パットのルーティン変えるキャメロン・スミス
■キャメロン・スミス/1993年生まれ、オーストラリア出身。2017年のダブルス競技「チューリッヒクラシック」で米ツアー初勝利。17、18年は母国で開催された欧州ツアー「オーストラリアPGA選手権」で連覇を達成する。20年のソニーオープン・イン・ハワイで米ツアー2勝目。同年のマスターズでは、大会史上初めて4日間を60台でプレーして2位に。22年のセントリートーナメント・オブ・チャンピオンズで米ツアー4勝目を達成
ソニーオープン・イン・ハワイで、松山英樹選手が昨年10月のZOZOチャンピオンシップに続く今季2勝目を達成しました。
米PGAツアー通算8勝は、アジア勢最多タイという快挙です。松山選手については、今後このコラムで解説しようと思いますが、今回はその前週に開催されたセントリートーナメント・オブ・チャンピオンズに注目しました。

米PGAツアーの2022年初戦となるこの大会は、前年のツアー優勝者ら38人が出場できる試合。優勝したのは、初日から首位を守ったキャメロン・スミスでした。
優勝スコアは、なんと34アンダー。03年に開催された同大会でアーニー・エルス選手が記録した31アンダーを上回る大会最多アンダーパーでした。
ちなみに、2位のジョン・ラーム選手は33アンダー、3位のマット・ジョーンズ選手は32アンダーと、3人が記録を更新する展開でした。
私が気になったのは、C・スミス選手のパッティング・ルーティンです。ルーティンというと、「いつでも、どんな状況でも同じ手順でアドレスに入る」というイメージを持っている人が多いはず。
しかし、彼はショートパットとロングパットでルーティンを変えていたのです。
具体的には、アドレスした後のカップを見る回数と時間のかけ方です。
ショートパットではチラチラっと5回、カップに視線を送ってからストロークを開始していましたが、ロングパットでは、長めに6回カップを確認。しかも、6回目は5秒程度カップを凝視してから始動していました。
映像が止まったのかな? と、見ているこちらが思うくらい静止してジッとカップを見ていたのは、イメージを膨らませるため。
ボールが転がるスピードやライン、そしてカップの存在を頭の中で鮮明に描いていたのだと思います。
ゴルフはターゲットスポーツですが、ターゲットまでの距離が遠くなるほど、“自分とボール”だけの世界に陥りがち。
つまり、ターゲットへの意識が薄れ、ボールを打つことだけに集中してしまう傾向があります。これでは距離感を合わせるのは難しくなりますよね。
ロングパットを打つ前のスミス選手は、しっかりカップを意識するために、時間をかけてターゲットを確認していたというわけです。
必ずしも同じ手順でアドレスに入る必要はない
ちなみに、パッティングだけでなくアプローチでも、必ずしも決まった手順を踏んでアドレスに入る必要はないと思っています。

ひとつのクラブで様々な距離を打ち分ける場合は、距離の長さによってルーティンを変えても問題ありません。
むしろ、スミス選手のように「長い距離のルーティン」、「短い距離のルーティン」とシチュエーションによって変える方が結果は良くなる場合もあります。
パッティングやアプローチで距離感が合わない人は、スミス選手の方法を真似てみてはいかがでしょうか。
■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。