自らを律することがゴルフの精神の一丁目一番地
ゴルフの試合では、あくまで審判は自分自身というスタンスで競技が行われています。
2019年版のゴルフ規則の1つ目にある「プレーヤーの行動基準」の項には、期待される行動として、「誠実に行動すること-例えば、規則に従う、すべての罰を適用する、プレーのあらゆる面で正直である」と書かれています。

ゴルフは誠実な心の持ち主であるということを前提に行われるスポーツであり、そこでの不正はあってはならない行為なのです。
ティーチングプロ兼クラブフィッターの北野達郎さんにお話を聞くと、「ゴルフに審判がいない理由の1つに、相手はコースと自分自身であるという特性があります。
例えば野球やサッカーでは、対戦相手のチームが存在して、ホームランやゴール等で相手から得点を取りあって試合を進めていきます。
ゴルフでは、ゴルフコースが相手であり、自分でゴール(ホールアウト)に進んでいくスポーツなので、スコアを自分自身でチェックするのが自然といえるでしょう。また、アドレスでわずかにボールが動いたというような誰も気づかないようなことでも、ペナルティを正直に申告したことで、世界からスポーツマンシップを称賛された選手もいます。
この例からも分かるように、ゴルフは人間性も試されるという点が、他に例のない審判のいないスポーツとなっているゆえんでしょう」とのこと。
お互いに信頼し合っているからこそ自分自身が審判になれるのでしょう。
また、ゴルフはマナーに厳しいスポーツでもあります。ゴルフでいくつもマナーがあるのは、「プレーする人が気持ちよくプレーできるように」という心づかいからです。
あいさつをする、時間に遅れない、打つ人の邪魔をしない、スロープレーをしない等、これはゴルフだけでなく社会人としてのマナーにも当てはまるといえます。
ゴルフが接待などによく使われるスポーツの背景には、こうしたビジネスマナーを心得ている人か否かを見極める意味もあるかもしれません。
もし不正をしたらどうなる?

ゴルフは打数申告などが自己責任で行われるため、ルール違反をしようと思えばいくらでもできてしまいます。
ゴルフ規則では、ルールに反するような行為をプレーヤーが行った場合、ペナルティにはその違反行為の内容や種類によって1打罰と2打罰があり、その打数が競技スコアに加算されます。またペナルティを超える悪質な違反行為があった場合、最悪のケースでは失格となることもあります。
ゴルフで不正をすれば社会的信用は一気に落ちてしまいます。とくに、スコアの改ざんは「ゴルフ精神」に反した行為といえるでしょう。
名手ハリー・バードンは、「いい加減なゴルフをするやつが、いい加減な人物だと思うのは間違いだ。いい加減な人間だからこそゴルフもいい加減なのだ」と言ったそうです。
このことからも、ゴルフはその人の人間性が最もあらわれるスポーツでもあると言えるでしょう。ゴルフは自分との戦いであり、人と張り合うスポーツではないのです。
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ゴルフはお互いを信頼し合っているからこそ成り立つスポーツです。だからこそ、審判は付けずに自分自身が審判となりスコアを記入していきます。また、そこでの不正行為は相手への裏切り行為として、発覚した際は社会的信用も失ってしまう可能性があります。
ミスは誰でもありますが、そのミスを隠すのか、挽回しようと頑張るのかによって、その人の人間性があらわれると言えるでしょう。