岩井姉妹の妹・千怜がステップ・アップ・ツアーで初優勝!
日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の下部ツアーであるステップ・アップ・ツアーのカストロールレディース(9月1~3日、千葉県・富士市原ゴルフクラブ)で、19歳の双子姉妹の妹・岩井千怜(いわい・ちさと)がプロ初優勝を挙げた。

最終日を迎えたとき首位に立っていたのは姉・明愛(あきえ)で、3打差の4位タイだった千怜は、最終組の明愛の1つ前の組で回っていた。明愛がスコアを伸ばせなかった一方で、千怜は前半に3つ伸ばすと上がり2ホールでは連続バーディーを奪い、同じルーキーの上野菜々子とのサドンデス・プレーオフへ突入。その2ホール目をパーで収めた千怜が勝者に輝き、優勝賞金360万円を手に入れた。
岩井姉妹は武蔵丘短期大学(埼玉県)の1年生。実を言えば、私はその武蔵丘短期大学で客員教授を務めており、彼女たちとは以前から少しばかり交流がある。
初めて会ったとき、2人はお互いの性格やゴルフスタイルの違いについて話してくれて、ざっくり言えば、姉・明愛は「天才肌でアグレッシブ」、妹・千怜は「努力型で慎重派」。それがゴルフのスタイルにも反映されていると彼女たちは感じていた。
しかし、今大会で「自分を変えよう」「強気で攻めよう」と意を決していた千怜は、固い決意を貫き通し、まっしぐらにピンフラッグとカップを目指し続ける強気のゴルフで勝利を掴み取った。まさに初志貫徹で手に入れたプロ初優勝だった。
岩井千怜に備わっている思いきりの良さと意志の強さとは

そんな千怜の思い切りの良さと意志の強さには少々驚かされたが、そこで思い出されたのは以前、彼女たちの父・雄士さん、母・恵美子さんから聞いた千怜のこんな昔話だ。
岩井姉妹には2つ年下の弟・光太がおり、父・雄士さんは、しばしば姉妹と弟の3人を自宅から12~13キロ離れた練習場へ車で連れていっていた。
「あるとき、私が子どもたち3人に同じ練習をさせていたら、几帳面でマイペースな千怜は、『何で今この練習をやるの?』と言って、ふてくされたんです。でも、千怜がふてくされた態度でいると明愛や光太に影響するので、私は千怜に『そんな態度で練習するなら帰れ!』と叱った。で、練習場のロビーにでも行ったんだろうと思って放っておいた。それから1時間ぐらい経って、そろそろ帰ろうと思い、明愛と光太を連れてロビーに行ったら、千怜はどこにもいなくて。焦りました」
父・雄士さんは大慌てで自宅にいた母・恵美子さんにも連絡し、必死で“捜索”していたら「千怜は、12~13キロの道を、キャディバッグを担いで、自宅に向かって黙々と歩いていたんです。見つけたときは、ほっとしました」。母・恵美子さんも「私も、ほっとしましたよ。どこへ行っちゃったんだろうって思っていたので」と、昨日のことのように頷いていた。
たとえ周囲の度肝を抜くようなことであっても、「私は、やる!」と意を決する思い切りの良さと頑固なまでの意志の強さが、千怜に昔から備わっていたことを物語るエピソードだった。
注目を集める岩井姉妹 双子ならではの感覚と姉妹の絆
そんな意志の強さ、芯の強さを生かし、プロ初優勝を手に入れた千怜だが、はたから見れば、その千怜に逆転負けした形になった姉・明愛のことが少々心配になる。
しかし、双子には双子ならではの感覚があるらしく、お互い良きライバルでありながら、どちらかが勝てば自分も嬉しいと感じ、どちらかが負ければ自分も悔しいと感じるのだと、以前、彼女たちが教えてくれた。
だから今回も、千怜の優勝を姉妹で喜び、明愛の敗北を姉妹で振り返り、勝った経験、負けた経験、どちらも2人で噛み締め、それを今後に活かしていくのではないか。そうすれば、彼女たちの学びは自ずと2倍になり、進化のスピードも倍増されるのではないか。
そう願いつつ、それでもやっぱり気になって千怜には祝福メッセージを、明愛には激励メッセージを、それぞれLINEで送ると2人ともスタンプ入りの可愛らしい返事を速攻で返してくれた。
「ああ、いつも通りだな。2人とも大丈夫だな」と安堵し、2人のこれからが一層楽しみになった。