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蝉川泰果の勝利を決定づけた「1000点」のアプローチ “風向き”を意識すると寄せの引き出しが増える
多くの男女ツアープロのコーチを務め、ゴルフ中継で解説も務めている石井忍が、国内外ツアーで気になった選手やシーンをピックアップ。独自の視点で分析する。今回注目したのは、国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で優勝した蝉川泰果です。
オーバーしそうな勢いで出た球はバックスピンでピタリ
国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で優勝したのは蝉川泰果選手でした。今シーズンは4月の「関西オープン」でプロ初勝利を挙げ、その後は何度も優勝争いに加わるものの、勝利には届かない試合が続きました。しかし、最終戦で2勝目を挙げ、賞金ランキング2位でシーズンを終えました。
蝉川選手といえば、持ち前のドライバー飛距離を生かしたプレーが魅力の一つ。スタッツを見ると、ドライビングディスタンスは306.57ヤードで6位、イーグル率は4.087で1位を獲得しています。攻撃的なゴルフが特徴ですが、ゴルフの総合力の指標となるメルセデス・ベンツ トータルポイントランキングでも1位。ショートゲームのうまさも持ち合わせたプレーヤーということが分かります。
最終戦の最終日最終ホールでは、そんな蝉川選手のグリーン周りのテクニックが光ったシーンがありました。“超受けグリーン”の名物18番パー3(227ヤード)。ピン位置は毎年恒例の右手前でした。
前日、ティーショットをピンの奥につけてダボにしていた蝉川選手は、最終日は「手前からいく」と心に決めて挑んだそうです。そのティーショットはイメージよりも手前に止まり、ピンまで約25ヤードの左上がりのアプローチが残ります。ピンが手前に切ってあるため、グリーンエッジからカップの間のスペースはほとんどありません。優勝争いのプレッシャーの中、技術的に非常に難しいアプローチを打たなければいけなくなりました。
この時点で蝉川選手は通算15アンダーの単独トップ。1打差の金谷拓実選手は先にホールアウトし、同じく1打差の同組・中島啓太選手はグリーン左手前からの2打目を残している状況。蝉川選手はパーをセーブすれば優勝、ボギーならプレーオフになりそうな展開です。
このシチュエーションで蝉川選手が放った2打目は、周囲が「ピンをオーバーするのでは?」と思うような勢いで飛び出しましたが、強烈なバックスピンがかかってカップ横にピタリ。難度の高い18番でパーをセーブして優勝をつかみ取りました。
アゲンストは落下角が鈍角になりボールを止めやすい
「100点満点中、1000点です」とプレー後に本人が語ったほどの会心の1打が生まれた背景には、“風向き”がありました。この日は南からの風が吹いており、18番はアゲンスト。蝉川選手は、「もしフォローだったら手前から転がしていた」というように、アゲンストが吹いていたため、突っ込んで止めるアプローチを選択したそうです。
ショットの場面で風向きを意識する人は多いと思いますが、アプローチやパッティングでも風向きを考えるとゴルフの幅が広がります。今回の蝉川選手のように上げて止めたい状況では、アゲンストは落下角が鈍角になるため、ボールを止めやすくなるのです。
ちなみに、スピンを効かせたい時は過度にカットで打つのはNG。フェースを開き、インサイドからクラブを入れて手首をリリースしながら打つと、ボールがフェースに乗り、スピンがかかりやすくなります。
蝉川 泰果(せみかわ・たいが)
2001年生まれ、兵庫県出身。東北福祉大4年生だった22年は、下部ツアー「ジャパンクリエイトチャレンジin福岡雷山」でアマ優勝し、9月のレギュラーツアー「パナソニックオープン」でツアー史上6人目のアマ優勝。また、世界アマチュアランキング1位に立った10月は「日本オープン」でもアマ優勝を成し遂げた。23年は「関西オープン」でプロ初勝利。最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で複数回優勝を達成して賞金ランキング2位に入った。
【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。
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