「剥奪」「厳罰」物騒なワードが飛び交うPGAツアーvsリブゴルフ 抗争の今までとこれからがよく分かる | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

「剥奪」「厳罰」物騒なワードが飛び交うPGAツアーvsリブゴルフ 抗争の今までとこれからがよく分かる

世界のゴルフ界を混乱に巻き込みながら今週ついに開幕戦を迎えた「リブゴルフ」。米PGAツアーとの抗争は今後さらに激しさを増していきそうだ。いったい何が問題でここまで対立の構図になっているのか、リブゴルフを巡るこれまでとこれからを分かりやすく解説する。

構想は何年も前からあったが1カ月前まで現実味はなかった

 グレッグ・ノーマンがCEOを務める「LIV Golf(リブゴルフ)」というゴルフの新リーグが立ち上がり、世間を騒がせている。開幕戦となるロンドン大会が今まさに開催中だ(6月9~11日・センチュリオンクラブ)。

「リブゴルフ」の2枚看板となりそうなダスティン・ジョンソン(左)とフィル・ミケルソン 写真:Getty Images

「54ホール、48名、個人戦とチーム戦、ショットガンスタート、予選落ちなしで年間8試合。各試合の賞金総額2500万ドル(約30億円)」というのが基本コンセプト。選手たちにとってみれば破格の試合だ。

 この新リーグのことを米PGAツアーは「Rival League(ライバルリーグ)」と呼ぶようになり、警戒した。

 新リーグ構想が出始めたのは何年も前の話で、つい1カ月前くらいまでは現実味を帯びていなかった。

 それがこの5月に入ってから話が急加速。5月31日にはダスティン・ジョンソン、セルジオ・ガルシアらがリブゴルフの初戦「リブゴルフ・インビテーショナル・ロンドン」に参戦すると発表。ケビン・ナや、リー・ウエストウッド、ルイ・ウーストヘイゼンらPGAツアー、DPワールドツアー(欧州ツアー)を主戦場とするトップ選手たちも参戦を表明した。

 6月2日から行われたPGAツアーのメモリアルトーナメントを前に、同ツアーのコミッショナー、ジェイ・モナハンは「新ツアーに参戦するものは、PGAツアーの出場権を剥奪、厳罰とする可能性がある」と再度、選手たちに通告するに至った。

 6月4日には同ツアー5勝のベテラン、ケビン・ナが「PGAツアーを辞める」と発表。すると、ナに続くようにダスティン・ジョンソンも「PGAツアーメンバーを辞める」と発表。PGAツアーとリブゴルフを取り巻く状況は未曾有の事態へと発展している。

そもそもリブゴルフとは何か? フォーマットは?

「リブゴルフ」は、リブゴルフ・インベストメンツが主催する新しいゴルフリーグだ。

 元世界No.1プレーヤーでオーストラリア人のグレッグ・ノーマンがCEOを務めており、サウジアラビアの政府系ファンド(パブリック・インベストメント・ファンド)が出資し、2021年11月に発足した。

 スローガンは“GOLF, BUT LOUDER”(ゴルフ、もっと熱狂的に)

「これまでにない、新しいゴルフの楽しみ方をファンに提供する」として、

・12チームによるチーム戦(4名1チーム)
・48名による個人戦(同時開催)
・54ホール競技
・年間8イベント(レギュラーシーズン7試合、チームチャンピオンシップ1試合)
・予選落ちなし
・ショットガンスタート(12組が同時スタート)

 というフォーマットで開催される。

 レギュラーシーズン7戦を終えた後、8戦目は「チームチャンピオンシップ」として、チーム戦のみが行われる。チーム戦のマッチプレーが4日間行われ、年間チームチャンピオンが決まる。年間チャンピオンチームには5000万ドル(約70億円)が支払われ、4名の選手が25%ずつ受け取る。

新リーグが誕生した背景

 90年代に世界ランキング1位に君臨したノーマンは、PGAツアーの体制に疑問を持っていた。「個人事業主なのだから、世界のどこでも、試合に呼ばれれば参加する権利があるはず」と訴えた。

 そして1994年、ノーマンは「世界各国で10試合」を理想とするインターナショナルツアーを画策する。しかし、そのツアーに賛同する選手が思ったように集まらず、立ち上がることはなかった。

 そんな中、96年にタイガー・ウッズが鮮烈なデビューを果たし、PGAツアーは一躍人気の興行に成長。それまでは欧州や日本など、各国の主要ツアーとあまり変わらない賞金額だったツアーは、その他を大きく引き離す賞金額を誇るツアーになり、PGAツアーの魅力を上回るツアー構想は下火になった。

 しかし、その後も新ツアー構想は水面下で話題に上がり続けた。2014年、18年にはローリー・マキロイが新ツアー移籍の打診を受けたという。

 そして20年、謎の新団体「プレミアゴルフリーグ」がツアーのロッカールームを賑わすことになる。「18試合、48名、10試合を米国内、8試合を米国外で行い、個人戦と団体戦を行う」という構想だ。

 プレミアゴルフリーグは、当時欧州ツアーのスケジュールに組み込まれていたサウジインターナショナルのプロアマで一緒にプレーしたフィル・ミケルソン、コリン・ネビル、アンドリュー・ガーディナー、サウジ・ゴルフフェデレーションの幹部との間で話題になり、ガーディナーが音頭をとって実現に動き出したものと言われている。

 潤沢なサウジマネーを背景にプレミアゴルフリーグとしてスタートするかに見えたが、その話題は20年に消えてしまう。そして21年、新たに「スーパーゴルフリーグ」という名称の、非常に似たコンセプトの別団体が話題に上がるようになる。そのCEOにはグレッグ・ノーマンが就任――これが現在のリブゴルフとなる。

PGAツアーとリブゴルフの賞金比較

 さて、世界最強のPGAツアーを去ってまで、リブゴルフに参加するメリットは選手たちにあるのだろうか。賞金を比較してみよう。

【1試合あたりの賞金】

PGAツアー(RBCカナディアンオープン)
総額:870万ドル(約11億円)
優勝:136.8万ドル(約2.2億円)

リブゴルフ(初戦のロンドンインビテーショナル)
総額:2500万ドル(約32億円)
個人優勝:400万ドル(約5.2億円)
団体優勝:優勝300万ドル(一人当たり約1億円)

【1シーズンあたりの賞金総額】

PGAツアー(メジャーを除く44試合)
4億640万ドル(約530億円)

リブゴルフ(8試合)
2億2500万ドル(約293億円)

 リブゴルフは1試合あたり約3倍の賞金総額で、選手たちの収益率は9.3倍にも及ぶ。これに加えて破格の契約金が支払われると憶測されている。

なぜリブゴルフがこれほど敵対視されるのか?

 リブゴルフは人権侵害をする国(サウジアラビア)がスポーツをプロパガンダに使っている(スポーツウォッシング)という点と、プロスポーツをお金の力で一社独占することの脆弱性という点において、米国を中心としたゴルフ関連メディアやSNSで批判されている。

 6月8日に行われたリブゴルフの記者会見でも、リー・ウエストウッド、イアン・ポールターなどにモラルに関する質問がぶつけられた。お金のために動き、モラルを失っていると選手たちが批判の的になっているが、選手たちはそういった主旨の質問に対しての回答を拒否。ポールターは「プロゴルファーはフリーエージェント。自分たちで出場する試合を選べるはず。今までもそうしてきた」と主張している。

 モラルに訴えかけるような批判が多いが、実際は、PGAツアーなど主要団体にとっては、コンテンツ(選手)が流出することでスポンサーやファンの減少を招くことを懸念し、ビジネスモデルが崩壊することを恐れていると思われる。有名選手は年に20試合くらいしか出ないのに、8試合を新リーグに持っていかれたら、通常の試合にはほとんど出ないということにもつながるのだろう。

リブゴルフは今後どうなっていく?

 リブゴルフの個人戦で総合優勝するには最低3試合に出場する必要があり、8試合目のチームチャンピオンシップに出場するには、チームキャプテンにドラフトされる必要がある。

 初戦に出場する選手たちは、世界ランキング1000番台の選手もいれば、主要ツアー未勝利の選手もおり、PGAツアーやDPワールドツアーに比べれば、決して強いフィールドとは言えないだろう。

 しかし巨額の移籍金や、1試合あたり9.3倍にも及ぶ収益率でプレーするリブゴルフを魅力的に思う選手たちは増えていくかもしれない。第2回大会、第3回大会と回を重ねるごとに、選手層は厚くなっていき、「チームのドラフトから漏れたくない」と思う選手はPGAツアーを離れ、リブゴルフを選ぶことになるかもしれない。

 メジャーをはじめ、PGAツアー、DPワールドツアーなど主要ツアーの競技を夢みて挑戦し、優勝をつかむための1打を打つ選手のストーリーにファンは興奮を覚える。その「本気」と「歴史」、つまりレガシーこそがPGAツアーや主要ツアーの魅力だ。

 一方、リブゴルフのフォーマットはショー、エキシビションの要素が強い。

 そういった意味では、リブゴルフが成功したとしても、PGAツアーやDPワールドツアーの価値が落ちるということはないのではないだろうか。

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