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男子ツアー復活の起爆剤か“禁断の果実”か? 三井住友VISA太平洋マスターズの入場無料に賛否
石川遼が約3年ぶりの優勝を遂げた三井住友VISA太平洋マスターズは入場無料で行われました。その甲斐あって多くのギャラリーが詰めかけましたが、これに対して賛否両論が巻き起こっています。
タケ小山「ゴルフはいまだに入場料収入を軽く見ている」

しかし、この方法が“禁断の果実”だったと見る人もいます。プロゴルファー、解説者としてもおなじみのタケ小山さんもその一人です。
「バスケットにしても卓球にしても、Jリーグにしても、どのスポーツも入場料収入が上がらないで苦戦しているわけですよ。他のスポーツは1社スポンサードで面倒見てくれるようなシステムじゃないから、コンスタントな収入源である入場料っていうのをすごく大切にしています」
「でもゴルフはいまだに、その入場料収入というものをすごく軽く見ていますよね。アメリカのマスターズのパトロンになるというのは、それそのものがステータス。マスターズのように観客がツアーを、トーナメントを支えているという形にしていかないといけない」
「今の日本の男子もスポンサーがついてくれているうちはいいけど、いなくなっちゃったら試合がなくなっちゃうんだよっていうことを、その無料にしたスポンサーが理解するんじゃなくて、その協会と選手たちが理解しないといけません。今の日本のプロゴルフの試合の構築のシステムを変えるぐらいの気持ちにならないと、今回の無料っていうのは生きてこないと思います」と厳しく指摘しました。
小山さんは今後の展開についても決して楽観していません。
「無料招待をして、次の年有料になった時に、本当にお客様が来るのかどうか。Jリーグのチームでも、無料チケットを配布して1年目は良かったけど2年目からガタ落ちになったという話も聞きました」
「有料でチケットを買ってくれる人はゴルフに対する知識も高いから、飛んできたボールを拾ってしまうというようなこともない。一度無料にしてしまうと、お金を払ってまで観ようという人が減ってしまうという一面もあります。タダでごちそうになっちゃったら、お金払って食べる気がなくなっちゃう、という例もありますし。無料は怖いんですよ。来年有料にした場合、お金を払ってもみたい競技かどうか、ということがハッキリ数字に表れるのではないでしょうか。今年の日本シリーズも、どのくらい入るのか注目したい」
Jリーグの事例から見る入場無料の是非
では、今回の入場無料の試みを他のプロスポーツ関係者はどう見ているのでしょうか。かつて無料チケットの配布をやめ、有料入場者を増やしたことで注目を集めたJ2水戸ホーリーホックの小島耕社長は次のように話します。
「(VISA太平洋の入場無料は)常識外れのことをやったことで業界全体の刺激にもなったし、選手にも刺激を与えたのではないでしょうか。他のトーナメントの料金設定のヒントになるかもしれませんし。何らかのヒントを与えたのは間違いないので、やったことは良かったと思います。注目の集め方としても良かったと思います。少なくとも、僕なんかにもこの情報は入ってくるぐらいですので、ゴルフ界ももがいているという姿が伝わるのは、決して悪いことだとは思わないです」
「また、ゴルファーがお子さんと触れ合っている動画などを、最近よく目にするようになりました。テレビでもそういうシーンを見るようになったことも、皆さんが一生懸命努力している結果で、それが浸透しているのはプロスポーツに携わる者として、脅威に感じている部分もあります」
そう肯定的に受け止めてから「でも気になったことがあります」と続けました。
「ゴルフってマナーを大切にするスポーツ。無料だから行ってみよう、と思って来た方が大会の雰囲気とか質を下げちゃうということはないのだろうかと気になりました。これが恒常化すると、お客さんの質がどんどん落ちていきます。いつでも観に行けるとなると、例えば雨だとお客さんが来なくなってしまう。また有料の方は物販とか飲食にお金を使ってくれますが、無料招待の方は、モチベーションがそんなに高くなくて、お金を落とさないというデータも、私のところには実際届いています」
確かに自分から進んでチケットを購入したイベントでは、グッズを買いたくなるし、友人や知人を誘っていけば、飲食をおごるなど、財布のひもが緩む傾向にあるのは事実。それを実感している人も多いのではないでしょうか。
「だから僕なんかはむしろ料金を高くしてみるのがいいかなと思います。限定的に1万人のメンバーにして、空きが出ないと入れない形にして、プロからレッスンを受けられるとか、そういう付加価値をたくさん付ければ、収益的には上がるんじゃないかと思います」
空きが出ないと入れないというシステムは、まさしくマスターズのパトロンたちと同じです。無料にするよりは高額でプレミアムなメンバーシステム。一考の余地はありそうです。
今のところ、来年の大会が有料となるか無料となるかは決まっていないと言います。しかし、VISA太平洋の全日無料の試みにより、有料で開催される今週からのダンロップフェニックス、カシオワールドオープン、ゴルフ日本シリーズJTカップのギャラリー数に注目が集まることになりそうです。今の男子ツアーがお金を払ってでも観に行きたいトーナメントなのか。その評価はこれから3週間、大会の開催期間中に毎日表れることになります。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
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