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- マスターズ制覇の“悲願達成”も実はずっと振り遅れていた!? マキロイが自ら流れを変えた終盤のスーパーショットを分析
PGAツアーの解説も務めるゴルフスイングコンサルタント・吉田洋一郎氏が、ツアーの第一線で活躍する選手のプレーを独自の視点で分析。今回は「マスターズ」を制したローリー・マキロイ選手が最終日の15番で放った“スーパーショット”に注目しました。
ライン出しのショットで振り遅れの傾向があった
4打差の首位でスタートしながら最終日に「80」を叩いて15位タイに終わった2011年大会のリベンジのため。王手をかけながら10年以上足踏みが続いている四大メジャー制覇“キャリアグランドスラム”達成のため――。
「マスターズ」はローリー・マキロイ選手にとって、誰よりも特別な思いがある大会です。

今大会は3日目を終えて2位に2打差の単独首位。悲願達成に近づきますが、最終日の朝は信じられないほど緊張していたそうで「胃がキュッと締めつけられて食欲はほとんどなく、無理やり食べ物を口に運んだ。足がゼリーのように感じた」と本人はコメントを残しています。
地に足がついていない状態はスイングにも影響を及ぼすことに。この日は球をつかまえ切れないシーンが何度も見られ、特にコントロールを重視するライン出しでその症状は顕著に表れていました。
13番(パー5)のレイアップ後の3打目。残り80数ヤードのウェッジショットが振り遅れてボールはピンの右方向へ。グリーン手前のクリークに転がり落ちてダブルボギーとし、ジャスティン・ローズ選手に並ばれてしまいました。
ライン出しショットのカギになるのは足の動き。極端に言えば、腕は何もせずに足だけでスイングするイメージです。しかし、足の動きが鈍かったマキロイ選手は上半身主体になり、手元が前に出てフェースが開いたインパクトに。極度のプレッシャーの中にいると、マキロイ選手ほどのプレーヤーでもこういった状態に陥ってしまうのです。
13番以降もライン出しの振り遅れは直りませんでした。16番(パー3)は1オン2パットでパーとしましたが、短く握ったティーショットでもつかまえ切れず、やや右に球が飛んでいた印象です。
試合展開とロケーションの“切迫した状況”が生み出した一打?
そんな状態での15番(パー5)。ティーショットが左に飛び、左の木がスタイミーになる2打目で“スーパーショット”が生まれました。
15番のグリーンは馬の背になっており、手前と奥には池があるレイアウト。奥の池までは距離がありますが、傾斜で勢いづくと池まで転がってしまうこともあります。許容されるキャリーポイントは、わずか2~3ヤード四方のエリア。それより手前でも奥でも池につかまる危険性がありました。
この時、通算10アンダーの首位はマキロイ選手、ローズ選手、ルドビグ・オーバーグ選手の3人。最終組のマキロイ選手は、最後のパー5でもある15番で是が非でもバーディーが欲しい場面です。
ピンまで207ヤードのシチュエーションでマキロイ選手は2オンを狙います。左の木を避けるため、アイアンのフルショットで右に打ち出して大きなドローをかけた球は「ここしかない!」という場所に着弾。傾斜をつたってピンそばに止まります。惜しくもイーグルはなりませんでしたが、バーディーを奪ってスコアを伸ばすことに成功しました。
ただ、この後もライン出しの振り遅れは改善されず、正規18番の2打目も右に抜けてバンカーにつかまります。17番(パー4)のバーディーで通算12アンダーとし、再び単独トップに立っていましたが、最終ホールを落として通算11アンダーでフィニッシュ。勝負の行方はローズ選手とのプレーオフに持ち込まれました。
本来の“らしさ”が戻ったのはプレーオフの2打目です。残り125ヤードをピン奥1.2メートルにピタリとつけたライン出しが“キャリアグランドスラム”を決定づける一打に。ウイニングパットを決めた後、マキロイ選手はその場にうずくまり肩を震わせました。彼がどれほどの重圧の中で戦っていたのかが分かる感動的なシーンでもあります。
ライン出しショットに苦労し続けた最終ラウンドでしたが、フルショットでドローをかけた15番の2打目が流れを変えるきっかけになったことは間違いありません。スーパーショットが生まれた背景には、試合展開的にもロケーション的にも「振り切って狙うしかない!」という切迫した状況があったのではないでしょうか。
幾度となく訪れた試練を乗り越え“マスターズの呪縛”から解き放たれたマキロイ選手。今後はどんな活躍を見せてくれるのか、これまで以上に期待したいですね。
ローリー・マキロイ
1989年生まれ、北アイルランド出身。2007年にプロ転向し、09年に欧州ツアー初勝利。米ツアーでは10年に初優勝を挙げた。メジャー初Vは11年の「全米オープン」。「全米プロ」を制した12年は世界ランキング1位に浮上し、14年の「全英オープン」も制覇。21-22年シーズンは自身3度目のPGAツアー年間王者に輝く。25年は『マスターズ』を初制覇。史上6人目となるキャリアグランドスラムの偉業を達成した。米ツアー通算29勝(メジャー5勝)、欧州ツアー16勝。
【解説】吉田 洋一郎(よしだ・ひろいちろう)
1978年生まれ、北海道出身。世界のゴルフスイング理論に精通するゴルフスイングコンサルタント。デビッド・レッドベターから世界一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。毎年数回、米国、欧州へ渡り、ゴルフに関する心技体の最新理論の情報収集と研究活動を行っている。欧米の一流インストラクター約100名に直接学び、世界中のスイング理論を研究している。海外ティーチングの講習会、セミナーなどで得た資格は20以上にのぼる。
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