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山下美夢有の強さを象徴する3打連続の“不満足ショット” 新女王はなぜ圧倒的な力を発揮できたのか?
多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、昨シーズンの国内女子ツアーで年間女王に輝いた山下美夢有の強さの秘密です。
バーディーチャンスにつける“満点”よりも“0点”を避ける選択
国内女子ツアーの2022シーズンは、年間5勝を挙げた山下美夢有選手が自身初の年間女王を獲得しました。現在の年間順位を決めるメルセデス・ランキングはポイント制ですが、こちらは2位の西郷真央選手に1000ポイント以上差をつける3441.28ポイント。年間獲得賞金でも2億3502万967円で2位の西村優菜選手に9000万円近い差をつけて、両部門で圧倒的な1位を獲得しました。
獲得賞金額では、2015年にイ・ボミ選手が記録した2億3049万7057円を上回り、史上最高額を更新。また、年間平均ストロークは69.9714で、日本人選手としては初の60台を達成。他にもパーオン率(75.1543パーセント)、パーセーブ率(90.4835パーセント)、年間トップ10入り21回などでタイトルを獲得しています。

彼女の強さの秘密はどこにあるのでしょうか。象徴するシーンがあったのが優勝した最終戦、JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップの2つ前の大会、こちらも大会を制した伊藤園レディスの最終日最終ホールです。当時のシーンを振り返ってみましょう。
山下選手は、2位の岸部桃子選手と1打差の通算12アンダーで最終ホールを迎えます。18番は左サイドに池が広がる423ヤードのパー4。ティーショットは広いフェアウェイに向かって打っていくシチュエーションですが、左の池を避けて右に行きすぎると次打は右サイドの大木がスタイミーになります。また、この日のピンは左サイドいっぱいに切られており、ティーショットが右に行くほど、グリーン左サイドから奥に広がる池のプレッシャーが強くなっていきます。
広々としたフェアウェイと大きなグリーンの18番ですが、1打目、2打目ともにプレッシャーがかかる中で正確にボールを運ばなければスコアを落とす可能性があるのです。18番の最終日の平均スコアは4.2075と、3番目に難しいホールでした。
そんなシチュエーションの中、山下選手のティーショットは右サイドのファーストカットへ。フェアウェイをとらえることができませんでした。
セカンドショットはピンまで173ヤード。なんとかグリーンを狙える状況です。ただ、球がつかまりすぎたり、飛びすぎれば、池に入ってしまう可能性があります。最初はユーティリティーを手にしていた山下選手ですが、最終的にアイアンを選択しました。
ユーティリティーならバーディーチャンスにつける“満点ショット”も期待できますが、池に入れる“0点”もありえます。一方、アイアンなら“満点”の可能性は低くなりますが、飛びすぎたり、つかまりすぎても“0点”を避けることができるわけです。
しかし、山下選手のアイアンショットは、狙いよりも右に飛び、ピンと逆サイドにオン。カップまでは20メートル以上あるパットが残りました。ファーストパットは、カップの向こうに池が見える中で打つ、超ロングパット。できるだけ寄せておきたいところですが、このパットは3メートルショートし、しびれる距離が残ります。
そして、最後のパーパットは、入れれば「優勝」と「年間女王」が確定、外せばプレーオフという状況でした。山下選手はこのパットをしっかり打ち切り、見事にカップインさせました。
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