強敵・中島啓太をプレーオフで下す
◆国内男子プロゴルフ〈~全英への道~ミズノオープン 5月25~28日 JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部 (岡山県) 7461ヤード・パー72〉
ニュースターは突然現れるというが、「~全英への道~ミズノオープン」を制した平田憲聖がその一人になるかもしれない。今季はシーズン2戦目の関西オープンで6位タイに入ったものの、それ以外の3戦では全て予選落ちを喫していた平田。
満足のいく結果を得られていなかったが、自身今季4戦目の今大会でいきなりプレーオフに進出。しかも、首位に5打差ビハインドからスタートしたにもかかわらずだ。

「優勝は本当に意識していなくて、序盤は苦しいゴルフが続きました。14番ぐらいまでは何も考えず、いつもと同じような緊張感でプレーしていました」。前半のハーフでバーディーを4つ奪い、後半の11番でもバーディーを奪取。一気にリーダーボードの一番上まで順位を上げていたが、ただひたすら目の前の1打に集中していたため、自分の順位を知らなかったという。14番パー3のティーイングエリア付近にあったスコアボードを見て、初めて自分がトップにいることを知る。
それでもゴルフのリズムは崩さない。通算17アンダーまでスコアを伸ばし。後続を待った。最終組の中島啓太が18番でバーディーを奪い、勝負はプレーオフに。対戦相手の中島はいわずと知れたエリートゴルファーだ。アマチュア時代から国内外で活躍し、2年連続で世界アマチュアランキング1位。21年のパナソニックオープンでは、ツアー史上5人目となるアマチュア優勝を飾っている。
「素晴らしい選手で簡単に勝てないことも分かっていました。でも負けたくないという気持だけは強かったです」
プレーオフは一発勝負であり、何が起こるか分からない。ただ、勝利に対する気持ちが強い方に女神が微笑むことが多い。プレーオフ3ホール目で平田が1メートルのバーディーを奪って勝利を手にしたが、優勝への執念が中島を上回ったのだろう。
ホストプロの優勝は8年ぶり
もっとも、平田も無名のアマチュアだったわけではない。中学3年生のときに「日刊アマ」で優勝。高校2年生で「関西アマ」を制する。さらに大学3年では同学年の蝉川泰果を1打差で振り切り優勝。その権利で同年のサードQTを受験。ファイナルQTにまで進んで2位に入っている。まさにトップアマの一人だったのだ。プロ転向と同時に今大会のスポンサーであるミズノとアンバサダー契約を結んでいるが、その当時から同社の平田に対する期待は高く、2年目にして早くもその期待に応えた形となった。
ちなみに、今大会でホストプロが優勝したのは15年の手嶋多一以来となる。しかも、73年のツアー制度施行以来、400人目の初優勝者となったのだから“持っている”としか思えない。
さらに、今大会では上位4人に今年の全英オープン出場権を与えられるが、当然それも手にした。自身初となる海外メジャーで上位に入ったなら、さらに注目を浴びるのは間違いない。
そうなれば、中島、蝉川の2人に平田を加えた2000年度生まれの3人をセットにアピールすることもできる。実際、男子ツアーではこれまでも青木功、尾崎将司、中嶋常幸のAONや、倉本昌弘、羽川豊、湯原信光の3人、片山晋呉、宮本勝昌、横尾要の3人が注目を集めた実績がある。その意味では今回平田が優勝したことは男子ツアーにとっていいチャンスになるだろう。
平田以外で全英オープンの出場権を手にしたのは、中島、金谷拓実、安森一貴の3人。平田を含めた4人全員が25歳以下の日本選手となった。それ以外にも松山英樹、比嘉一貴、星野陸也、蝉川が出場権を手にしているが、日本の若い世代に刺激を与えるためにも、平田、中島、金谷、安森、蝉川にはぜひとも上位に入ることを期待したい。