リブ総帥ノーマン「ゴルフ界に不安をもたらしたのはPGAツアーだ」 両団体は妥協点を見いだせるか？

　今年6月に創設されたリブゴルフは、初年度の年間8試合すべてを終了し、2年目となる2023年は当初予定されていた年間10試合を14試合へ増やして大幅グレードアップされることが、すでに発表されている。

　米フロリダ州マイアミのトランプナショナル・ドラールで開催された今年の最終戦は、詰めかけた大観衆の安全を確保するために一時は入場制限が行われたほどの大盛況だった。その翌週の11月2日、リブゴルフを率いるグレッグ・ノーマンCEOは米欧メディアの取材に応えるテレコンファレンスに参加。

　大きな手ごたえと来年への明るい見通しに誇らしげな笑顔を輝かせ、その一方で、対立が激化しているPGAツアーに対しては「リブゴルフに辛辣な言葉を投げつけ、私たちを散々こき下ろしたことは、あまりにも残念」と嘆いてみせた。

「私たちはPGAツアーに対して、いろいろな角度から、いろいろな呼びかけをして努力をした。それなのにPGAツアーは私たちをこき下ろしたことが残念でならない。今度はPGAツアーが（リブゴルフに対して）動きを見せる番だ」

　そう語ったノーマンは、さらにこんな言葉も続けた。

「ゴルフ界に不安をもたらしたのはPGAツアーだ。リブゴルフではない。われわれリブゴルフはゴルフ界に新たな競技の場を創設したに過ぎず、健全な競技の場の創設が不安を招くはずはない。それなのにPGAツアーは、なぜ、リブゴルフをこき下ろすのか？　なぜ、話し合いに応じてくれないのか？」

　ノーマンの主張は、字面だけを追っていると、もしかしたら「そうだよね」「なるほど」と頷かされるのかもしれない。

「リブゴルフが新たな競技の場を創設した」ことは事実。彼が言った通り、本来なら健全な競技の場が不安や懸念を招くはずはない。しかし、それはあくまでも「本来なら」の話である。

　リブゴルフ創設前にノーマンがPGAツアーのジェイ・モナハン会長に話し合いを求めたものの、モナハン会長がことごとく拒絶したことも事実だ。

　そして、ロンドン郊外で開催されたリブゴルフ初戦に参加したPGAツアー選手のメンバーシップをモナハン会長は即座にサスペンデッド（資格停止）に処した。そのことを、ノーマンは「PGAツアーが対立の端緒を作り出した」と指摘した。

　実際、テーラー・グーチは「リブゴルフがどんなものかを見てみたいという好奇心で僕はロンドン初戦に出た。一度経験したら当たり前のようにPGAツアーに戻るつもりだったけど、いきなり資格停止処分にされたことで、僕はリブゴルフに移ろうと決めた」と明かし、PGAツアーの強硬姿勢が選手をリブゴルフへ追いやったのだと力説した。

　そこだけ聞くと、あたかもPGAツアーが強引で傲慢なようにさえ聞こえてくるかもしれない。だが、資格停止処分を科すことは、モナハン会長によって事前に何度も選手たちへ警告されていた。

　そして、ノーマンが言った「ゴルフ界に不安をもたらしたのはリブゴルフではない」という主張が正しいとは到底思えない。

　長年、水面下で動き回って画策したリブゴルフ創設プランを突然明かすやいなや、破格のお金で有名選手を次々にPGAツアーから奪い去ったノーマンのやり方がゴルフ界を大揺れさせたこと、今なお揺らしていることは火を見るよりも明らかだ。

　ノーマンはPGAツアーの選手を「奪った」わけではなく、彼らがリブゴルフを「選んだ」のだと言っている。しかし、リブゴルフはビッグマネーをばらまいて、選手たちがリブゴルフを選ぶよう仕向けたのだから、リブゴルフがトッププレーヤーたちを「奪った」ことに違いはない。

　そうやって、PGAツアーを実質的にも心情的にも刺激したことを棚に上げて、ノーマンが「われわれと話し合いませんか？」と持ち掛けたところで、モナハン会長やPGAツアーが、すんなり応じる気になるはずはない。

　それを承知で「PGAツアーは話し合いに応じない」とメディアに向かって言い放つノーマンの言動は、まさに火に油を注いでいる。

　そうした経緯を振り返れば、ノーマンがテレコンファレンスで主張した言葉は「自分勝手な一方的主張」「詭弁」と言わざるを得ない。