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個性的で魅力的な選手がいっぱい! なのになぜ男子ツアーは“地味”と言われるのか? 【砂場Talk 番外編】
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舩越園子(ゴルフジャーナリスト)「地味」「スターがいない」などと言われている男子ツアーだが、パナソニックオープンの会場で取材する選手たちは、とても個性的で、ユニークな魅力にあふれていた。彼らの魅力を日本の人々にうまく伝えきれていない現状を打開することが必要なのではないか。
日本に人々が知らない個性的で魅力的な男子ツアーの選手たち
近年、日本のプロゴルフ界は、華やかな女子ツアーの人気が高まっている一方で、男子ゴルフは「地味」、「スターがいない」、「低迷している」という声ばかりが耳に入ってくる。
正直に言ってしまうと、今週のパナソニックオープンをこの目で見るまでは、試合会場が一体どんな様子なのだろうかと、そればかりが気になっていた。
しかし、いざ城陽カントリー倶楽部(京都府)に足を踏み入れてみると、一般的にはまだあまり知られていない選手たちが、実はとても個性的で、ユニークな魅力を醸し出していることに、私はとても驚かされている。
最も強烈な個性を放っているのは中西直人だ。2010年にプロ転向した中西は、すでに33歳ながらシード選手としては「新顔」に分類されている。それは、彼がそれなりに長い下積み時代を経てきたことを意味しており、苦労した分、巡り会ったチャンスは十二分に生かそうという彼の強い意欲が伝わってくる。
とはいえ、大阪出身の中西は、そのガツガツした戦意を剥き出しにはせず、お笑い芸人のようなキャラクターで上手に包み込み、サービス精神も旺盛だ。
キャップではなくツバの広いハットを被り、スタート直前でもスマホで撮った動画を即座にSNSへアップする早業は、まさに「お見事」で、そこまでファンサービスを徹底して行なうところは、彼の見上げたプロ根性だ。
笑いに溢れた人柄を前面に出す一方で、アメリカ育ちのキャディーを付け、「今日は『まず上りに付けよう』をテーマにしてやってみようとか、会話しながらやっています」というように、相棒キャディーの助言をフル活用し、基本に立ち戻ることを心がけながらの二人三脚。苦労したからこそ、チャンスにもチャレンジにも貪欲な姿勢を見せる中西の強烈なキャラクターには、そこに成績が伴えば、ビッグスターに育つ可能性さえ秘められていると私は感じた。
苦労人と言えば、35歳の小林伸太郎も山あり谷ありのゴルフ人生を送っている。日本ジュニアや日本アマを制覇した輝かしいアマチュア時代とは裏腹に、プロになってからは、なかなかスポットライトが当たらずにいる。
「だからこそ」なのだろう。スタートホールでキャップを完全に外して、しっかり頭を下げながら挨拶をする小林の所作には、サポートをしてくれている周囲に対する感謝の念が溢れていた。「焼き鳥まさや」所属というところも、彼の特徴の1つとして、もっとアピールできるポイントだと私は思う。
礼儀正しさという意味で印象的なのは23歳のヤングプレーヤー、大岩龍一だ。
彼もまた輝かしいジュニア、アマチュア時代を経験後、日大を中退して2018年にプロ転向。シード選手として迎えた今季は、バーディー率でも平均パット数でも1位に浮上しているが、インタビューを受ける姿勢は、とても謙虚で礼儀正しく、好感が持てる。
63を叩き出したデロスサントスなど魅力的な外国人選手も
個性的で魅力的な選手は日本人だけではない。初日に紹介した南アフリカのショーン・ノリスは魅力的な外国人選手の1人だ。
また、3日目に裏街道の40位タイからスタートしたジャスティン・デロスサントスは、10番から7ホール連続(6バーディー、1イーグル)でスコアを伸ばし、折り返し後も1つ伸ばして63をマーク。首位と3打差の7位タイへ急上昇し、優勝戦線に絡んできた。
両親はフィリピン人だが、ロサンゼルスで生まれ育ったデロスサントス自身は米国籍。カリフォルニアで数々のジュニア、アマチュアタイトルを獲得後、17年にプロ転向。大学時代に友人から「日本で腕を磨け」と勧められ、18年に来日。19年にAbemaTVツアーで初優勝。今季はチャンスを生かしてレギュラーツアーに出場し、夏場以降、ぐんぐん調子を上げている。
折り返し後の1番(パー5)で、同組の阿久津未来也はデロスサントスの快進撃を、「まるで、『みんゴル』ですよ」と苦笑気味に評し、宮里優作はデロスサントスがティショットを打った直後に「ん?(カップに)入った?」と真顔でジョークを口にした。
そんな生々しいやり取りだって、日本の男子ツアーならではの臨場感が感じられて、なかなか楽しい。
そんなふうに、ちょっと見渡しただけでも個性や魅力が光る選手は少なくなく、彼らの魅力を大勢の人々にもっと知ってもらうことができたら、男子ゴルフのファンはもっと増えるはずである。
スターになる可能性を秘めた選手が多い日本の男子ゴルフ界
とはいえ、シード選手たちに「もっと頑張れ!」と檄を飛ばしたくなる面がないわけではない。
今大会でも、デロスサントスのように「ゴールは米ツアーに出ること」と言い切る外国人選手が、まだ日本の風土や文化に不慣れな来日1、2年のうちに優勝争いに絡み、日本体育大学の先輩後輩であるアマチュアの河本力と中島啓太が、3日目を終えて4位タイに並んでいる。
その現象は、「爆発力ある外国人選手が出ているんだね」「アマチュアが2人も優勝争いに絡み、男子ゴルフの未来は明るいね」と見ることもできるが、それとは逆に、「日本の大人のプロたち、シード選手たちは何をやっているんだ?」と、厳しい視線も当然向けられる。
最終的には、個性や魅力を磨きつつ、成績や結果を出すという両方がなければ、ファンが増えないことは誰もが承知のはずである。それがプロアスリートに求められる性(さが)ということもできる。
しかし、日本の男子ゴルフ界は、世間や巷で言われているほどスター不在というわけではない。むしろ、スターになりうるポテンシャルを秘めた選手のほうが多いことを、今週、私はこの目で確認できて、うれしく思っている。
だが、彼らの魅力を日本の人々にうまく伝えきれていない現状には、私自身、歯がゆさのようなものを覚え、打開策の必要性を痛感させられている。