない」と言い切ります。
プロになってしばらくしてからワークライフバランスを考える選手が多い中、神谷選手は子育てとゴルフ(仕事)のバランスを考えながらプロとしてのスタートを切った、ということになります。
「元気でじっとしていられない常に走っている運動大好きな子です」という咲凛ちゃんを育てながら、自分のゴルフをつくり上げていくのは簡単なことではないでしょう。けれども、若い頃からゴルフとだけ向き合い続けて、悩むプロはたくさんいます。悩み苦しんだ末に、ゴルフは人生の一部に過ぎないと気がついて、別な光を見い出すという話はたくさん聞きます。
子供は大人の思うようには動いてくれません。時間的にも精神的にも、子育てをしていればゴルフと向き合う時間が減るのは仕方がないことです。ただ、そのことがプラスに働くこともたくさんあるということではないでしょうか。そういったたくましさを、神谷選手はすでに身につけつつあるのかもしれません。
前出の託児所は、ツアーが選手たちのバックアップをし、同時にゴルフの素晴らしさをPRするチャンスでもあります。そのことは神谷選手もよく分かっています。「使っていきたいです。それも自分の役目の一つだと思いますし」。ルーキーながら、女性の人生とともにあるツアーの側面をも見せてくれることでしょう。
取材・文/小川淳子
ゴルフジャーナリスト。1988年東京スポーツ入社。10年間ゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材する。1999年4月よりフリーランスとしてゴルフ雑誌やネットメディアなどに幅広く寄稿。
神谷 和奏(かみや・わかな)
2001年10月1日生まれ、千葉県出身。3歳からゴルフを始める。アマチュア時代の主な戦績は全国高等学校ゴルフ選手権5位タイ、日本女子アマチュアゴルフ選手権21位タイなど。21年に長女を出産。23年、最終プロテスト5度目の挑戦にして合格し、晴れてJLPGAのツアープロに。
最新の記事
pick up
-
「国産カーボンフェース」がついに発売! ヤマハの新作「インプレス・ドライブスター」ドライバー、FW、UT、アイアンを試打検証<PR>
-
「高反発エリア拡大でさらなる“飛び”を実現」 ミズノの新アイアン「JPX925」<PR>
-
アマチュアが打っても激スピン! フォーティーン「FRZ」を使ってギア好きゴルファー3人がスピン勝負してみた<PR>
-
キヤノンがゴルフを変える! プロゴルファー森田理香子が実践する“撮影機能付きレーザー距離計”「PowerShot GOLF」を徹底解剖<PR>
-
【連載コラム】フィッティングとレッスンの融合で上達! フォーティーンの新サービスを人気ゴルフYouTuberが体験<PR>
ranking