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コラム

名門倶楽部なんてうらやましくないやい! だって乗用カートがないんだもん…が、変わってきた事情/木村和久『ゴルフ=レジャー宣言』

2025.12.25 木村和久(コラムニスト)
ゴルフカート ゴルフ場

歩きが基本と言われている質実剛健の名門倶楽部に、実は今ちょっとした異変が起きています。……ゴルフを筆頭に、平成~令和の日本を縦横無尽に遊び尽くしてきたコラムニストの木村和久氏が、浅いのか深いのかよく分からないこの問いを考察していきます。

酷暑時に高齢者が歩きゴルフをして良いのか?

 最近、よく名門倶楽部とやらに付き合いでラウンドしますが、相変わらず料金は高めですね。平日で2万5000円ぐらいして、しかも歩きプレーです。

 うちの茨城のホームコースだったら、その料金で4回はできます。しかもこっちは乗用カートのナビ付きかつ送風機&シート暖房あり。なんでカートにも乗れず、歩きで高いお金を払わねばいけないのか。理不尽でしょうがないです。

 ……とまあ、これは単なるヒガミですけどね。そうやって名門倶楽部のことをボヤいていたら、最終組に乗用カートに乗っているお客さんを発見。これはどういうことでしょう?

 実は歩きが基本と言われている質実剛健の名門倶楽部に、今ちょっとした異変が起きています。今回はそのお話をしたいと思います。

 まずは今から15年ぐらい前の話を少々。当時まだ名門倶楽部は“絶対歩き”の風潮がありました。

 とある元レジェンドプロ野球監督が名門倶楽部のメンバーになり、日々ゴルフライフを楽しんでいました。長年通った倶楽部ですが、すでに元監督は90歳近くになり、歩きプレーも限界となります。

 そのコースは丘陵地で2~3ホールだけきつい登り坂があり、その部分がしんどい。そこで元監督は、理事会に「2~3ホールだけマーシャルが使う乗用カートに乗って移動できないか?」と打診をしました。

 理事会で協議した結果、その答えは「ノー」というものでした。あくまでゴルフは歩くもので、その原則は覆らなかったのです。

 その元監督はさびしそうに「じゃ、ゴルフをやめるしかないな……」とつぶやき、ほどなく退会したとか。

乗用カート、サイコーッ! 写真:PIXTA
乗用カート、サイコーッ! 写真:PIXTA

 そんな名門風を吹かせていた倶楽部も、それから5年ぐらいして、時代の風潮にあらがえず乗用カートの導入を決定します。けど、その元監督はすでに他界し、雲の上から乗用カートのラウンド姿をうらやましそうに眺めていたそうです……って、見たのかよ~。

 というわけで、最近の名門倶楽部は乗用カート使用を認める傾向にあります。

 乗用カート導入のもっともな理由としては、メンバーの高齢化です。ゴルフ人口のボリュームゾーン、団塊の世代は現在、75歳以上の後期高齢者となっています。男性の平均寿命が81歳強で、制限なく日常生活が営める健康寿命が73歳強です。つまり、名門倶楽部のメンバーは足腰が弱っている人が多いのです。

 一方、世間では生涯スポーツとしてゴルフが注目され、何かしらの補助でプレー可能なら、それをすべきという風潮です。つまりハンディキャップを背負った人に寄り添った、共生社会をつくろうということです。

 しかし、最近、真夏の歩きラウンドの競技中に倒れて亡くなった人がおり、酷暑時に高齢者が歩きゴルフをして良いのかという意見も出ています。結果、どこの倶楽部も「乗用カート導入やむなし」となったのです。

 それでは、なぜ名門倶楽部は歩きゴルフに固執するのでしょうか? それは英国のゴルフを模範に倶楽部づくりをしたから、歩きが当然というマインドになったのです。

 ところが、バブルの頃からアメリカ伝来の乗用カートがものすごい勢いで普及します。日本は丘陵コースや山岳コースが多いので、乗用カートに乗るとすごく楽、コースの集客にひと役買いました。

 さらにキャディーさんの人材不足分を、ナビを付けた乗用カートが肩代わりをします。キャディフィーを払わなくて済むし、最近ではGPSナビでグリーンとの距離も分かるし、スコアも記入できます。最近は空調サービスもありで、非常にコンフォータブル。

 気づくと、一部の古い名門倶楽部だけに“歩き文化”が残ります。紳士の社交とスポーツという観点だと、歩いてゴルフをするのは正しい判断でしょう。けど、ゴルフの大衆化によりレジャー的な捉え方をすると、乗用カートに分があります。

「70代でカートに乗ったら先輩たちに笑われる」

 それでは、名門倶楽部の乗用カート事情はどうなっているでしょうか。ある名門倶楽部は2人乗りの乗用カート数台で運用しており、あくまで歩きラウンドの補助として捉えています。

 2人乗りカートにするのは、車両重量を減らし、芝を痛めない配慮です。晴天時はフェアウェイに乗り入れ可能ですが、雨の場合、電磁式誘導路はないので、カートは使えません。

 料金的には通常料金のプレー代を払って、さらに乗用カート代やキャディフィーを払うわけですから、まさに“お大尽プレー”です。

 名門倶楽部のメンバーさんから言わせると、「まだまだ歩いてゴルフをするつもり、70代でカートに乗ったら先輩たちに笑われる」と言ってました。

「武士は食わねど高楊枝」って感じですか。乗用カートに乗りたいけど、まだ我慢して歩くプライドの維持が大変です。

 そんなわけで、名門倶楽部の世界じゃ、乗用カートに乗るのはおじいさん扱いなんだとか。

 そうは言っても、足をくじいたとか、痛風だ、捻挫したとかアクシデントが起き、乗用カートに頼る場合もあるでしょう。そういう時は、わざわざ乗用カートのある、ほかのコースに行ってラウンドするそうです。

 名門倶楽部の美学というか、生き様も大変ですね。こっちは大衆コースで良かったです。名門倶楽部のメンバーさん、歩きゴルフの後、疲れてクルマを運転して交通事故を起こさないように、ご自愛くださいませ。えっ、帰りはハイヤーだからお気遣いなくって!? そりゃ、どうも失礼いたしました。

文/木村和久
1959年生まれ、宮城県出身。株式投資から大衆文化まで、さまざまなジャンルで“現代”を切り取るコラムニスト。有名ゴルフ媒体へも長く寄稿してきており、スイング理論やゴルフ場設計にも造詣が深い。近年はマンガ原作者としても活躍。

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