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- スピースの“うっかり誤記”で失格は厳しすぎると議論に! 全ストローク記録する米ツアーにスコア提出は不要!?
松山英樹が約2年ぶりの優勝を飾ったPGAツアーのジェネシス招待。その陰でルールに関する議論が沸騰していたのをご存じでしょうか。ジョーダン・スピースがスコア誤記で失格となったのですが、確認不足の原因が体調不良だったことで、ツアーにおけるスコア提出の必要性にまで議論が及んでいます。
体調不良の影響があったのに失格は気の毒すぎる!?
日本では、もっぱら松山英樹の鮮やかすぎる逆転優勝の話で盛り上がった今年のジェネシス招待。米メディアも、むろん松山の快挙には賞賛の声を惜しみませんが、他方で競技2日目に起こったジョーダン・スピースの「失格」とその規則の是非についても熱く語られています。今後に尾を引く、つまりはルール改訂の声が高まる可能性もあるその問題とは?
すでに米ツアーのファンはご存じでしょう。ジェネシス招待の第2ラウンドのこと、メジャー3勝のジョーダン・スピースは4番パー3のスコアを、正しくはボギーの「4」であるのを、誤って「3」と書かれたスコアカードをそのまま提出したため「失格」となりました。第1ラウンドを5アンダーの5位タイと好調なスタートを切っていたスピースですから、実にもったいないミスでした。
余談ですが、大会最終日、松山英樹が「62」という素晴らしいスコアで競技を終え、逆転優勝が確実になったところで、スピースはX(旧ツイッター)に「Great playing Hideki! Just make sure you double check that scorecard(ヒデキ、素晴らしいプレーだった! しっかりとスコアカードを再確認してね)」と、ちょっと自虐的でユーモラスな祝福のメッセージを書き込み、ファンを喜ばせていました。
ところで、スコアカードにスコアを記入するのは、プレーヤー本人ではなく、(ストロークプレーでは)「マーカーがそのプレーヤーのスコアカードに記録する」(規則3.3b)ことになっています。そして、マーカーは通常は同じ組の他のプレーヤーが担当します。
一方、プレーヤー本人はラウンド終了後にマーカーが記入したスコアカードを確認。合計スコアは関係なく、各ホールのスコアがすべて正しければ、カードにサインをして委員会に提出しなければなりません。
しかし、「プレーヤーがホールについて間違ったスコアのスコアカードを提出した場合」は規則3.3b(3)により、
・提出されたスコアが実際のスコアよりも多いときは、「そのホールに対して提出された多いスコアが有効となる」のに対し、
・提出されたスコアが実際のスコアよりも少ないときは、「そのプレーヤーは失格となる」と定められています。
ところが、世界のメジャーなプロトーナメントでは、各組にスコア記録員が帯同しますし、米ツアーでは1打1打のプレー内容がリアルタイムでデータセンターに送られ、情報サービスにシェアされる「ショットリンク」というシステムが稼働しています。ですから、もしも提出されたスコアカードに疑問が生じた場合は、オフィシャルはそれらシステムの情報と照合し、そのうえでプレーヤーに再確認します。その場合、プレーヤーはスコア提出所のアテストエリア内にいる間は修正が可能ですから、スコア誤記が発生するケースはごくまれなのです。
「にもかかわらず、どうしてスピースは?」と疑問が湧きます。
その背景をザンダー・シャウフェレは「スピースは体調が悪かったようだ。それで競技を終えるとすぐにトイレに行かなければならなかった」と、体調不良が原因でマーカーが記入したスコアをしっかり確認できなかったのかも、と語っています。
実際に、スピースは最終18番ホールをダブルボギーの「6」で終えると、クラブハウスに向かう坂道を一目散に駆け上がる姿が目撃されたそうです。そこで、あくまでも推測ですが、スピースはスコアカードを提出後も体調が悪く、オフィシャルの確認を待たずにアテストエリアを離れたのかもしれません。
「時代遅れ」「もはや無意味」の一方で伝統を重んじる声も
そうであれば、彼の過少申告には「同情の余地」がありますが、スピース本人は直後、Xに「今日、私は間違ったスコアカードにサインをして、スコアリングエリア(=アテストエリア)から出てしまいました。スコアが正しいことを確認するすべての手順を踏んだつもりだったのですが……。ルールはルール。全責任は私にあります」と、自らの非を認める書き込みをポストしています。
しかし、プロゴルファーをはじめツアーの関係者からは、この「失格」に対し、「時代遅れだ」「もはや無意味」といった、ルールの改訂を求める声が多く挙がりました。
例えば、ベテランキャディーのキップ・ヘンリーは「あらゆるスポーツのなかで最もバカバカしいルールだ。マジに、なぜ米ツアーで、選手がスコアカードを付けなければならないのだ? プロボウラーが自分のスコアを付けているか?」と、現行制度の廃止を唱えました。
また、欧州ツアーの人気プレーヤーで、Xの投稿がしばしば大きな話題を呼ぶエディ・ぺパレルは「われわれは、なぜまだこんなことをしているのだろう。これで失格になるのは誰のメリットにもならない。R&AとUSGAは、どうかこの規則をよりソフトなペナルティーに改訂してもらえないだろうか?」と提案。
同じくXに多くの面白い投稿を行い、人気を集めている米ツアープロのマイケル・キムは「帯同するスコア記録員がボランティアのスタッフである以上、正しいスコアを記録することはプレーヤーの責任だと思う。それでも、過少申告で失格というのは厳しすぎる。1~2打の罰打が適当と思う」と、ルールの改訂を求めています。
確かに、前述したように米ツアーでは帯同のスコア記録員に加え、ショットリンクの情報システムが稼働していますから、プレーヤーによるスコアカード提出には「不要」の声が少なくありません。逆に、ツアー側のシステムで記録されたスコアをプレーヤーが確認したほうが、時間の節約にもなり、良いのかも知れません。
しかし、そうした声に対し、米ツアーで通算8勝をマークし、現在はパッティングの名コーチとして活躍するブラッド・ファクソンは“異”を唱えています。
彼は米ツアーのネットラジオ番組のなかで「ルールに精通することは、あらゆる場面で自分を助けてくれる、(ゴルファーにとっての)“名誉の印”と言われている。私は、この考えを今も愛している。とりわけトッププレーヤーは常にテレビなどのメディアに見られているから、何事にも知らない顔はできない(=知らないのは恥ずかしい)」と、ゴルフの伝統を軽視してはいけないと警鐘を鳴らしました。
スピースのスコア誤記についても「われわれがアマチュアと同じルールでプレーする以上、われわれはマーカーとして正しいスコアを記入する必要があるし、プレーヤーとして正しいスコアを提出する責任がある」と主張しています。
こうして、直後に熱を帯びたこの問題ですが、今後に進展はあるのでしょうか?
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