11月にもプロ転向か!? 悔し涙をうれし涙に変えた蝉川泰果が史上6人目のアマチュア優勝

国内男子ツアーのパナソニックオープン最終日、アマチュアの蝉川泰果(せみかわ・たいが)が8バーディー、2ボギーの66で回り、通算22アンダーでホールアウト。2位に1打差ながらもツアー初優勝を飾った。アマチュアがレギュラーツアーで優勝を飾ったのは、昨年の同大会で優勝した中島啓太以来、史上6人目の快挙。

刻まないことが功を奏した1番のティーショット

◆国内男子プロゴルフ〈パナソニックオープン 9月22~25日 小野東洋ゴルフ倶楽部 (兵庫県) 7113ヤード・パー72〉

 通算16アンダーの首位タイでパナソニックオープン最終日をスタートした東北福祉大4年の蝉川泰果(せみかわ・たいが)。

 前日は1イーグル、9バーディーの61をマークして勢いに乗っているだけに、当然優勝しか頭の中になかった。しかし、いざ1番ホールのティーグラウンドに立つと手汗が止まらない。何度拭っても手のひらは濡れたままだった。この日回る18ホールが、自分とってどれだけ重要なのか考えれば考えるほど怒涛の緊張感に襲われた。

史上6人目のアマチュア優勝を果たした蝉川泰果 写真:JGTOimages
史上6人目のアマチュア優勝を果たした蝉川泰果 写真:JGTOimages

 そんな状態でティーショットを放てばミスをする確率は高い。しかも、フェードボールを持ち球にする蝉川にとって、右サイドのOBは否が応でも気になる。

「アイアンを握ってもいいかな?」。思わずキャディを務めていた1学年後輩の中村凛さんに聞いてみる。その答えは“ノー”だった。結果的にドライバーで放ったティーショットを左のラフへ打ち込んでしまったが、その判断は間違ってはいなかった。

 バーディー合戦が繰り広げられていた今大会、最終日もスコアを伸ばさなければ優勝争いに加わることはできない。スタートホールから弱気になれば、平均飛距離300ヤードと、蝉川にとって最大の武器であるドライバーショットに不安が残る。ましてや強気のプレーを信条とする蝉川が、自らのゴルフスタイルを変えることがどう影響するのかも分からなかっただろう。

 思い切ってドライバーを振り抜いたことで、不思議と緊張感が消え去った蝉川。そのホールをパーで切り抜けると、続く、2、3番ホールでバーディーを奪う。しかし、その後はなかなかスコアを伸ばせず、9番でボギーを叩いたときには、首位の座を明け渡していた。

あえてドライバーを短くするなど研究熱心な一面も

 それでも蝉川はあきらめない。インに入ると、5連続バーディーを含む怒涛のバーディラッシュで一気に単独首位に立つ。最終18番でボギーを叩いたものの、通算22アンダーでホールアウト。1打差で逃げ切り、史上6人目のアマチュア優勝を達成した。

 思い返せば、今年の4月に開催された関西オープンが快挙の始まりだった。2日目を終えて単独首位に立ったものの、決勝ラウンドの2日間でスコアを落とし、17位タイに終わった試合だ。

 最終日のホールアウト後、記者に囲まれて話をするうちに蝉川の目から涙があふれ出てきた。自分のふがいなさとチャンスをものにできなかったことが許せなかったのだ。囲みが解けた後もなお蝉川の嗚咽は止まらない。しかし、その涙をムダにはしなかった。

 6月に開催されたABEMAツアーのジャパンクリエイトチャレンジin福岡・雷山で優勝を飾ると、世界アマチュアゴルフチーム選手権の個人戦では2位に入った。ナショナルチームの合宿に初めて参加し、ガレス・ジョーンズヘッドコーチからマネジメントや様々なことを学んだことも大きかった。

 もちろん、自分でもいろいろと研究してきた。得意のドライバーショットを磨くために、あえて44.75インチと少し短めのものを使っている。

「長いとスピン量が多くなりますが、短くすることでスピン量が減って、逆に飛距離が伸び、精度が上がると思ったからです」と蝉川。また、いろんな経験をすることでメンタルも強くなったという。それが影響したのがパッティングだ。

「3メートルぐらいの下りでも強気で打たないとラインが見えないんですけど、しっかり打つことができました」と、オーバーする怖さを消し去ることができた。それが今大会での平均パット数1位(1.5366)にもつながったといえる。

 ホールアウト後、一生懸命に我慢していた涙を抑え切れなかった蝉川。しかし、目からあふれていたものは、半年前に流した悔し涙ではなく、清々しいうれし涙だった。今回の優勝でこの秋にはプロ転向する予定だが、また一人有望な若手が国内男子ツアーに加わるのは間違いない。

蝉川泰果(せみかわ・たいが)

2001年1月11日生まれ、兵庫県出身。東北福祉大4年生。2022年4月に開催された「関西オープン」では首位で予選通過を果たすなど、プロトーナメントでも実績を残してきた。その後、6月にはABEMAツアー「ジャパンクリエイトチャレンジin福岡・雷山」でアマチュア優勝。「パナソニックオープン」では史上6人目となるレギュラーツアーでのアマチュア優勝を果たした。

スゴイ顔ぶれ!東北福祉大学出身の男子プロ

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松山英樹 写真:Getty Images
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宮里優作(右) 写真:JGTOimages
谷原秀人 写真:JGTOimages
史上6人目のアマチュア優勝を果たした蝉川泰果 写真:JGTOimages

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