菅沼菜々の“幻のホールインワン”裁定にSNSで疑問の声続出！ “なぜカップインではないのか”を解説

　脇元華が涙のツアー初優勝を遂げた先週の伊藤園レディス。この試合で最も話題を集めたシーンの一つが菅沼菜々の“幻のホールインワン”でした。

　そのてんまつを映した日本女子プロゴルフ協会（JLPGA）の動画は本サイトでも取り上げているので、多くの人がご覧になったでしょう。

　簡単に紹介すると、第1ラウンドの12番パー3。菅沼のティーショットはダンクシュート状態で直接ホールインしたかに思われたのですが、ボールはホールの壁面にくい込んで止まっており、一部がグリーン面より上にありました。判断・処置に迷ったのでしょう、菅沼が競技委員（レフェリー）を呼んだところ、下された裁定は「ボールはホールに入っていない」というものでした。

　その後、競技委員は損傷したホールのふちを修理し、菅沼にそこにリプレースするように指示。菅沼はそれに従ってリプレース（処置について詳しくは後述）。そして、タップインのバーディーでホールアウトするという動画でした。

　しかし、菅沼はホールインワンを逃したことが悔しかったようで、競技終了後、さっそくSNSのXにこの動画を引用し、「えー（泣き顔絵文字）なんでダメなん（泣き顔絵文字×4）えー（泣き顔絵文字×2）えー（泣き顔絵文字×2）」と泣き顔いっぱいの投稿をポスト。

　当然このポストは大バズり、菅沼の引用リポストのリーチ数は40万以上、引用元のJLPGAのポストは55万以上となっています。

　そして、そのリプライ（返信）には「入っているでしょう！」と裁定に異を唱える書き込みが多数見られます。

　実は、これと同じケースが2年前の日本女子オープンの3日目に起きています。ペ・ソンウのホールに入りかけた1打が菅沼と同じく「ホールインワン」ではなく「ベタピン」と裁定されたのですが、その裁定について、ゴルフ規則では国内の“最高権威”と言える日本ゴルフ協会ルールズコミッティの市村元チーフディレクターが取材陣に対し、詳細な解説を行いました。そこで示されたのがR&Aの「ゴルフ規則オフィシャルガイド」の定義「ホールに入る」で、次のような詳説が書かれています。

「球がホールの内側の壁面にくい込み、その球のすべての部分がパッティンググリーン面よりも下にない場合、その球はホールに入ったことにはならない。たとえその球が旗竿に触れていたとしても、そのことは当てはまる」

　菅沼のケースもまさにこれ。問答無用で「ホールイン」ではないのです。

　先のペ・ソンウの裁定の際、市村氏は「このような事例はまったくのレアケース」で、長年競技に携わってきた市村氏も実際に見たことはなかったそうです。「でも、R&Aのルールテストでは必ずといって良いほど出される問題なので、ナショナルオープンを担当するレフェリーなら皆、承知しています」ということでした。

　また、この問題は全米ゴルフ協会のルール動画でも取り上げられています。そこでは解説者が「数週間ごとにこのような画像（ボールがホールのふちにくい込んでいる）がネット上に拡散され、議論で騒然となりますが、（前述のオフィシャルガイドの詳説を示して）ルール上、ホールインは認められません」と述べています。

　そのうえで、そのボールは「あるがままでプレーを続ける（タップイン）」か、あるいは「マークしてから拾い上げ、ホールの損傷を修理したうえでリプレース」しなければならないと説明。もしリプレースしたボールがそこに止まらずカップインする場合は、再度リプレースを試み（必ず2度試みること）、それでも止まらなければ、ボールが止まる最も近い箇所にボールを置くことでリプレースを終えなければならない（規則14.2e）としています。

　さて、菅沼菜々ですが、すぐに規則を理解したのでしょう、あまり間を置かずに次の投稿をポストしています。

「入らなかったのは仕方ないから、どうせならあの動画、バズって。笑」

　国内女子ツアーでは屈指の人気者です。バズらないはずはありません。前述のX投稿以上にJLPGAの公式インスタグラムにシェアされたリール動画の再生回数は伸びており、約150万回を記録。約1.4万の「いいね」を獲得しています。

　この再生回数は、今年8月以降では177万回余りの再生数を獲得している、「スタンレーレディスホンダ」出場の原英莉花を追った動画に次ぐ多さです（筆者調べ）。

　そして、“幻のホールインワン”は“本物のホールインワン”よりずっと珍しいということもあり、菅沼の翌日、伊藤園レディス2日目に記録された木村彩子の「自身初のホールインワン」（再生回数約20万回）の動画よりはるかにバズったのでした。