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「“でも”戻りたい」PGAツアーに未練のラームvs「決して歓迎しない」世界1位シェフラー マスターズで一騎打ち!?
“ゴルフの祭典”マスターズが2週間後に迫ってきた。今年注目されているのは、ディフェンディングチャンピオンとして大会を迎える初めてのリブゴルフ選手となるジョン・ラーム。ラームの前年に王者となった世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが連覇を止められるか、PGAツアーの威信を懸けた戦いと目されている。
リブゴルフ選手がホストを務める初めてのディナー
今季最初のメジャー大会、マスターズトーナメント(4月11~14日)が、日に日に近づきつつある。
美しいオーガスタナショナル(ジョージア州)に大勢のゴルフファンが詰めかける賑やかなマスターズウイークが2週間後に迫った今、米メディアが注目しているのは、次の2点だ。
1つは、昨年大会の覇者ジョン・ラームによるマスターズ連覇が達成されるかどうか。
もう1つは、2022年大会の覇者で世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーによるマスターズ2勝目が成るかどうか。
しかし、少しばかり見方を変えると、この2点は、こんなふうに言い換えられる。
昨年末にリブゴルフへ移籍したラームの連覇を、PGAツアーに忠誠を誓い続けているシェフラーが阻止することができるかどうか。
さらに言い換えれば、今年のマスターズは昨年以上に「 PGAツアー選手vsリブゴルフ選手」の様相を呈すると想像されている。
昨年大会では、2位タイにブルックス・ケプカとフィル・ミケルソン、4位タイにパトリック・リードが入り、トップ5にリブゴルフ選手が3名も食い込んで、「リブゴルフ強し」をアピールする形になった。
優勝したラームは、当時はPGAツアー選手だったが、昨年12月にリブゴルフへ移籍したため、今年はリブゴルフ選手がディフェンディングチャンピオンとして臨む初めてのマスターズということになる。
もちろん、ラームは大会連覇を狙っている。
「マスターズタイトルをディフェンドしたい。連覇できれば、それはまさにドリーム・カム・トゥルーだ。マスターズを連覇した選手は決して多くはない。数少ない“連覇者リスト”に自分の名前を載せたい」
前年覇者がホストとなって歴代チャンピオンたちをもてなすチャンピオンズディナーは、マスターズの恒例行事の1つだが、今年はリブゴルフ選手がホストを務める初めてのチャンピオンズディナーになるため、「どんな雰囲気になるのだろうか?」「会話は弾むのだろうか?」などと取り沙汰されている。
ラームは先日、自身が練りに練って考えたディナーのメニューを発表。スペイン出身のラームらしさを満載し、バスク料理ならではのワインやチーズ、ハム、ソーセージなどを「わが家のレシピ」で調理し、提供したいと笑顔で語った。
「ディナーに出席するみなさんをわが家の夕食にお招きするような感じで、チャンピオンディナーを開きたい」
昨年大会を振り返れば、ラームは初日の1番でいきなり4パットしてダブルボギーを叩き、波乱のスタートを切ったが、その先で1イーグル、7バーディーを奪う快進撃を見せ、リーダーボードの最上段まで駆け上がった。最終日は林の中から奇跡のような寄せワンでパーを拾って、見事に勝利。
その戦いぶりは、スペインの英雄、セベ・バレステロスを彷彿させる執拗なネバーギブアップのゴルフだった。
スペイン人選手としては、バレステロス、ホセ・マリア・オラサバル、セルヒオ・ガルシアに続く史上4人目のマスターズチャンピオンとなったラームは、あの日、バトラーズ・キャビンと呼ばれるオーガスタナショナルのクラブハウスの一室で、前年覇者のシェフラーからグリーンジャケットを羽織らせてもらい、「言葉がない」と涙を浮かべ、感無量の様子だった。
プレーヤーズ選手権を観戦して「ドキドキした」
あれから1年が経過しようとしている今、ラームは世界のメディアの質問に答えるテレコンファレンスに臨み、ディフェンディングチャンピオンとして今年のマスターズを迎えようとしている現在の心境をこんなふうに語った。
「オーガスタへ行って、素晴らしい1週間を過ごすことが楽しみでたまらない。グレートなプレーヤーたちとグレートなサンデー・バックナインの戦いを繰り広げたい。その戦いを大観衆に楽しんでもらいたい。それが、ゴルフのあるべき姿だ」
ラームは3月半ばに開催されたPGAツアーのプレーヤーズ選手権を振り返って、こんなことも語った。
「プレーヤーズ選手権をテレビで観戦した。見ているだけで楽しかった。ドキドキした。とてもエキサイティングで面白かった」
米メディアは、ラームのこうした発言の中に「彼の後悔の念がありありと見てとれる」と口を揃える。
リブゴルフに移籍後、すでに4試合に出場し、トップ10入りを続けているラームだが、リブゴルフでの興奮や楽しさを口にする代わりに、PGAツアーの大会をテレビ観戦して「ドキドキした」「エキサイティング」「面白かった」と語ったことは、リブゴルフの大会ではアスリートとしての高揚感や達成感をあまり感じていないのではないか、と。
プレーヤーズ選手権と同週に開催されたリブゴルフのホンコン戦は「ギャラリーがきわめて少なく、ティーイングエリアから見渡せる範囲に観衆の姿は本当にまばらだった」とは、現地に赴いた米国人記者の言。
大勢のファンが見守る中で、スペインの闘牛士のように熱い戦いを披露してきたラームにとって、ギャラリーがパラパラのリブゴルフでの戦いは、さびしく空虚に感じられてモチベーションが上がらないのではないか。
そう感じ取った米メディアは、すかさずラームにリブゴルフへの移籍を「後悔しているのでは?」と問いかけた。
「もはやそれは済んだことだ。過去の話だ。僕自身が決意したことだ。(リブゴルフにいることは)快適だよ。でも、できることなら、(PGAツアーに)戻りたい」
ラームが口にした「戻る」は、リブゴルフ選手であることをやめてPGAツアーに戻るというよりは、リブゴルフ選手でありながらもPGAツアーでも再びプレーできる状況が訪れてくれたらうれしいという意味である、その状況が実際に訪れるのかどうかは、PGAツアーの選手理事たちが進めているPIFとの交渉の行方次第だ。
リブゴルフ選手のPGAツアーへの「カムバック」に関しては、PGAツアー選手たちの中でも意見が分かれている。
ローリー・マキロイは「リブゴルフ選手をペナルティーなしでPGAツアーに歓迎すべきだ」と寛大な対応を望んでいる。
しかし、ジャスティン・トーマスやリッキー・ファウラーは「いやいや、何らかのペナルティーは科すべきだ」と反論している。
そして、世界ナンバー1のシェフラーは「PGAツアーを訴えたリブゴルフ選手たちに、僕は“ウエルカム”とは決して言わない」と、厳しい語調で言い切っている。
そんな「アンチ・リブゴルフ」「アンチ・ラーム」の空気が漂う中で、果たしてラームはマスターズ連覇を成し遂げることができるだろうか。
リブゴルフ選手を「決して歓迎しない」と言い切るシェフラーは、果たしてオーガスタナショナルの舞台で、ラームの連覇を阻止することができるだろうか。
今年のマスターズは、そこに注目が集まっている。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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