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- 横峯さくらが考えるツアーに託児所が出来た意味 後輩たちに「将来の選択を迷う」自由を
今年5月から、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が、住友商事のサポートを受けて始めたツアー会場での託児所「JLPGA Welcome babies&kids project supported by住友商事」。まだ“はじめの一歩”ということで、限られた試合での開設ですが、選手たちからは歓迎の声がたくさん聞こえてきます。
「自分たちの頃は、迷うもの(選択肢)がなかった」
後輩プロたちの選択肢が増えれば……。横峯さくら選手が、プロとして、ママとしての姿を、しっかりと後輩たちに見せようとしています。プロアスリートのワークライフバランスを、それぞれがうまくとりながら、プレーを続けることができれば、可能性は大きく広がるでしょう。
今年5月から、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が、住友商事のサポートを受けて始めたツアー会場での託児所「JLPGA Welcome babies&kids project supported by住友商事」。まだ“はじめの一歩”ということで、限られた試合での開設ですが、選手たちからは歓迎の声がたくさん聞こえてきます。
風光明媚な長崎県のパサージュ琴海アイランドゴルフクラブで行われた日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯では、リゾートコースのコテージが託児所になっていました。覗いてみると、そこで過ごしていたのは横峯選手の2歳の長男、桃琉(とうり)くん。さくらママとキャディーを務める陽太郎パパの2人が仕事をしている間、保育士さんたちと楽しく待っていたのです。
「先週(ニトリレディス)は、子供を置いていったんですけど、今週は託児所があるので助かります。先週は子供に会えないな、という気持ちがあったけど、今週は大変でも、子供からパワーをもらっています」。選手の多くが、酷暑で難しくなったグリーンに疲れ果ててホールアウトしてくる中、横峯選手は笑顔いっぱいでした。
ホールアウトしてすぐ顔を見せてしまうと練習に行けなくなるからと、プレーが終わり練習も全部終わってから、ベビーカーでパパと2人でお迎えに行きます。飛びついてくる桃琉くん。一般的な保育園のお迎えと同じように、見ているほうも笑顔になる光景です。
「私たちの方針が、保育園に預けて置いてくるのではなく試合にも一緒に連れて行って育てたい、というものなので、託児所ができたのは本当にありがたいです。一時保育とかに行くことはあるのですが、基本的には(遠征先でも)一緒に過ごしています。学校に入ったら、どうしても定住という感じになると思うので……」と、家族の在り方を話す横峯選手。そこには、自分だけでなく、後輩たちの人生の選択についての深い思いもありました。
「自分もそうでしたけど、若い子たちは、まだ何も考えていないかもしれません。でも、こういうの(託児所)があれば、将来の選択を迷うことができます。自分たちの頃は、迷うもの(選択肢)がなかった」
ジュニア時代からツアーに出場し、ツアー通算23勝。2009年には賞金女王に輝くという実績の持ち主ですが、若い頃には「結婚したらゴルフはやめる」と思っていたそうです。
ところが、14年にメンタルトレーナーである森川陽太郎さんと結婚し、米ツアーでプレーしたことで考え方がガラリと変わります。約30年前から、毎週、ツアーが託児所を開設しているそこでは、選手たちが子供を連れて試合に来るのが当たり前になっていたからです。プレーが終わってすぐに子どもの顔を見て、また練習に行ったり、複数の子供を預けたり……。ファミリーでのツアー参戦が、ごく自然なことになっているのを見て「私もそうしたい」と思うようになったそうです。
横峯選手が米ツアーで見た光景と、そこから思い描いたその先の人生。それを、日本ツアーでも後輩たちが体験できることが、とても大切だと横峯選手は考えているのです。
以前はおむつ替えの場所を探すのにも苦労した
これまで、大会主催者が独自に託児所を開くことはありましたが、ツアーとして開設したのは、今年5月のワールドレディスサロンパスカップが初めてでした。
もともと日本のツアーでは、子供の居場所がない試合が多く、選手が子供を連れてくるには家族やベビーシッターなどに自分でお願いしなければなりませんでした。そうして試合会場に来ても、疲れた子供が休む場所も遊ぶ場所もない。それどころか、おむつを替える場所も探さなくてはならず、困っているプロの家族を見かけることも何度もありました。
けれども、働く女性が子供を持つことがごく当たり前になり、保育所併設の職場も増えてきました。毎週、全国を転戦するプロゴルファーであれば、そこに保育所があるのは自然なこと。女子プロゴルファーという働く女性の集団であるツアーは、それをアピールするくらいでいいはずです。
これまで、基本的にツアーに託児所は置かれておらず、子供を連れていくのはとても大変でした。そのため、現状では託児所利用者は決して多くありません。それでも横峯選手や若林舞衣子選手などからは大歓迎の声とともに、後輩たちへの思いがあふれています。
託児所があることで「子供を産んでも一緒に試合に来られるんだ」と思えることは、若い選手たちがゴルフを続けながらさまざまなライフスタイルを考えるきっかけになるでしょう。託児所の利用者も、増えてくるに違いありません。
この週担当の保育士さん、黒澤みゆきさん、酒井真由子さんのお二人も「イベントに派遣されることもありますが、ツアーのように続けてお子さんを見守れるのはうれしいことです。プロのみなさんは私たちに任せてくださいます」と話していました。安心して子供を預けられる環境が近くにあること。夜は子供のペースに巻き込まれても、ともにいることは、ママとしての大きな喜びのはずです。仕事と子育てを両立する……そんな環境が、日本のツアーにも生まれつつあります。
選手たちの間では「来年からは全試合で託児所ができる」という噂も飛び交っています。ただ、JLPGAに確認したところ「増やす方向ではいますが……」と、まだその段階まで話が進んでいるわけではないようです。それでも、この状況が進んでいけば、プロたちの描く未来図が、広がることだけは間違いありません。
取材・文/小川淳子
ゴルフジャーナリスト。1988年東京スポーツ入社。10年間ゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材する。1999年4月よりフリーランスとしてゴルフ雑誌やネットメディアなどに幅広く寄稿。
横峯 さくら(よこみね・さくら)
1985年12月13日生まれ、鹿児島県出身。2004年プロテスト合格。05年のライフカードレディスでツアー初優勝。09年には年間6勝を挙げ賞金女王に輝くなど、宮里藍ととも女子ツアーの看板選手として活躍。21年2月には長男を出産、ママゴルファーとしてツアーで戦いながら永久シードを目指す。ツアー通算23勝。エプソン所属。
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