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- “長期離脱”小祝さくらの手首痛とアマチュア中高年が痛めやすい箇所は少し違う!? スポーツ医師が教える予防と処置
ツアー12勝の人気プロゴルファー、小祝さくらが長期に及ぶツアー離脱を余儀なくされた左手首痛。プロアマ問わずゴルファーが痛めやすい部位ですが、スポーツ医師に原因と予防法、処置を聞きました。
スイング動作の繰り返しとインパクト時の衝撃吸収不足が主な原因
国内女子ツアーもいよいよ最終盤になりましたが、試合会場にツアー通算12勝の人気プロ、小祝さくらの姿はありません。今年7月の試合中、左手首に「ゴルフ人生が終わってしまうのかなと思うくらいの痛み」を感じ、内視鏡による「TFCC損傷」の手術を決断。術後はギプスを装着してゴルフも車の運転もしない日々を過ごし、リハビリやトレーニングを少しずつしながら復帰を目指す予定だといいます。
あまり耳慣れないTFCC損傷とは、いったいどんなケガなのでしょうか。また手首のケガはプロゴルファーに比較的よくみられますが、クラブと体との唯一の接点である手を痛めてしまうのはゴルファーの宿命なのでしょうか。スポーツドクターの中村格子先生に教えてもらいました。
「ゴルフで手首を痛める方は確かに多いですね。特に手首の障害は、基本的にはスイング動作の繰り返しによるオーバーユースと、インパクト時の衝撃吸収不足が主な原因だと思います。手首の動きはゴルフスイングで重要な部分を占めているため、どうしても手首に大きな負担やストレスがかかってしまうのです」

「ただし、ひとくちに手首のケガといっても、痛みがあるところによって原因やケガの種類が違ってきます。痛む場所は親指側、小指側、前腕の3カ所に大別されるのですが、小指側が痛むのがTFCC(衝撃を吸収する三角繊維軟骨複合体という組織)損傷や尺側手根伸筋(手首を小指側に曲げる尺屈と甲側に反らせる背屈の動きに関係)の腱鞘炎です。ゴルフをする方の場合は“掌屈回外”といって、スイングの最下点で過度に手首を手のひら側に曲げる動き(掌屈)と、ヒジを曲げたまま前腕を外側にひねって手のひらを上に向けるように左腕を返す動き(左前腕の回外)とで、手首のTFCCというところに負担がかかって小指側に痛みの症状が出やすいと思います」
「もう少し詳しくお話しすると、TFCCと尺側手根伸筋の腱というのは一つの複合体でつながっているんです。掌屈と回外の動き、掌屈と手首を小指側に曲げる動き(尺屈)、あるいはその他の動きで手首への圧が高まってしまうと、TFCC損傷と尺側手根伸筋炎は一緒に起こってきます。どちらなのかを見極めるのに画像検査をすることはよくあります。いずれにしても痛みが出ているときはサポーターなどを使用して患部を安定化させたり、スイングの練習を一時中止したりするといいでしょう」
一般アマチュア、特に中高年男性は親指側を痛める人が多い
TFCC損傷は小指側が痛くなる一方で、実はゴルファーにはそれ以上に痛めやすいところがあると中村先生はいいます。
「特に痛めやすいのは親指の付け根側です。私の印象としては小指側を痛めるTFCC損傷はわりと上級者の方がなるイメージで、一般アマチュアの方は親指側を痛くする方が多いように思います。特に中高年男性は母指(親指)CM関節炎で苦しんでいる方が一番多いですね」
「直接の原因は、グリップを強く握る癖やハンドファーストのインパクトなど親指の関節にインパクトの負担がかかることだと考えられます。グリップをかなり強くギュッと握ったり過度なハンドファーストだったりすると、インパクトの衝撃を吸収するところがなくなって親指や手首に大きなせん断力(物体をずらしたり滑らせたりする力)がかかってしまいます。そのためCM関節の関節症という変形性の関節症になっている方、それも右も左も両方ともなっている方が本当にたくさんおられます。ゴルフ場で患部をガチガチにテーピングしている方を見かけますが、痛みを我慢してプレーしているんじゃないでしょうか」
そこまで痛めてしまったケガにはどう対応したらいいのでしょうか。
「痛みがある場合は安静にしてアイシングとテーピング、それ以上の場合、たとえば激しい痛みが長引くときは整形外科を受診してもらうことが大事です。ゴルフをする時ももちろんテーピングはしていただきたいのですが、それと同時にグリップの握りが強すぎないよう確認することと、シャフトの硬さが合っているか一度クラブのスペックも見直してみていただけるといいと私は思っています。フィッターにもよりますが、『お客さんのヘッドスピードならある程度硬いシャフトの方がいいですよ』と、ゴルファーのMAXを勧められて硬度SやXシャフトを使っている男性ゴルファーが意外と多いように感じるからです」
「もし手首の親指側が痛くなったら、急性期の熱感があるようなケガは10分か20分くらい冷やしてから安静に。痛みがさらに続くなら専門医を受診するとよいでしょう。それと並行してシャフトの硬さを1つ下げることが長期的な手首のケガ予防として重要になると思います」
いまは痛みがないとしても予防するに越したことはありません。
「手首のケガ全体に言えるのは、ゴルフが上達してきてスイングを変えた時などに起こりやすいということです。フェードが打ちたくてこうしてみた、ここをちょっと変えてみた……皆さんいろいろ試して何かをしようと思ったら痛くなってきたということがあるようです。手先を使っていつもと違うボールを打つ練習をたくさんやるとき手首を痛めることが多いように感じています」
「予防としてこれだけやっておけば絶対というものはありませんが、道具の見直し、練習量の調節、ラウンド前後のケアを3本柱にするといいでしょう。道具の見直しは、先ほどもご説明しましたがシャフトの硬さを柔らかくするとインパクト時の負担が減ってきて手首への負担は減ります。練習量の調整は、グリップを強く握りすぎないことも含め、無理して振らない、ラフからのショットや硬いマットでの反復練習を少なくするなどによって手首にかかる衝撃やせん断ストレスなどの負担を少なくすることができます。最後のケアについては、スタート前、プレー後、また日常生活でも入浴後などにきちっとストレッチをするなどの要素があると思います。痛くなりそうだなと違和感を感じたときは、ラウンド後のケアとして10分くらい冷やすといいでしょう」
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