後輩・中島啓太に続きアマチュアが躍動！河本結の弟・力が6打差大逆転でAbemaTVツアー初優勝

　残りあと3試合となったAbemaTVツアーで大事件が起こった。TIチャレンジin東条の森で最終日にアマチュアの河本力が8バーディ、1ボギーの64をマーク。通算9アンダーまでスコアを伸ばし、逆転優勝を飾ったのだ。

「すごくうれしいです。強風の中、満足のいくプレーができたことは今後に向けても大きな自信になります」と、興奮気味に語った河本。首位と6打差の33位スタートとあって、さすがに優勝は難しいと考えていた。しかし、トップテン入りは十分チャンスがある位置だったので、とにかくいいプレーをすることだけを心がけたという。

　そんな河本に有利なことがあったとしたら、台風16号の影響で風が強かったことだろう。上位陣がことごとくスコアを伸ばせなかったのだ。

　河本自身も決して風の中でのプレーが得意なわけではなかったが、「気持ちでボールが曲がってしまうことが多いので、難しいと思わず冷静にプレーすることだけに集中しました」と、必要以上に風を意識することだけは避けた。

　前半から順調にスコアを伸ばした河本は、最終18番ホールを8アンダーで迎える。最低でもプレーオフに残るためには、絶対にバーディが必要となる。しかし、最後まで冷静だった河本は得意のドライバーではなく、アイアンを手にする。確実にフェアウェイをとらえ、2打目を54度のウェッジで放つと、ボールはピンそば40センチに止まる。それを沈めて、1打差で逃げ切った。

　河本にとって今大会は心に傷を抱えたままでの参戦だった。前週に開催されたレギュラーツアーのパナソニックオープンで、河本は最終日を首位と1打差の好位置でスタート。上位には優勝経験者がおらず、優勝を狙える絶好の機会だった。

　ところが、ショットの調子はよかったものの、思うようにパッティングが決まらない。徐々にフラストレーションが貯まり、焦りを生み始めると、ショットにまで影響してきた。結局、ノーバーディ、2ボギー、2ダブルボギーの78を叩き、順位も20位タイにまで落ちてしまった。

「日体大の後輩である(中島)啓太が同じ組で回っていたんですけど、彼がいいプレーをしていたことも焦りにつながったのかもしれません。もちろん、啓太の優勝は嬉しいですし、自分と同じ位置からスタートして勝ったことはすごいと思いますが、自分に何が足りないのかいろいろと考えさせられました」

　トップアマとはいえ、まだ21歳の河本にとっては最終日にスコアを大きく崩したことは精神的にも肉体的にも大きな疲労を残した。それが今大会も初日にスコアを伸ばせず、75位タイと出遅れた理由だ。最終日を迎えて、ようやく体の疲労が回復。目覚まし時計に頼らずとも、4時40分に起床し、朝から牛丼をたらふく平らげ、元気いっぱいで臨むことができた。

　今大会の優勝が来週開催される日本オープンに向けて大きな弾みとなったのは間違いない。昨年の同大会では首位と3打差の5位タイでフィニッシュし、同い年の杉原大河とともにローアマを獲得したが、ちょっとしたトラブルがあった。

　最終日の朝、前日の13番ホールのグリーン上でボールを正しい位置にリプレースしなかったことが判明し、2罰打を課されていたのだ。気持ち的にすっきりしない形でのラウンドとなったが、今年はそれも含めてきっちりとリベンジするつもりだ。

　身長183センチ、85キロと恵まれた体格で、姉はプロゴルファーの河本結。圧倒的な飛距離を武器に爆発的なスコアを出す反面、大叩きするもろさも持つ。今回の優勝で得た自信でメンタル面が強化されたことは大きな収穫だろう。まずは、日本オープンでの結果に注目したい。