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全米女子オープン賞金額がほぼ倍に!しかし本当のビッグニュースは第77回目にして初の出来事【舩越園子の砂場Talk】
今シーズンから渋野日向子、古江彩佳も参戦することで、日本でも注目度が上がることが確実な米女子ツアーにビッグニュース。メジャーの中でも最高峰の全米女子オープンの賞金がほぼ倍額に引き上げられたのだ。そこにはどんな事情と狙いがあるのだろうか?
全米女子オープンの賞金総額が女子スポーツ史上最高額に
今年の全米女子オープンの賞金総額が2021年の550万ドル(約6億3000万円)から1000万ドル(約11億5000万円)へ大幅アップされることを、大会を主催するUSGA(全米ゴルフ協会)が発表したのは先週7日のことだった。

ほとんど倍増にも近い今回の大幅な賞金総額の引き上げにより、今年の優勝者が持ち帰る優勝賞金は180万ドル(約2億円)となり、言うまでもなく世界の女子ゴルフ史上最高額になる。
昨季1年間に総額で180万ドル以上稼いだ選手が米女子ツアー(LPGA)にわずか3人しかいないことから見ても、1大会の優勝賞金180万ドルがいかに破格であるかが、おわかりいただけることだろう。
さらにUSGAは今後5年以内に同大会の賞金総額が1200万ドル(約14億円)になることも示唆している。
これを聞いて、「へえー、やっぱり女子ゴルフは盛り上がっているんだねえ」と思うかもしれないが、実を言えば、そんなに単純な話ではない。
男子ゴルフのメジャー大会は4つだが、女子にはメジャー大会が5つある。そして、全米女子オープン以外の他の4大会には、以前から大会スポンサーがついており、今年はANAがシェブロンに変わったほか、KPMG、エビアン、AIGがそれぞれメジャー大会の大会スポンサーになっている。
しかし、全米女子オープンだけは、これまで一度も大会スポンサーを付けたことがなく、全米オープンや全米アマチュアといったUSGA主催の年間17のナショナル大会も、いずれもスポンサーが付いたことはなく、すべて「presented by USGA」とされてきた。今大会は「U.S. Women’s Open Presented by ProMedica」と表記される。
とはいえ、大会を資金面や物品面、マンパワー面から支え、協力しているアメリカン・エキスプレスやシスコ、レクサスといったパートナー企業の存在はUSGA主催大会にも以前からある。だが、大会スポンサー(いわゆる冠スポンサー)を募ったり付けたりしたことは、これまで一度もなかったのだ。
それゆえ、今年の全米女子オープンに大会スポンサーとして医療管理システムや健康管理システムを提供するプロメディカ社が付いたことは、USGA史上初のビッグな出来事だ。
180万ドルの優勝賞金や1000万ドルの賞金総額というビッグな数字には驚かされたものの、本当のビッグニュースは、それらの数字そのものより、それらの数字を可能ならしめる大会スポンサーなるものをUSGAが史上初めて採用したことなのである。
USGA改革のキーマンは、マイク・ワン新会長

権威あるUSGAが1895年以来の慣習を破って史上初のスポンサー企業を付けたことは、イメージ的には、日本の国鉄や専売公社が民営化されていったことと、どこか通じるものがある。
すっかり低迷していた米女子ツアーの立て直しに手腕を発揮した米LPGA前会長のマイク・ワン氏が、昨年、USGA新会長に就任したことで、さっそくUSGAにラディカルな改革がもたらされつつあると言っていい。
世界的な人気を誇る米男子ゴルフ界は、大会を開催すればするほど収益が得られる「黒字経営(黒字開催)」。
だが、米女子ゴルフの大半の大会は、ここ10数年、開催すればするほど赤字がかさむ状況に、ずっと悩まされ続けてきた。
アニカ・ソレンスタムやロレーナ・オチョアといった偉大なる女王たちが引退し、韓国勢などの外国勢が上位を独占する一方、米国人スターが不在となったことで、米女子ゴルフは人気低迷とスポンサー不足による資金難にあえぐようになった。
だが、ワン前LPGA会長のさまざまな「経営努力」により、ここ数年、米LPGAには少しばかり光が見え始めており、せっかく見えたその光を消してしまわないよう、光が当たる範囲をもっと広げ、米女子ゴルフ全体を燦然と輝かせるために、USGAの新会長となったワン氏は、さらなるアクションに出た。
それが、伝統的な全米女子オープンにスポンサー企業を付け、それによって賞金額をアップさせた今回の新たな施策なのだ。
いずれは男子のメジャー大会にも?

「全米女子オープンは、世界中の少女ゴルファーたちが夢を抱き、憧れを抱く場でなければならない」(ワンUSGA会長)
そのためには、史上最高額の賞金が手に入る夢の舞台を作り上げる必要があり、それを作リ上げるためには、伝統と権威を重んじるUSGAの大会といえども、民間企業を大会スポンサーに付け、資金面からバックアップしてもらう必要があるのだと、ワン会長は強調している。
渋野日向子が優勝したあの全英オープンにも、AIGがタイトル・スポンサーとして付いており、昨年の賞金総額は580万ドルだったが、今年は680万ドルにアップしている。
そうやって、メジャー5大会すべてが大会スポンサーを付けて賞金の大幅アップを図り、世界中から優秀で魅力的な女子選手たちが集まってくれば、いずれは、その女子選手たちが米LPGAのメンバーとなってツアーに参加するようになる。そうなれば、そうした優秀で魅力的な女子選手たちが、さらなるスポンサー企業をツアーに引き入れてくれることが可能になり、その連鎖的な反応が女子ゴルフ全体を盛り上げる牽引力になる。
日本の畑岡奈紗に笹生優花が加わり、今年からは渋野日向子と古江彩佳が米LPGAに加わることは、まさに、ワン氏が思い描いた青写真の実現なのである。
そして、男子ゴルフ界は、現在は大いなる盛り上がりを見せているため、メジャー4大会に大会スポンサーを付けずとも収益は十分に得られている。だが、今後、何が起こるか、何が一変するかは、今は誰にもわからない。いずれはUSGAが全米オープンに大会スポンサーを付け、マスターズや全英オープン、全米プロの大会名にもスポンサー企業名が付される時代が到来するのかもしれない。
しかし、激しい競争社会の中で生き残り、存続し、拡大成長していくためには、ときには見栄や意地、旧来の慣習と引き換えに、新しい何かを受け入れることも必要になる。
全米女子オープンに大会スポンサーが付き、賞金額が大幅アップされた出来事に、そんな現代社会のサバイバルゲームの厳しさと生き抜くための柔軟な姿勢の大切さを垣間見た気がしている。
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