サウジは学んでいるかという問いに「疑いようもなくイエス」
「疑いようもないことだ。イエス。それは、私がこの目で見てきたことだ」
ノーマンはそう言って、さらに言葉を続けた。
「私はリブゴルフのCEOという役割を担うずっと以前から、サウジアラビアにゴルフコースを建設するために、何度も現地に赴いていた。今のようにリブゴルフのことが取り沙汰されるずっと以前から、私はサウジに足を運び、人々が良きゴルフコースを造り上げることを目指して一丸となって頑張る姿を目にしてきた。ゴルフには、そういう力がある。ゴルフを媒介にして、サウジはどんどん向上していった。だからこそ、今があるんだ」
よくよく調べてみたら、ノーマンが登場したニュース・ネイションという有料チャンネルの親会社は、CWネットワークの親会社であり、全米記者クラブから批判の的にされたネクスタ―であることが分かった。少々プロパガンダ的なニオイを感じさせられることは否めない。
だが、それはさておき、ノーマンが言った「ゴルフにはそういう力がある」という部分は、その通りだと感じさせられた。
そう、ゴルフには人々を1つにまとめ、モノゴトを向上させるべく動かしていく不思議な力が、確かにある。チャリティー・トーナメントは、その何よりの例と言っていい。
かつてPGAツアーにチャリティー目的の「シャーク・シュートアウト(現QBEシュートアウト)」を創設し、プレジデンツカップの雛形を考案した実績を持つノーマンは、そういう「ゴルフの力」を肌で実感してきているはずである。
今思えば、なぜノーマンは、リブゴルフ創設の前段階で、そういう「ゴルフの力」をきちんと説明した上でリブゴルフへの人々の理解や協力を求めなかったのだろうか。それが何とも悔やまれる。
PGAツアーへの対抗心を剥き出しにするのではなく、「ゴルフが持つ素晴らしい力を最大限に生かしたい」「リブゴルフはそのためのものだ。そのためにリブゴルフを創設したのだ」と説明していたら、周囲の受け止め方や反応は、まったく異なるものになっていたのかもしれない。
ゴルフ外交を目指すアンバサダーを自負しているわりに、ノーマンは不器用なのかもしれず、不器用な上に頑固で見栄っ張りゆえ、PGAツアーとの対立や周囲との軋轢は、なかなか解消されずにいる。
しかし、昨年の最終戦終了以降、ノーマンの言動は以前より格段に穏やかになり、「大人の対応」を見せ始めたように感じられる。
それを受けて、PGAツアー側も態度を軟化させ、両者が腹を割って話し合いのテーブルに付いてくれたら、そのときこそ「ゴルフの力」が最大化されるのではないか。
そんな期待を膨らませつつ、今後の展開を見守っていきたい。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。