【舩越園子の砂場Talk(バンカートーク)】レクシー・トンプソンの特異なキャディー依存

米女子ツアーの実力派人気女子プロゴルファーであるレクシー・トンプソン。キャディーに対し極度に依存しながら、あっさりとコンビを解消するトンプソンの不思議なスタイルについて語ります。

「ヤーデージブックは持たない」キャディー依存度が極度に高いレクシー・トンプソン

 スコットランドの名門カーヌスティで開催されたAIG女子オープン(通称:全英女子)は、スウェーデン出身のアンナ・ノルドクビストの4年ぶりの復活優勝で幕を閉じ、表彰式で彼女は「ケビンが支えてくれたおかげです」と、夫への感謝を口にした。

 夫のケビン・マカルパインはスコットランド出身で、かつてスコティッシュ・アマチュアを制した経歴もあるプロゴルファーだが、あまり成績は振るっておらず、ノルドクビストと結婚する以前の2017年ごろには、あのレクシー・トンプソン(米国)のキャディーを務めていた。

「ヤーデージブックは持たない」と言い切るレクシー・トンプソン 写真:Getty Images

 トンプソンといえば、2011年に米女子ツアー史上最年少の16歳で初優勝を挙げ、2014年にはクラフト・ナビスコ選手権(現・ANAインスピレーション)を制覇したメジャー・チャンプだ。

 米女子ツアー通算11勝を誇る実力派ながら、2019年以降は優勝から遠ざかっており、近年は優勝争いに絡みながら崩れるケースが目立つ。そんな彼女に必ずと言っていいほど伴っているのは、彼女の相棒キャディーにまつわるストーリーだ。

 そもそもトンプソンは、キャディーへの依存度がきわめて高い選手として知られている。「私、ヤーデージブックは持たないので」と言い切る彼女は、距離にまつわる全情報をキャディーに頼り切ってプレーする。

 一方で、彼女の相棒キャディーは次々に変わっていく。弟や父親がバッグを担いだこともあり、その合間の一時期に彼女の相棒を務めたのが、冒頭に記したノルドクビストの夫(当時は婚約者)ケビンだった。

 しかし、2018年シーズン途上でトンプソンは突然、コンビを解消。理由は明かされず、ケビンも「もう僕は誰のキャディーもやらない」としか語らず、すべては謎に包まれた。

 笹生優花と畑岡奈紗がプレーオフにもつれ込み、笹生が勝利した2021年6月の全米女子オープン最終日、首位を走っていたのはトンプソンだったが、彼女は終盤にガラガラと崩れ落ちていった。あのとき彼女のキャディーを務めていたのは、ブライソン・デシャンボーのキャディー(当時)、ティム・タッカーだった。

 今年8月の東京五輪女子ゴルフの3日目終盤、トンプソンのキャディーが熱中症で突然リタイアしたことは、みなさんの記憶に新しいことと思う。その場に座り込んでしまった熟練キャディーのジャック・ファルガムに代わり、上がり3ホールはその場に居合わせた米女子ツアースタッフが、最終日はキャディー経験を有する米テレビ局関係者がトンプソンの臨時キャディーを務めた。

 最終日のホールアウト後にトンプソンは、「そもそも私は、ティーイングエリアの看板の数字を見て『だいたい何ヤードぐらいかな』と思う以外にはヤーデージがわからなかったので、あれはなかなか厳しい状況だった」と語っていた。

 東京五輪で33位に終わった後、トンプソンは熱中症で倒れたファルガムとは、きっぱり決別。AIG女子オープンでは、カーヌスティの地元キャディー、ポール・ドラモンドを付けた。

「ポールはコースを熟知しているし、距離判断もアドバイスもグリーンの読みも全部優秀。ナイスガイなので大きな助けになっている」

 満面の笑顔でそう語ったトンプソンは、実際、初日から好プレーを続け、首位から2打差の4位タイで最終日を迎えた。

 今度こそ、7年ぶりのメジャー優勝か、2年ぶりの復活優勝かと期待が膨らみ、「今度こそ、相棒キャディーがポールで定着するのではないか?」という予想もされていた。

 しかし、最終日はまたしてもスコアを落とし、20位タイに終わったトンプソンは、無言でカーヌスティを去っていった。

キャディーへの極度の依存と未練なき別れという不思議なスタイル

ポール・ドラモンドと歩くレクシー・トンプソン 写真:Getty Images

 ヤーデージブックを使わず、すべてをキャディーに頼ること、そしてキャディーを次々に変更すること、いずれもトンプソンのスタイルなのだろう。

 看板の数字を見て「だいたい何ヤード」と思う以外には自力で距離判断ができないと明かしてしまうあたりは、もはや驚きを超えて感心さえさせられる。その反面、「私がキャディーに尋ねるのはピンまでの距離と落としどころだけなので」と、キャディーへの依存部分はきわめて少ないかのごとく語るのだから、トンプソンという選手は、なかなか難解で、だからこそ興味も沸いてくる。

 キャディーには、どこまで何を頼るのが得策か。選手とキャディーの蜜月は、長い短い、どちらのほうが有効か。

 そんな、さらなる難題が、秋の夜長のテーマになりそうである。

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