無理をしてしまった唯一の1打
◆国内男子プロゴルフ<三井住友VISA太平洋マスターズ 2022 11月10~13日 太平洋クラブ 御殿場コース (静岡県) 7262ヤード・パー70>
三井住友VISA太平洋マスターズ最終日、4メートルのウイニングパットを沈めた瞬間、空を見上げた石川遼。
「打った瞬間は真っ白になった感じでした」と振り返るように、その表情はまさに無だった。それはこの4日間、ただひたすらに目の前の1打に集中していた証拠でもある。3年ぶりに優勝した喜びよりも、今できる自分のゴルフをやり切ったという思いが無の表情を作っていた。

首位と3打差の2位タイ、通算7アンダーでスタートした石川と最終組を形成したのは、史上初のアマ、プロ同一年優勝を狙う蝉川泰果と逆転賞金王に賭ける星野陸也だった。
「2人とも自分より飛んで曲がらないショットを持ち、今一番ノリに乗っている選手」という認識はあるものの、石川に気負いはなかった。逆に蝉川と星野からはどうしても勝ちたいという思いが伝わる。
それがプレッシャーとなったのか、蝉川は1番パー4でバーディーを取ったものの、それがこの日最後のバーディーとなり、悪い流れを止められないままスコアを崩していく。星野も調子は悪くなかったが、思うようにバーディーを積み重ねることができない。
逆に石川はスタートの4ホールで3バーディーを奪い、早々に単独首位へ躍り出る。しかし、強風の影響もあり、スコアを2つ落とすと星野に逆転を許す。その後、12番パー4でバーディーを奪い、再び星野に並んだが、14番パー4で第2打をグリーン手前の池に入れ、痛恨のダブルボギーを叩いてしまう。
「アゲンストが強く、20ヤードプラスして計算したんですが……」と振り返る石川。しかし、「危ない選択をとった」と勝負に出たことも事実だった。初日から無理をしないコースマネジメントに徹していた石川が唯一無理をした1打だった。
星野に2打ビハインドとなったが、すぐに自分のゴルフに集中する。続く15番パー4で第2打をピン奥5メートルにつけると、それを沈めてバーディー。3パットのボギーを叩いた星野に追いついた。そのまま勝負はプレーオフにもつれ込む。