「250万円は生活の足しにするくらい」
そもそも、プロキャディーは選手から雇われている立場。雇用主からすれば、お金を払っているので、仕事ぶりによっては関係を継続するか、クビにすることもできる。ただ、そこには仕事ぶりだけでなく、人間関係を保つ相性のようなものもあるだろう。
一般的にキャディーにはバッグを担いだ試合につき、週給10~12万円が支払われるのが相場と言われている。ただ、交通費や宿泊代、食費などすべて含まれている場合がほとんど。まれに選手が経費や食事代を払うこともあるが、そうしたケースは多くはないと聞く。
それだけではほぼ“赤字”に近いので、死活にかかわってくるのが試合で獲得した賞金だ。これも選手によってまちまちだが、獲得賞金の10~12%がキャディーに支払われるという。
つまり、選手が予選を通過して賞金を稼がないかぎりは、「儲かる」ことはない。それを踏まえたうえで、佐々木キャディーに折半の250万円の使い道について聞くとこんな答えが返ってきた。
「そりゃ車を買い替えようかなんて考えますけれど、私のような職業はいつ何があるかわからないので、いただいた250万円は生活の足しにするくらいです。そういうと夢も何もないんですが、その前にまさか(三ヶ島かなが)折半の話をするなんて思っていなかったですから、いろんなところからLINEのメッセージが来ましたよ(笑)」
生活のために堅実なお金の使い方をするというのは、安定した職業でないからこそだろう。
「“賞金折半”は攻撃的にいくきっかけ」
ホールインワン達成の背景についても教えてくれた。「元々、三ヶ島選手は少し安全にプレーしたがる傾向があるんです。だからホールインワンの賞金がかかったホールなんかは、『お金がほしいから、入れたら折半だぞ』っていうのを口実にして、攻撃的にピンを狙うように伝えます」
「もちろん賞金も手に入れば、結果オーライですが、選手のプレーに対して背中を押してあげるという意味では、何かきかっけがあるほうが伝えやすいんです」。
選手がより攻めの姿勢を貫き、実際にホールインワンを達成して、賞金も手に入れる。「実際には入れた選手が一番すごいんですよ」と笑うが、そのきっかけを作るのもキャディーの役目だ。
今季はここまで苦楽を共にしてきた仲で、キャディーの懐事情をよく知っているからこそ三ヶ島もこうした“太っ腹発言”ができるのだろう。選手の性格の良さもあるだろうが、それ以上にキャディーとの良好な信頼関係が見てとれたホールインワンだった。
※一部修正しました(11月21日15時37分)
三ヶ島 かな(みかしま・かな)
1996年7月13日生まれ、福岡県出身。本名は三ヶ島伽奈。2016年に単年登録者としてLPGAツアーに参戦。翌年の賞金ランクでは41位に入り、自身初のシード権を獲得。2018年にプロテスト合格。2021年の最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップ」で悲願の初優勝を国内メジャー大会で飾る。ランテック所属。