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- 「“もう一人のひなこ”も知ってもらえたかな」 QT181位の山内日菜子が地元で涙と笑顔の初優勝
国内女子ツアー第4戦、アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI最終日は激戦の末、地元・宮崎出身の山内が、通算10アンダーで逆転優勝を飾った。
WBC参考に「もぐもぐしながら打ちました」
◆国内女子プロゴルフ<アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI 3月24~26日 UMKカントリークラブ(宮崎県) 6565ヤード・パー72>
温かい拍手の中、山内日菜子が歓喜の涙を流した。
国内女子ツアー第4戦、アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI最終日は激戦の末、地元・宮崎出身の山内が、通算10アンダーで逆転優勝を飾った。

プロ8年目の26歳。昨年のQTはファーストステージ2日目に79を叩いてファイナルまで進めず、ランキングは181位。その時のことを思い出し、「“終わったな”って言う……」と言ったきり絶句した。それほど、ショックな出来事だった。ランキングで出場できる試合は、レギュラーツアーはもちろんステップ・アップ・ツアーでもごく限られるという苦しい状況に追い込まれた。今大会は地元選手として主催者推薦をもらって出場。わずかなチャンスを最大限に生かした。
苦しい戦いだった。首位の川崎春花に1打差の通算9アンダーで臨んだ初めての最終組。「なるようにしかならないと思って」スタートしたところ、2番、3番とボギーが続いた。
首位との差は早くも3打に広がる。だが、ここで“地の利”を生かす。「(人生で)一番回っている」と、隅から隅まで知っているコースが舞台とあって、「ここからバーディー取れるホールはある」と、気持ちを切り替えた。引き離された分「逆に落ち着いた」と、攻めに転じる。
6、10、14番とバーディーを重ねて優勝戦線に舞い戻ると、勝負どころの16番でもバーディーを奪って通算10アンダー。単独首位に立つ。
実は、パー3の16番のティーショットを打つ場面から「めちゃくちゃ緊張した」のを、ある作戦で乗り越えた。頭に浮かんだのは、つい最近見たWBC(ワールドベースボールクラシック)での選手たちだ。「ガム噛んでる選手も多かったな、と思って。口を動かすほうがいいと思ったんです」。山内が口にしたのは、ガムではなく持っていたおにぎり。「口に入れて、もぐもぐしながら打ちました」。効果は絶大だった。5番アイアンで5メートルのチャンスにつけて値千金のバーディーだった。
続く17番では、ティーショットを右のバンカーに入れるピンチだったが、ここも「手前に寄ればいいや、という気持ちで打ちました。なんとなくうまくいく気がした」と、しっかりとパーセーブ。18番もパーで切り抜けて、比嘉真美子を突き放し、1打差で初優勝をもぎ取った。
「どの試合に出れるかとか、リランキングとか…」
初日から、たくさんの応援を受けてプレーを続けていた。応援は大きな力になるが、場合によっては同じくらい大きな重圧にもなる。地元やホスト、ホステス大会での優勝が意外に難しいのはそのためだ。山内はそれを自分で大きな力に変えた。
この日、選んだウエアは明るいオレンジの長袖シャツ。「日本のひなた」をキャッチフレーズにした宮崎らしい明るい色で、地元に恩返しをすることができた。
これで、試合を求めて悩むことも、QTに行く必要もなくなった。何より、限られた選手しか出場できない地元開催の最終戦、JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ(11月23~26日、宮崎CC)への出場を決めたのも大きい。
「どの試合に出れるかとか、リランキングとか、いろいろなことを考えなくちゃいけなかったんで」と、苦しかった日々を思い出し、またしても涙ぐむ。辛い状況からの大逆転。涙と笑顔が交錯する最高の1日は、山内の世界をガラリと変えた。
奇しくも、米ツアーでは、漢字表記は違うが同じ「ひなこ」である渋野日向子が優勝争いをしている。年下だが、渋野はすでにメジャー優勝を果たしている。特に渋野を意識することはないが、大好きな名前だからこそ「もう一人のひなこ(日菜子)も知ってもらえたかな」と笑う。
次の目標は「勝てたのが本当に自信になったので、2勝目、3勝目を挙げられるように」というもの。3日間ハッキリしない天候で、最終日は雨。上がった後も曇天でフィナーレを迎えた大会だったが、山内の周りだけは、宮崎らしい温かい空気に包まれていた。
山内 日菜子(やまうち・ひなこ)
1996年4月22日生まれ、宮崎県出身。2016年のプロテストに合格し、ツアー本格参戦は2019年から。23年シーズンはQTランキング181位と出場が限られる立場ながら、「アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI」で初優勝を遂げた。ライク所属。
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