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全米アマの屈辱を糧に中島啓太が「自分と向き合うこと」でつかんだアマチュア優勝【砂場Talk 番外編】
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中島啓太が日本男子ツアー5人目となるアマチュア優勝を果たし、華やかに幕を閉じた今年のパナソニックオープン。全米アマでの屈辱の予選落ちを喫した中島は、どのように復活を遂げたのだろうか。
プレーオフの末、中島啓太が史上5人目のアマチュア優勝を達成
パナソニックオープン最終日は大混戦になったが、終盤は史上5人目のアマチュア優勝をかけた21歳の中島啓太(日体大3年)と、プロ転向から苦節13年で初優勝を目指す33歳の永野竜太郎の争いに絞られ、中島が通算18アンダーで先にホールアウトすると、勝敗の行方は永野の18番(パー3)次第となった。

1打リードの通算19アンダーで最終ホールを迎えた永野は、パーなら悲願の初優勝。しかし、シャンク気味に右に出た彼のティーショットはグリーン右手前のバンカーに突っ込み、ボールがほとんど見えないほど砂の中へ潜り込んだ。初優勝へのプレッシャーに襲われ、彼のメンタル面が大きく揺れていることは誰の目にも明らかだった。
2打目ではバンカーから脱出できなかったが、3打目でピン1.5メートルにつけ、ボギーで収めて中島とのプレーオフに持ち込んだところは、永野が長年コツコツと磨いてきた技術がモノを言ったのだと思う。
しかし、そのナイスボギーがこの日の永野の最高のハイライトシーンになり、まぶしいスポットライトを浴びる初優勝シーンは一回りも若いアマチュアの中島に持っていかれた。
その悔しさは、想像にあまりある。
プレーオフ1ホール目の18番。永野のティーショットは、またしてもグリーンには乗らず、次打は寄せ切れず、パーパットはカップに沈まず、ボギーとなった。対する中島は見事にピン5メートルを捉え、バーディーパットこそ入れそこなったが、しっかり沈めたパーパットが中島のウイニングパットになった。
これまで何度も優勝争いに絡み、今年だけでもトップ5入りが5度目だった永野は、またしても夢破れて惜敗し、「悔しい」と唇を噛んだ。だが、自身の敗因は「単純に技術不足」と言い切り、心が揺れて負けた、とは言わなかった。それは永野なりの精一杯の意地とプライドだったのではないだろうか。
「自分と向き合うこと」を課題に掲げて挑んだパナソニックオープン
一方の中島は、日本ゴルフ史に残るアマチュア優勝を達成し、キラキラ輝いていた。その栄光への道の出発点は、「心が折れた」経験だった。

「今年の全米アマで初日に80を叩いて、心が折れた。ずっと悔し涙ばっかりだったので、久しぶりに結果を出せて、応援してくれたみんなに恩返しができました」
全米アマで自分の心が揺れたこと、メンタル面に課題があることを痛感した中島。帰国後は2週間の隔離期間中に自問自答を繰り返し、自らの目標を掲げた。
11月のアジア・パシフィック・アマチュア選手権で優勝してマスターズに出ること。さらには、R&Aから授かったアマチュア世界一の称号「マーク・マコーマックメダル」受賞によって出場が確定している全米オープン、全英オープンを見据えること。
そして、そのためには自分が何をすべきかを日本のナショナルチームのヘッドコーチ、ガレス・ジョーンズと話し合い、「自分と向き合うこと」を課題に掲げた。その意味は、自分なりの意志決定と初志貫徹だ。
「今週に関して言えば、パー3以外の全ホールでドライバーを握ること。今日は強風になって、そこでドライバーを握るのは間違っているのかなと思うところもあったけど、それでも逃げずにドライバーを14回握れたし、振り切れた。自分と向き合えた1週間でした」
ドライバーを握ることに加え、「毎日ジムに行ってトレーニングする」ということも、今週、中島が向き合っていた課題だった。
「アジア・アマ(アジア・パシフィック・アマチュア選手権)に向けて、もっと体を強くするためにです」
プロであれ、アマであれ、ベテラン選手なら「毎ホール、ドライバーを握ること」や「毎日ジムに行くこと」が、大事な試合の週に、なぜ必要なのだろうかと首を傾げるかもしれない。
だが、そこには「目標を段階的に定めて、手前から1つ1つクリアしていけば、いつか必ずゴールにたどり着く」というジョーンズの教えが感じ取れる。
「まだ学生でアマチュアなので、自分らしくプレーしたい」「全米アマでメンタル面から崩れた悔しさを払拭したい」という中島自身の意向を汲んだうえで、今トライすべき目の前の目標として、ジョーンズは2つのテーマを中島に掲げたのだ。
オーストラリア人のジョーンズは日本語をほとんど話さない。中島はどうやってジョーンズとコミュニケーションを取っているのかを尋ねたら、「会見とかで英語でしゃべるのは無理ですけど、ガレスとのやり取りは英語でやっています」。
英語力を身に付けることも「世界で戦うためには絶対的に不可欠」と教えるジョーンズの下、中島は着々と世界への道を進み、「いつか世界中で応援されながらゴルフをしたい」と目を輝かせた。
またしても惜敗に終わった永野も、「優勝争いを繰り返していれば、いつか絶対!」と悔しさの中で、悲願の初優勝へのさらなる前進を心に誓った。
「いつかきっと」――勝者も敗者も、そうやって未来への意欲を膨らませたサンデーアフタヌーンは、雨の中、いつまでも心地良い余韻が漂っていた。
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